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On the Production
by 井口健二
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■東京アニメアワードフェスティバル2015
ごつごつしたオレンジが抑圧者という図式は、何ともはやと
いう感じもしてきてしまう。
しかも物語は、そんな環境の中で立場の違うレモンとオレン
ジが恋をするというのだが。その展開の甘さというかご都合
主義的な感じはメッセージに沿わない感じもした。
ましてや、最終的に搾取されたままのトマトの立場は何なの
だろう。ここに於けるメッセージの意味が僕には理解できな
かったし、正直不満にも感じたものだ。
因に本フェスティバルのコンペティション部門選考基準は、
「国際的に通用し、独創的かつメッセージ性を持った作品」
とのことで、そのメッセージはあったと言えるかな。
監督は、2005年に発表された中東欧圏の若手映画作家たちに
よる映画プロジェクト“Lost and Found”にも参加のマイト
・ラース。本作は初長編作品とのことだ。
製作はNukufilm。1957年創立のストップ=モーション・アニ
メーションでは北欧圏で最も歴史があり、規模も最大とされ
るスタジオの作品だが、本作の日本公開は未定のようだ。
“Mune, le gardien de la lune”
本国のフランスでも今年8月に公開の予定で、今回の上映が
ワールドプレミアだったのかな。フェスティバルでは優秀賞
に輝いた作品。
太陽と月の運行がガーディアンと呼ばれる選ばれし者たちに
よって司られている世界の物語。その世界でミューンは準備
もないままに月のガーディアンに選ばれてしまう。それは元
より戦士で太陽のガーディアンを目指していた若者と一緒で
はあったが…。
そんな折、突如太陽と月に危機が訪れる。それはネクロスと
いう堕落者が太陽の支配を求めたことの仕業だった。そこで
ミューンは、太陽のガーディアンとなった若者や小さい仲間
たちの協力を得ながら、太陽と月を元の位置に戻すための冒
険の旅に出る。
上で紹介した2作に比べて本作の物語は明らかにファンタス
ティックなものであり、アニメーションの技術的な評価は判
らないが、僕自身では3作の中で最も好ましい作品だった。
また僕の観た上映が優秀賞に決まった後に行われたもので、
監督たちが挨拶に来てくれたのも嬉しかったものだ。
監督はアレクサンドル・ヒボヤンとブノワ・フィリッポン。
ヒボヤンはフランス出身だが、2008年5月紹介『カンフー・
パンダ』や2009年“Monsters vs. Aliens”でアニメーター
を務めており、ハリウッド感覚は会得しているのかな。
一方のフィリッポンは2003年に公開された『掠奪者』という
アクション映画のシナリオに参加、2010年に“Lullaby for
Pi”という実写作品で新人監督賞の候補にもなっており、い
ずれもこれからが楽しみな作家たちのようだ。
因に、監督たちの挨拶の後では即席でサイン会になり、僕は
フェスティバルのプログラムブックの表紙にイラスト付きで
書いて貰った。これは大事にとっておきたい。
なお本作も日本公開は未定のようだ。
* *
ということで「東京アニメアワードフェスティバル2015」
において上映された3作品を紹介したが、実は今回のフェス
ティバルの長編コンペティション部門では他に2作品が上映
され、その内の1本がグランプリとなった。
僕は本フェスティバルでは、以前にも書いたように上映さ
れる作品中、長編コンペティション部門5作品を含む10番組
を観る計画だったが、本フェスティバルではマスコミ向けの
上映は設定されてらず、一般発売後の残券が回される仕組み
だったようで、人気番組は観られなかった。
そのためグランプリは見逃してしまったが、すでに他所で
評価が定まっている作品を観るより、真っ新の新作に巡り合
えたことは喜びだった。開催の主旨は重要なものであるし、
次回も案内されるなら、また参加したいと思えるフェスティ
バルだった。
03月29日(日)
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