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On the Production
by 井口健二
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■あやつり糸の世界、蜜のあわれ、砂上の法廷、桜の樹の下
そんな老作家と金魚の睦言のようなやり取りと、やがて登場
する作家に恋い焦がれた女性の幽霊。さらには金魚を老作家
に託した金魚売りなどが、少し淫靡でかなりシュールな物語
を綴って行く。
主演は、2012年6月紹介『王様とボク』などの二階堂ふみと
2013年3月紹介『モンスター』などの大杉漣。共演に2013年
12月紹介『ゲノムハザード』などの真木よう子、2010年12月
紹介『毎日かあさん』などの永瀬正敏。
また、2010年1月紹介『ソラニン』などの高良健吾が面白い
役柄で登場の他、韓英恵、上田耕一、渋川清彦、岩井堂聖子
らが脇を固めている。
原作は最終章を除いて全編会話体のみで構成されるという、
かなり前衛的な作品だそうだが、それが執筆されたのは作家
70歳の年。しかもこの内容というのは…。正に恐るべき老年
という感じのものだ。
ただし作家は、1956年に日本でも上映されたアルベール・ラ
モリス監督の抒情的な短編映画『赤い風船』を高く評価して
いたという経緯もあるそうで、そのことを併せると作品への
見方も多少変わってくることになりそうだ。
奔放に行動する金魚=赤いドレスの女性と、大空を自由に動
き回る赤い風船、そこには多くの重なり合う部分も存在して
いる。映画ファンならそんなことも考えながら見るべき作品
なのかもしれない。
そしてこの奔放に行動する若い女性を二階堂ふみが熱演して
いる。さらにそこには奇妙なダンスも織り込まれるのだが、
実は本作には振付師は付いておらず、この踊りは二階堂の即
興なのだそうだ。
因に二階堂は沖縄出身だが、2011年10月紹介『指輪をはめた
い』にもあったようにフィギュアスケートの素養もあるよう
で、足腰の強さとそれなりのセンスは備えているようだ。こ
れも本作の見ものと言える。
公開は4月1日より、東京は新宿バルト9ほかで全国ロード
ショウとなる。

『砂上の法廷』“The Whole Truth”
1999年にロビン・ウィリアムス主演で映画化された『アンド
リューNDR114』や2002年11月紹介『イナフ』などのニコラス
・カザンの脚本、2009年12月紹介『フローズン・リバー』の
コートニー・ハントの監督で、キアヌ・リーヴスが弁護士を
演じる法廷ドラマ。
事件は息子による父親殺し。敏腕な弁護士であった被害者は
主人公とも親交があり、被害者の妻である加害者の母親から
息子の弁護を頼まれたのだ。しかし息子は頑なに口を噤んだ
ままで、弁護する糸口も見つからない状態だった。
そこで主人公は「人間うそ発見器」の異名を持つ若い女性弁
護士を助手に起用する。彼女は相手の表情や仕草などから嘘
を見抜き、さらにその背景まで推理する能力にたけていた。
そして裁判が始まるが…。
検察側からは次々に被告人が殺したとする証拠が提出され、
一言も話さない被告人には情状酌量の余地もなく、被告人は
絶対不利なまま裁判は進行してしまう。果たして主人公には
一発逆転の手立てはあるのか?
共演は、2007年6月紹介『ミス・ポター』などのルネ・ゼル
ウィガー、2015年3月紹介『ジュピター』に出ていたという
ググ・バサ=ロー、2011年6月紹介『スーパー8』に出てい
たというガブリエル・バッソ。
脚本のカザンは『エデンの東』などの名匠エリア・カザンの
息子で、1991年の『運命の逆転』ではオスカー脚色賞の候補
にもなっている。一方、監督の2009年作も極めて過酷な状況
を描く中で、見事な人情味を感じさせてくれた作品だ。
そんな2人のコンビネーションだが、正直に言って結末には
かなりの衝撃を受けた。でもそれが嫌な感じにはならない。
その辺がこの2人の力量なのだろうし、さらにキアヌの人柄
というか、醸し出す雰囲気のような感じもした。
実際に試写室を出るとき周囲の人の多くがニコニコしていた
ことを特記しておきたい。そんな雰囲気の作品だ。
公開は3月より、東京はTOHOシネマズシャンテほかで、全国
順次ロードショウとなる。

『桜の樹の下』
川崎市宮前区にある市営野川西団地に住む人々の姿を追った

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02月07日(日)
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