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On the Production
by 井口健二
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■魔女の宅急便、サンブンノイチ、愛の渦
しかし第2作では、主人公たちの演じる漫才のシーンに流石
に本業の技が見えた感じで、それは作品の方向性として期待
も感じていた。でもその方向から外れる暴力描写が過多で、
結局サイトでの紹介はしなかった。
そんな品川監督の新作だが、今回は他者の原作ということで
物語の展開などにはそれなりに尊重しているところが感じら
れ、そのためアクションの挿入や描写も適度に抑えられて、
全体にバランスの良い作品になっていた。
その物語の主な舞台は集合ビルの中にあるキャバクラ。その
雇われ店長とボーイ、それに常連客の3人が切羽詰って実行
した銀行強盗に成功。1億6000万円の現金が詰まったバッグ
を開店前の店に運び込むところから始まる。
そこで3人は金を3分の1づつ分ける計画だったが、実行犯
の店長と常連客が運転手役のボーイも同じ取り分なのはおか
しいと主張して揉め事が始まる。そして時間は7日前にさか
のぼり、ここに至った経緯が描かれる。
その物語を映画では、フラッシュバックを多用して経緯とそ
の裏に隠された真実を徐々に明らかにし、人間の本性に潜む
醜い姿を暴いて行く。そこに監督が漫才師らしい軽妙な台詞
のやり取りなどが挿入される。
その台詞の中には外国映画に関する例えも多用されていて、
それは多少ウザったいところもあるが、多分そこは若い映画
ファンには受ける要素にもなると計算されているのだろう。
そんな展開で映画は進行されている。
しかもそれがかなりのどんでん返しの繰り返しになるという
作品だ。
出演は、藤原竜也、2012年9月紹介『大奥〜永遠〜』に出て
いたという田中聖、お笑いコンビ「ブラックマヨネーズ」の
小杉竜一。さらに2012年9月紹介『バイオハザードVリトリ
ビューション』などの中島美嘉、窪塚洋介、池畑慎之介。
また、2012年5月紹介『バルーンリレー』に出ていたという
木村了、哀川翔、壇蜜。そして吉本興業のお笑い芸人たちが
脇を固めている。
公開は4月1日から、角川文庫の創刊65周年記念作品として
全国ロードショウされる。
『愛の渦』
演劇ユニット「ポツドール」主宰三浦大輔の脚本監督による
2006年第50回岸田國史戯曲賞受賞作の映画化。
三浦戯曲の映画化では昨年『恋の渦』という作品もあって、
それも試写を観たがサイトでの紹介には至らなかった。本作
はその同じ作家の作品であり題名も似ているので、観るまで
はどうなのかなあ…という感じだったが、流石に自ら監督も
手掛けるとなると、その仕上がりも違っていた。
物語の舞台はメゾネット型マンションの一室。そこは参加費
が男性は2万円、女性千円、カップル5千円の乱交パーティ
の会場だ。その日の夜もそこには男女4人ずつの参加者が集
まってきた。
参加者は当然Hがしたいだけの連中。しかしバスタオルを巻
いただけでソファーに座っても、最初は会話もぎこちない。
それでも徐々に会話は進み、女子大生やフリーター、保母に
OL、妻子持ちのサラリーマンなどの身分も明らかになる。
そしてある切っ掛けから本性が剥き出しになる。
公開はR18+指定で、それはかなり際どい描写も登場する作
品だが、そこに描かれるのは人間の本能であり、大人にはク
スリと笑える巧みな会話劇が展開される。この辺が前に観た
『恋の渦』ではどこか幼稚だったが、本作では見事に脱皮し
ている感じもした。
出演は、昨年12月紹介『大人ドロップ』などの池松壮亮、同
8月紹介『スクールガール・コンプレックス−放送部篇−』
などの門脇麦。さらに11月紹介『バイロケーション』などの
滝藤賢一、2010年1月紹介『カケラ』などの中村映里子。
また『魔女の宅急便』にも出演の新井浩文、2008年4月紹介
『サンシャイン・デイズ』などの三津谷葉子、2012年3月紹
介『サイタマノラッパー』などの駒根木隆介、2012年4月紹
介『彼女について知ることのすべて』などの赤澤セリ。
他に柄本時生、信江勇。そして2012年8月紹介『アウトレイ
ジビヨンド』などの田中哲司と、『サンブンノイチ』にも出
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01月26日(日)
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