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On the Production
by 井口健二
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■カノン、エヴォリューション、アルジェの戦い
アランテ・カヴァイテが名前を連ねている。
一応、ダーク・ファンタシーというカテゴリで紹介される作
品で、僕などにも意見を求められるが、正直に言って回答に
窮する作品だ。海外の評価でもクローネンバーグ、ギーガー
らが引き合いに出されるが、それも悩みの結果だろう。
タイトルから見て、描かれるのは進化への模索だと思われる
が、その進化の目標が何なのか? ここで登場する女性たち
が水棲人という示唆はあるが、それが目標としてそれと少年
たちに施される医療行為との関係が明確にされない。
ただその途中で少年が目撃するシーンに、少年たちへの医療
行為の意味が示唆されているようなのだが。これが映倫審査
によって修正を余儀なくされていて、多分そうなのだろうと
想像するしかなくなっている。
でもまあ、その辺からいろいろと想像は広がって行く訳で、
それはSFとして評価しても良いと思える作品だ。しかもそ
こにギーガー、クローネンバーグが引き合いに出されるよう
な映像が付いてくるのだ。
因にプレス資料によると、監督は中川信夫の『地獄』や若松
孝二の作品を撮影監督に観せて映像の参考にさせたそうだ。
また監督は塚本晋也とも親交があるようだ。
公開は11月、東京は渋谷アップリンク、新宿シネマカリテ他
にて、全国順次ロードショウとなる。

『アルジェの戦い』“La Battaglia Di Algeri”
アルジェリア独立戦争を描き、1966年のヴェネツィア国際映
画祭で金獅子賞(グランプリ)に輝いたジッロ・ポンテコル
ヴォ監督作品。その作品がディジタルリマスターにより修復
され、再公開されることになった。
1954年のFLN(アルジェリア民族解放戦線)の設立から、
1960年に独立を勝ち取るまでの出来事を、FLNに身を投じ
た1人の男を中心に描いて行く。その男の名前はアリ。彼は
就学経験もなく、土木作業員やボクサーなどをしていたが、
何度も警察の厄介になっているような男だった。
そんな男が刑務所を脱獄して街に舞い戻った時、1人の少年
がFLNからの指令をアリに届ける。そしてその指令に忠実
に従ったアリはFLNの幹部の前に連れて行かれ、その幹部
から仲間に入ることを認められる。そしてFLNは飲酒や麻
薬の禁止など、独立の標榜と共に様々な施策を打ち出す。
やがてFLNは兵士や警察官の殺害などのテロ行為を繰り広
げるようになる。それに対してフランス側は、警察署長自ら
が爆弾テロを行うなど、双方が作戦行動をエスカレートさせ
て行く。それと共にフランス軍の介入が始まり、その一方で
アルジェリア問題が国連に上程される。
そしてアルジェリアに侵攻したマチュー中佐率いるフランス
陸軍は、FLNが敢行したゼネストに対抗し、さらにFLN
幹部の逮捕に乗り出して行く。その捜査の網はアリの近辺に
も迫っていた。斯くしてアルジェリア独立を目指したFLN
は壊滅状態になって行くが…。
出演は、マチュー中佐に扮したジャン・マルタン以外は現地
で集められた素人で、その多くは実際に独立戦争に関ってい
た人々とされている。またポンテコルヴォは記録映像を一切
使用せず、5年間の準備を費やして全てを再現したもので、
そこには8万人の市民の協力があったということだ。
僕自身はこの作品を高校生時代にロードショウで観たものだ
が、この前年にはオールスターキャストの『パリは燃えてい
るか』もあって、民衆の蜂起による戦いにはある種の憧れも
感じていた。その中でのモノクロ映像のこの作品は、同種の
作品を評価する上での基準としていたものだ。
そんな作品を略50年ぶりに再見したものだが、それは巻頭の
シーンから記憶が甦り、その後の展開などには流石に全てを
記憶していた訳ではないが、それでも個々のシーンの中には
鮮明に思い出されるものもあった。
ところが最後のシーンになって、これが記憶と違っていて愕
然とした。僕の記憶ではもっと女性たちの叫び声が長くて、
それが余情を感じさせていたのだが…。今回観直すとそれが

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08月28日(日)
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