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On the Production
by 井口健二
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■インフェルノ、俺たち文化系プロレスDDT
作成して興行を盛り上げている様子。また、DDTの試合や
舞台裏の状況が描かれる。そこには新興団体ならでは仲間と
の繋がりみたいなものもあるようだ。
そして本作では、マッスル坂井が仕掛ける新日本プロレスか
ら棚橋弘至選手を招いての、DDT所属HARASHIMA選手との
対戦が描かれる。それは先に行われた交流戦で惨敗を喫した
HARASHIMA選手の思いに応える企画でもあった。しかしその
シナリオがなかなか完成しなかった。
監督は選手でもあるマッスル坂井と、2006年3月紹介『セキ
★ララ』などの松江哲明。坂井は2014年に『劇場版プロレス
キャノンボール2014』という作品を発表しており、本作が第
2作。松江は2012年10月「東京国際映画祭」で紹介『フラッ
シュバックメモリーズ 3D』以来の長編作品となる。
作中に描かれるプロレスにシナリオがあることに関しては、
予想はしていたものだが、本作ではそこから真剣勝負に至る
様子も理解できた。観客のどこまでがそれを理解しているの
かは知らないが、これはこれでエンターテインメントとして
成立するものだろう。
ただ棚橋選手とDDTの選手との実力の差は素人目にも歴然
としていたもので、それも理解してこの結果を受け入れるの
は、その後の流れを考慮してもなかなか納得が難しい。でも
まあそれに歓声が上がっているのだから、観客はそれで良し
としているのだろう。深い世界だ。
一方、松江監督に関しては、2012年の作品は映画祭の観客賞
を受賞し興行もヒットしたようだが、上記の紹介を読んで貰
えば判るように僕には納得の出来ない作品だった。それは明
らかに松江監督の作品ではない部分が多くあるように観えた
からに他ならない。
その点で言うと、本作に関しても坂井監督による部分も多く
あると思われるが、そこに織り込まれるマッスル坂井に関す
る部分が松江監督らしさを感じさせ、これなら松江作品と認
められると思えた。他にもいろいろな思いが伝わってくる感
じもする作品だ。
公開は11月26日より、東京は新宿バルト9他にて、全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『島々清しゃ』
(沖縄県慶良間諸島を舞台に、音感が良すぎて周囲に溶け込
めない少女と、その島に演奏にやってきたヴァイオリニスト
との交流を描く。少女は音程の狂いから米軍機の墜落も予測
できる。沖縄音階の民謡もふんだんに取り込まれ、ジャズと
のコラボレーションなども面白いが、お話としては有り勝ち
かな。2005年12月紹介『転がれ!たま子』などの新藤風監督
による11年ぶりの作品。公開は2017年新春第2弾としてテア
トル新宿他にて、全国ロードショウ。)
『聖の青春』
(今年の東京国際映画祭でクロージングを飾る作品。1998年
に29歳で早世した将棋界の「西の怪童」村山聖の生涯を松山
ケンイチの主演で映画化。病魔と闘いながら名人位を争った
羽生善治との闘いなど名勝負が再現される。実話だから仕方
がないが、クライマックスの勝負のシーンが苦悶の表情ばか
りなのは息苦しい。観客も彼の苦闘を追体験することにはな
るが…。棋譜の紹介などに何か工夫があっても良かったので
はないか。公開は11月19日より、全国ロードショウ。)
『胸騒ぎのシチリア』“A Bigger Splash”
(声帯を痛めて医者から喋りを禁止され、再婚した年下の男
性と共に島のリゾートで静養する女性ロッカーの許に、元の
亭主が娘を連れてやってくる。元亭主は彼女に未練があり、
現亭主は若い女性の色香に迷いだす。何と言うか下世話な話
が地中海を背景に繰り広げられるが…。上映時間2時間5分
たっぷりで、観終って何とも言えない雰囲気にさせられる作
品だった。公開は11月19日より、新宿ピカデリー他にて、全
国ロードショウ。)
『変態だ』
(2009年4月紹介『色即ぜねれいしょん』などの原作者みう
らじゅんが「小説新潮」に発表した原作を、自らの企画・脚
本、イラストレーターの安齋肇の初監督により映画化した作
品。何と言うか題名通りの作品で、売れないミュージシャン

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10月16日(日)
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