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On the Production
by 井口健二
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■夜は短し歩けよ乙女/夜明けを告げるルーのうた、いぬむこいり
付き合っていた男性にも別れを告げられた日、彼女は南の島
に彼女の求める宝があるとの啓示を受ける。斯くして舟も通
わぬその島に向うアドヴェンチャーが開始される。
主演は1986年の『星空の向こうの国』で映画デビューを果た
し、同年の『キネマの天地』で各映画賞の新人賞を独占した
有森也実。相手役にパンクバンド「勝手にしやがれ」のヴォ
ーカルで本作の主題歌も歌っている武藤昭平。
さらに2010年9月紹介『君へのメロディー』などの江口のり
こ、2007年8月紹介『スキヤキウェスタン・ジャンゴ』など
の尚玄、2011年1月紹介『ランウェイ☆ビート』などの笠井
薫明、2016年1月紹介『復讐したい』などの山根和馬。
また韓英恵、ベンガル、PANTA、緑魔子、石橋蓮司、柄本明
らが脇を固めている。
背景となる実家の言い伝えは、「南総里見八犬伝」の援用と
思われるが、映画の開幕が人形劇なのはNHKへのリスペク
トなのかな。その他にも途中に舞台風の演出があったり、い
ろいろと細工は施された作品だ。
実は僕が試写を観た日は、その後にハリウッド映画のワール
ドプレミアがあり、知り合いの何人かはその前に重厚な作品
は辛いとして本作の試写会を敬遠したとのことだった。それ
は上映時間だけでも及び腰にはなる。
しかし実際の作品は、確かに軽いものではなかったが、辟易
するほど重いというほどのものでもなく、上述の仕掛けなど
寧ろエンターテインメントとして面白く観ることのできる作
品だった。
それは事前に作品が4章立てであることは判っていたが、そ
れぞれの章のテイストが違えられている。その第1章は都会
が舞台のプロローグで、第2章は選挙が絡む風刺劇、第3章
はサヴァイヴァル劇で、第4章が戦争映画といった具合。
こんな風に目先が変ることで上映時間の長さも感じさせない
ものだった。しかもR15+指定となる部分もあり、映画のい
ろいろな要素が一度に楽しめるという作品にもなっている。
兎に角、エンターテインメントとしては合格点の作品だ。
公開は5月13日より、東京は新宿K's cinemaにて、また初夏
に鹿児島ガーデンズシネマでの上映も予定されている。
この週は他に
『美女と野獣』“Beauty and the Beast”
(2010年9月に3D公開で紹介した1991年製作のディズニー
アニメーションが、『ハリー・ポッター』シリーズなどのエ
マ・ワトスンの主演で実写映画化された。物語はオリジナル
とほぼ同じで、本好きのちょっと変わった少女が父親の身代
わりで野獣の城に幽閉され、彼女を救出しようとする村の住
民との戦いに巻き込まれる。開幕のディズニーのロゴから舞
台の村と城が描かれ、長年のディズニー映画のファンとして
は「おお!」という感じにもなる作品だ。ただ個人的にはオ
リジナルでお気に入りだったシーンの一つがカットされて、
その点は少し残念。でもまあ実写でやると多分違和感だった
のだろう。監督は2003年2月紹介『シカゴ』などのビル・コ
ンドン。公開は4月21日より、全国ロードショウ。)
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
(最果タヒの詩集をドラマ化した作品。詩集の映像化という
のは、風景映像に詩の朗読を被せるようなイメージだけど、
本作では一歩進んで恋愛ドラマが創作され、そこに多分詩集
の中の言葉が台詞として散りばめられている。それは見事な
詩の表現であり、しかもその詩が現代の若者を描いているか
ら、巧みな恋愛映画として昇華している。これは素晴らしい
作品だ。特にコミックスの映画化のような稚拙な恋愛ゲーム
ばかりの時代には、久し振りに本物を観た感じがした。出演
は新人の石橋静河、池松壮亮。他に松田龍平、市川実日子、
田中哲司らが脇を固めている。脚本と監督は2010年2月紹介
『川の底からこんにちは』などの石井裕也。公開は5月13日
より新宿ピカデリーで先行上映の後、全国ロードショウ。)
『作家、本当のJ.T.リロイ』
“Author: The JT LeRoy Story”
(2004年にアーシア・アルジェントの脚本・監督・主演で映
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03月19日(日)
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