ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459852hit]

■アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅、ハイ・ライズ、天国からの奇跡
今年4月紹介『ニュースの真相』などのエリザベス・モス、
それにモデルでもあるステイシー・マーティンらが脇を固め
ている。
脚本と監督は、2014年2月9日付の記事の中で紹介『サイト
シアーズ殺人者のための英国観光ガイド』などのエイミー・
ジャンプ(脚本)とベン・ウィートリー(監督)のコンビが
手掛けている。
原作は、1973年発表の“Crash”、1974年発表の“Concrete
Island”と共に「テクノロジー3部作」と呼ばれる作品群の
一編とされ、この内の“Crash”は1996年にデイヴィッド・
クローネンバーグ監督によって映画化され、カンヌ国際映画
祭の審査員特別賞などに輝いている。
バラードの初期の長編は背景のスケールも壮大で、映像化は
かなり難しいものと想像される。それに比べるの本作は、舞
台も高層アパートの中と限定的で、特にハリウッド以外での
映画化には好適と言えるものだろう。
因にクローネンバーグ作品はカナダ映画で、本作はイギリス
映画となるものだ。そして本作では、北アイルランド・ベル
ファスト近郊に1970年に建てられたBangor Leisure Centre
で多くの撮影が行われたとされている。
まあ、本作自体の時代設定が1975年ということではあるが、
そんな中に案外未来的な雰囲気も描かれている。それも本作
の面白さと言えるだろう。
公開は8月6日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他で、全国順次ロードショウとなる。

『天国からの奇跡』“Miracles From Heaven”
4月17日紹介『復活』に続く、ソニー・ピクチャーズの配給
によるキリスト教映画の第2弾。
登場するのはテキサス州の田舎町に暮らす一家。両親は敬虔
なキリスト教の信者であり、その許に育った姉妹も深い信仰
を持っている。ところがそんな一家を試練が襲う。姉妹の中
でも一番信仰心の厚い次女が突然の病に侵されたのだ。
最初は何気ない症状に見えたその病気はChronic Intestinal
Pseudo-obstruction(慢性偽性腸閉塞症)。それは現代医学
ではどうにもならない難病だった。
そこで母親がすがったのはボストンに住む小児科の名医。し
かし高名なその医師には予約患者が一杯で、診察を受けられ
るのは数年後。この事態に母親は思い掛けない行動に出る。
それが奇跡を呼び起こした。
出演は、2010年1月紹介『バレンタインデー』などのジェニ
ファー・ガーナー、2015年『パパが遺した物語』で主人公の
幼女時代を演じたカイリー・ロジャーズ。他に、2004年8月
紹介『トルク』などのマーティン・ヘンダーソン。さらにク
イーン・ラティファらが脇を固めている。
脚本は2012年9月紹介『人生の特等席』のランディ・ブラウ
ン、監督はメキシコ出身のパトリシア・リゲンが担当した。
描かれる病は原因は解明されていないものの神経の一部がブ
ロックされてしまうもののようで、それが外部からの衝撃で
回復してしまうのは起こり得ない話ではない。実際に僕自身
が腰痛から来る足裏のしびれを抱えているが、これが麻酔の
針で治る事象もあるとは医者から聞いた話だ。
従って本作の出来事は医学的には起こり得る話で、それが信
仰の賜物であるかは別にして起これば奇跡ということにはな
る。その辺も考慮したのか、映画ではその他にも奇跡が起っ
ていたことを紹介して、話の纏まりが付くようにしている。
宗教映画も生硬な宗教論のような作品には辟易するが、本作
の場合はそれを別にして家族愛やそれを見守る周囲の状況な
どが描かれ、それは普遍的なファミリーピクチャーとしても
充分通用するように作られている。
その辺は、さすがメインの製作者として『アリス・イン・ワ
ンダーランド』も手掛けるジョー・ロスが名前を連ねている
所以という感じもした。宗教の問題を別にして、王道のハリ
ウッド映画という感じの作品だ。
公開は6月18日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他で、全国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『ロング・トレイル!』“A Walk in the Woods”
(ロバート・レッドフォードとニック・ノルテの共演で、ア

[5]続きを読む

05月22日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る