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On the Production
by 井口健二
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■クジラのいた夏、ギャロウ・ウォーカー 煉獄の処刑人、そこのみにて光輝く
とになる。そのガンアクションと、蘇った悪党どもの奇妙な
生態が繰り広げられる作品だ。
因に本作は2006年にナミビアで撮影が行われたが、その直後
にスナイプスが脱税容疑で拘束され、2010年にはその罪で禁
固3年の実刑が言い渡されて完成が延び延びになっていたと
いうもの。ただしスナイプスの仮釈放は昨年4月だが、映画
は2012年10月にイギリスの映画祭で初公開されたようだ。
なお本作に関しては、昨年2月16日付の第187回でも情報を
紹介しているので、興味のある方は参照してください。
共演は、2009年“Burlesque Fairytales”や2003年『ラスト
・ホラー・ムービー』などに出演のケヴィン・ハワースと、
2002年10月紹介『スパイダー・パニック』に出ていたという
ライリー・スミス。
それに2005年12月紹介『ロード・オブ・ウォー』などに出演
し、ナミビアの隣国・南アフリカで発行されたの男性雑誌で
「最もセクシーな女性100人」に選ばれたというモデル出身
のタニット・フェニックスらが脇を固めている。
脚本と監督は、日本でも1999年に公開された『エヴリバディ
・ラブズ・サンシャイン』などのアンドリュー・ゴス。共同
脚本にファンタシー作家でもあるジョアン・リエイ(と読む
ようだ)。また音楽を、1999年の『恋におちたシェイクスピ
ア』でオスカーを受賞したスティーヴン・ウォーベックが担
当している。
『ブレイド』もそうだが、スナイプスはスタイルにこだわる
のかな。本作もスタイリッシュと言えば間違いなくその通り
の作品だ。ただ、その分のストーリーが弱いというか、設定
などが多少ないがしろにされている面はある。
それは例えば復活した悪党どもが太陽光に弱くてそのために
いろいろやっているらしいのだが、その辺の説明が明確では
ない。また物語の根幹のはずの母親の存在も、なんとなくう
やむやな感じがした。
でも最近の若い観客はストーリーよりアクションやスタイル
で観ているようだから、これはこれでいいのかな。まあそう
いう種類の作品ということだろう。なおスナイプスにはアク
ションシリーズ『エクスペンダブルズ3』への出演の情報も
あるようだ。
公開は3月15日から、東京はシネマート六本木ほかでロード
ショウされる。
『そこのみにて光輝く』
2010年9月紹介『海炭市叙景』の原作者佐藤泰志が、1990年
自らの命を絶つ前年に発表した唯一の長編小説の映画化。
物語の舞台は『海炭市』のモデルとされる函館。主人公は、
その町で暮らす無職の男。本当は発破士として優れた技術を
持つが、現場での事故を切っ掛けにその職を離れたようだ。
しかし以前の職場からは常に誘いを受けている。
そんな主人公がパチンコ屋でタバコの火を求められたことで
若い男との交流が始まる。その男は浜辺に建つ粗末な家に家
族と暮らしているが、実は仮釈放中の身で、その条件となる
就職先は彼の姉を愛人にする男性から得ていた。
そのため姉は愛人関係を解消することもできず、がんじがら
めの生活だった。そんな中に主人公が現れたことから、運命
の歯車が回り始める。それは老父母も抱える一家に一条の光
を見せることにもなりそうだったが…。
原作者の佐藤に関しては先にドキュメンタリー映画も公開さ
れて、20世紀に亡くなった作家が21世紀になって俄然注目を
浴び始めたようだが、その作品は21世紀の今にこそ真の理解
を得られる物語だったようだ。
実際にこの映画を観ながら僕は、昨年7月に紹介した青山真
治監督の『共喰い』を思い出していた。田中慎弥の同名小説
を原作とする作品は下関を舞台にしたものだったが、描かれ
る背景や家族関係は正に同類と言っていいものだ。
その『共喰い』の原作は2011年に発表され、同年下期の芥川
賞を受賞している。この賞は佐藤が5回の候補になりながら
遂にその手が届かなかったもの。これが時代の皮肉というも
のなのだろう。
出演は、2003年『仮面ライダー555』でデビューし、今旬
な俳優の一人と言われる昨年5月紹介『シャニダールの花』
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02月23日(日)
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