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On the Production
by 井口健二
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■6才のボクが、大人になるまで。ダムネーション
隠しカメラで撮影されたというものもあるとされているが、
何たってダムの基部にダイナマイトを仕掛けて、一気に大穴
を開けてしまうのだから…。
以前のテレビ番組などでは、再開発のために既存のビルを爆
破してしまうという映像もよくあったが、アメリカ人のやる
ことは全く途轍もない。
ただし、当初はダムの上部から徐々に削岩機などで破壊して
行く手法も採られたが、それだとダム湖に堆積した泥などが
残され、その撤去にも時間や労力が掛かる。それなら基部に
穴を開ければ一気に泥なども流されてしまうということで、
このアイデアが生まれたのだそうだ。
とは言うものの、こんなことを日本のダムでやったら、下流
域に飛んでもない被害が及ぶのだろうな。そんなことを思い
ながら映像を眺めていた。
逆に言えば、そんなことができるほどの辺鄙な場所にあった
ダムが治水や灌漑、水力発電にしてもその場所からの送電の
問題があったことは容易に理解できるし、そんな無用の長物
を除去して自然環境を復興させることの意義も間違いなく理
解できる。
しかしこの理論を日本にそのまま適用して良いか否か、単純
にこの作品の展開を鵜呑みにして良いものかどうか。作品の
サイトには数多くの識者という人たちのコメントが寄せられ
ていたが、僕には諸手を挙げては賛成しかねる意見もあるよ
うに感じられた。
特に水力に替える発電の問題は、狭い国土の日本では即原発
推進にも繋がるもので、その危険な論調が看過できない感じ
もした。まあ中にはダムも原発も反対などという単純な論調
もあったようだが。
ところでダムが抱える問題点として本作では、サケの遡上な
どの環境問題の他に、アメリカ原住民の歴史的な遺物の水没
なども語られるが、その辺は多少意向は異なるがダム建設に
伴って水没する地域社会での反対運動など、日本でも似た事
態の起きていたことが記憶されるものだ。
しかし歴史的遺物などはダムが無くなって復旧するものでも
なく、失ってしまったものの大きさがこれによって際立つ効
果は認めてもこれを直ちにダムの除去に繋げることはできな
い。それにサケの遡上にしても、それが復旧する保証はまだ
得られていないものだ。
それよりも上述のコロラド川では河口域での塩害問題など、
ヌード写真と共に語るには語り切れない深刻な環境破壊も起
きているもので、その辺が語られないことには些か製作者の
意図も考えさせられた。
同様のことは日本でも、建設秘話の映画化が最近リメイクも
された「黒部川第四ダム」ではダム湖周囲の樹木の立ち枯れ
問題なども起きており、これらも踏まえたもう一段真剣な作
品も求めたくなったものだ。
公開は11月22日から、東京は渋谷アップリンクほかでロード
ショウされる。

10月05日(日)
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