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On the Production
by 井口健二
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■インターン!、幸福のアリバイ Picture、スタートライン
何と言うかこちらもピンと来なくて、ここでの紹介はしてい
なかった。それは以前の作品では言いたいことが多すぎて整
理がついていない感じもしていたものだ。
そんな2人の顔合わせだが今回は結構気に入った。内覧試写
でプレス資料も充分でなく、詳細が確認できていないものも
あるが、オムニバス形式で陣内の言いたいことは良く伝わっ
てきたし、情感もほどほどに盛り込まれていた。
定番と言えば定番のつくりだし泥臭さもあるが、それが安定
感でもあり小細工をしていないところも気に入ったものだ。
因に、本作の元のテーマは写真だったそうで、その辺の様式
的な纏まりの付け方も良い感じがした。
公開は11月18日より、全国ロードショウとなる。
『スタートライン』
聾唖者である今村彩子監督が、自ら自転車で沖縄から北海道
まで走破した模様を綴ったドキュメンタリー。
今村監督は1979年生れ、名古屋出身、愛知教育大学在学中に
カリフォルニア州立大学に留学して映画製作を学んだという
経歴で、すでに全国公開された作品もある。そんな監督が、
撮影兼任の伴走者はいるものの、基本的にはその手助けは受
けないというルールで沖縄県から北海道を目指す。
確か以前にも障害者というか高齢者が長距離自転車行に挑む
ドキュメンタリーを観た記憶があり、その途中の困難や訪問
するそれぞれの土地での交流など、今回もそれに似た感動作
かなと思いつつ試写会に臨んだ。ところが本作はそんな綺麗
ごとの作品ではなかった。
まず本作では自転車選びから始まり、ロングライドは初心者
の監督にパンク修理などの基本を訓練する様子が描かれる。
それは当然の話で、映画でも詳細に語られる訳ではないが、
本作の本気ぶりというか真面目さは伝わってくる。その他に
も法律など健聴者も参考になる事項が述べられていた。
そして旅が始まるのだが…。監督が意欲満々の割にメカに弱
く、さらに思い込みやいろいろなものが重なって伴走者との
意思の疎通もままならなくなってしまう。それでも伴走者の
男性の根気強さや真面目さに支えられて、四苦八苦しながら
も目的地に向かって進んで行く。
その間に、同じ障害を持つ人たちとの交流や、その中には外
国人もいて、見事なドラマが描かれて行く作品だ。その一方
で伴走者の男性の話す内容は、健聴者の自分を振り返って考
えさせられる事柄も多く、僕自身が障害者には理解がある方
だと思っていたが、それ以上に学ぶことが多かった。
特に本作でさらに重要なテーマとなるコミュニケーションの
問題は、監督が聾唖だということでなく、様々な要素を描き
出しているように見える。それは監督のお蔭で顕著になって
はいるが、健聴者の我々にとっても等しく存在するものだ。
そんなことも描かれているように見えた。
伴走と撮影は堀田哲生。「ジテンシャデポ」というチェーン
店のスタッフだそうだが、英語も喋れて中々のキャラクター
だ。他にオーストラリア人の青年などが登場する。
公開は、9月3日より東京新宿ケイズシネマ、17日より名古
屋シネマスコーレ、以後は大阪第七藝術劇場など、全国順次
ロードショウとなる。
聾唖者を描いたドキュメンタリーでは、2010年5月に『アイ
・コンタクト』という作品も紹介しているが、どちらもいろ
いろな意味で深い作品に感じられた。
この週は他に
『サラダデイズ SALAD DAYS』“Salad Days”
(1980年代のワシントンD.C.で興った初期パンクシーンを描
いたドキュメンタリー。先に6月19日題名紹介の『バッド・
ブレインズ』を観ていたので多少親しみが湧いた。内容的に
も手の甲にXを描く意味など、首都でのパンクロックという
のはなかなか興味深いものがあった。)
『ディアスポリスDIRTY YELLOW BOYS』
(4月3日に題名紹介した作品の劇場版。実は前に観たのは
テレビ版の第1話で今回は同じ配役による拡大版だ。ただし
本作だけでは設定などの説明がなく、テレビ版を観ていない
と主人公の立場などが理解し難いかな? 舞台も拡大した豪
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08月14日(日)
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