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On the Production
by 井口健二
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■ホドロフスキーの虹泥棒、ちょき
他に、2012年『桐島、部活やめるってよ』などの藤井武美、
2014年『太秦ライムライト』などの和泉ちぬ、2016年『つぐ
むもの』などの広澤草。さらに芳本美代子、小松政夫らが脇
を固めている。
金子監督の第2作は観ていないが、第1作も本作もかなり特
別なシチュエーションを描いたもので、それは見方を変える
と反発も受けかねない物語が展開される。しかしその物語を
金子監督は実に丁寧な演出で、普遍的に考えることのできる
作品に仕上げている。
さらに本作では視覚障碍者についても描いているが、その描
写も実によく考えられている感じがした。実は僕の娘が視覚
障碍者の団体に勤務していたことがあって、そこでの話を何
度か聞いているが、その中で語られていたことが巧みに表現
されているようにも思えた。
なお物語は金井監督が和歌山を訪れて、その取材の中から編
み出されたものとなっている。その訪れた理由などは明らか
にされていないが、物語は普遍性の中に和歌山という風土を
巧みに取り入れたもののようにも感じられた。その融合のさ
せ方も見事と言える。
調べたところによると金井監督は中央大学理工学部の出身の
ようで、理工系の緻密さのようなものが本作にも現れている
ようだ。僕も工学部の出身者なので、その辺にも共感できる
のかもしれない。
公開は11月19日より和歌山県内での先行上映の後、東京では
12月3日より渋谷HUMAXシネマにて期間限定レイトショウ。
その後は全国順次公開となる。

この週は他に
『ミス・シェパードをお手本に』“The Lady in the Van”
(Dameの称号を持つ名女優マギー・スミスが、16年間にわた
り主演してきた舞台劇の映画化。劇作家アラン・ベネットの
実体験に基づくとされる作品で、数奇な運命に翻弄された女
性との厳しくも温かい交流の物語が、ちょっと捻った構成で
展開される。公開は12月より、シネスイッチ銀座他でロード
ショウ。)
『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間』
                    “Miles Ahead”
(1991年に死去した不世出のトランぺッターの、1975年から
約5年に亙る活動休止にスポットを当てた、ドン・チードル
製作脚本監督主演による作品。演奏シーンもあるが、物語は
単なる謎解きではなく、かなり凝った手法で音楽家の実像に
迫っている。公開は12月23日より、TOHOシネマズシャンテ他
で全国順次ロードショウ。)
『僕らのごはんは明日で待ってる』
(幻冬舎刊、ベストセラー小説の映画化。この出版社の作品
らしく、あざとい位に感動を呼び起こすエピソードが描かれ
る。でも本当に描くべきは女性の葛藤の方ではないのかな。
それに振り回される男性の方が判り易いのは確かだが、その
分、感動も浅いような気がする。公開は来年1月7日より、
全国ロードショウとなる。)
『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
              “Florence Foster Jenkins”
(今年の東京国際映画祭でオープニングを飾る作品。1944年
に歌唱力が全くないのに、カーネギーホールでリサイタルを
開いた「オペラ歌手」の実話の映画化。実話は日本のテレビ
番組などでも紹介されていたが、先に書いた『ミス・シェパ
ード』とある意味真逆かな。そんな作品を続けて観られたの
も面白い。公開は12月1日より、全国ロードショウ。)
『マイ・ベスト・フレンド』“Miss You Already”
(トニ・コレットとドリュー・バリモア共演で女性同士の友
情を描く作品。監督はキャサリン・ハードウィック、脚本は
コメディエンヌでもあるモーウェナ・バンクス。正に女だら
けの作品だ。シビアな内容だが、病の経験者でもある脚本家
が巧みにユーモアで描き上げている。バリモア絡みの台詞も
良かった。公開は11月18日より、全国ロードショウ。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。

09月25日(日)
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