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On the Production
by 井口健二
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■フランス映画祭2014
『バツイチは恋のはじまり』“Un plan parfait”
この作品も案内では“Fly Me to the Moon”という英語題名
になっていたが、上記の邦題になったようだ。因にこの邦題
はテレビタレントが付けたそうで…。
1度目の結婚は必ず失敗し、2度目で幸せになれるという呪
いを持った一家の女性が、10年付き合った最愛の男性との幸
せな結婚を目指し、まずその前にバツイチになる決意をして
大奮闘を繰り広げるというラヴコメディ。
2011年10月30日付「東京国際映画祭(1)」で紹介し、その
後の日本公開でも大ヒットした『最強のふたり』の製作スタ
ッフによる作品とのことで、なるほど比較的軽いテーマの割
にはシビアな視点も感じられた。
とは言え展開はかなりのドタバタ調で、その辺にはフランス
コメディの伝統みたいなものも感じられて、僕にはちょっと
ノスタルジックな感覚も生じた。しかもそれがまさに世界を
股にかけて繰り広げられる。
いや、正直には何と捉えてよいのか判らない作品なのだが、
取り敢えずは主演のダイアン・クルーガーの奮闘ぶりを見る
だけでも楽しめる作品。観れば面白く、それが楽しめること
だけは間違いない。
一般公開は9月20日より、東京はヒューマントラストシネマ
有楽町ほかにて上映となる。
『バベルの教室』“La cour de Babel”
パリ市内にある中等学校の適応クラス。そこに集まった11歳
から15歳までの人種も言語も異なる24人の生徒たちを追った
ドキュメンタリー。
教室には中東やアフリカ、さらに中国人の子供も居て、言葉
の違う子供たちが集まっているというもので、原題も同じと
思われる作品のタイトルには納得させられた。
とは言えこの年代の子供たちはそれなりにフランス語も喋れ
ているようで、聖書のような混乱が生じるものではないが、
各地の挨拶の言葉の意味を考えるシーンでは、同じ言葉を使
う中東とアフリカの間で確執が生じるなど、それなりに世界
情勢を反映している面も紹介される。
そんな子供たちが共同作業で映画作りをしたり、様々な活動
を通じて互いを理解して行く姿には、これこそが今の世界に
必要なことではないかという思いも生じてくる。
それにしても日本だと、アメリカンスクールがあったり、中
華学校や朝鮮学校など、それぞれの民族が独自の学校を開い
て子供の教育を行っているものだが、フランスではこのよう
な教育制度が整っているているという事実にも感心した。
ただし本作は、子供たちの姿を追うことを中心にしているた
め、この様な制度が生まれた背景などには触れておらず、上
記の日本の状況を考えた場合に、もっと何か得られるものが
あったのではないかという思いは残った。
また教室を指導する女性教師の奮闘ぶりなどは映画に表れて
いる以上のものがあるのでは…とも感じさせるが、その辺が
観ていて物足りなくは感じられた。それと作品の中で子供た
ちが制作した映画も機会があったら観てみたいものだ。
一般公開は、2014年晩秋に予定されている。
『友よ、さらばと言おう』“Mea culpa”
2009年12月紹介『すべて彼女のために』や、2011年7月紹介
『この愛のために撃て』のフレッド・カヴァイエ監督による
最新作。
前の2作品はいずれも夫婦愛を中心したものだったが、本作
の中心にいるのは2人の男性。元は同じ警察署で同僚の優秀
な刑事だった2人が、ある出来事から一方は服役し、家族か
らも見放される。しかしその家族に危機が迫った時…。
かなり骨太のアクションで、前の2作も主人公の活躍という
点ではアクションも激しかったが、本作ではさらにそこに磨
きがかかっている感じの作品だ。しかも映画の後半はTGV
の車内が舞台で、これが鉄道ファンには堪らなかった。
フランス国鉄が誇る高速列車であるTGVは、今までにも走
る姿などは登場していたが、ここまで車内が克明に描写され
たのは初めてではないかな。しかもそこでアクションが展開
されるのだから、これはもうワクワクし通しだった。
さらにはVFXを絡めたシーンもふんだんにあって、正しく
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06月15日(日)
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