ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459988hit]

■ニーナ、サイコメトリー、サイド・エフェクト、人類資金、ホワイトハウスD、ビザンチウム、フローズン・グラウンド、Cハーロック
ウと、テレビドラマ『花より男子』などのキム・ボム。他に
昨年2月紹介『青い塩』に出ていたというモデル出身のイソ
ム、2009年韓国版『白夜行』などのパク・ソンウン、子役の
ギム・ユビンらが脇を固めている。
グラフィティが鳥瞰図で、何故そうなのかという理由がハト
に触ってそのヴィジョンを感じ取ったというのは、オスカー
・ワイルド作「幸福な王子」を思い出させて、その無償の行
為の崇高さを感じさせた。
そして描かれたグラフィティも、かなりシュールレアリステ
ィックな大作で、グラフィティの専門家との準備に1ヶ月、
構図の決定に1週間、そして作画作業に100時間を費やして
いるそうだ。映画の中で全貌が出るのは一瞬だが、眼を凝ら
して観て欲しい。

『サイド・エフェクト』“Side Effects”
2008年11月紹介『チェ』2部作などのスティーヴン・ソダー
バーグ監督による本年ベルリン国際映画祭出品作品。
本作における題名の意味は、医薬品の副作用。生活の不安か
ら自殺未遂に至ったと診られた女性が、鬱病の新薬を処方さ
れる。ところがその新薬が夢遊病を引き起こす。そしてそれ
が重大な結果を招いてしまう。
このため新薬を処方した医師は、その責任追及の矢面に立た
されることになるが…。
出演はジュード・ロウ、昨年1月紹介『ドラゴン・タトゥー
の女』などのルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ=ジョー
ンズ、同4月紹介『君への誓い』などのチャニング・テイタ
ム、同4月紹介『だれもがクジラを愛してる。』などのヴィ
ネッサ・ショウ。
脚本は、2006年のオスカー受賞作『不都合な真実』の製作を
務め、ソダーバーグ監督の『インフォーマント!』(2009年
10月紹介)と『コンテイジョン』(2011年10月紹介)の脚本
も担当したスコット・Z・バーンズ。
バーンズは、彼と共に本作の共同製作に名を連ねる精神科医
サシャ・バーデイ博士の協力を得て、10年以上掛けてこの脚
本を完成させた。因にバーンズは、当初は自ら監督も手掛け
る計画だったが、完成した脚本を見たソダーバーグが強く監
督を希望し、譲ったのだそうだ。
宣伝コピーには「ソダーバーグが初めて挑んだヒッチコック
風サスペンス」とあったが、確かに男女の交錯する物語はそ
れ風という感じもするものだ。ただしヒッチコックなら主要
なキャラクターの中に金髪女性を配するが、ソダーバーグは
そこまではしなかったようだ。
とは言うものの、ソダーバーグ監督なら後半の展開にはもっ
と別のものもあるのではないかと思わせたが、そこまでも含
めてヒッチコック風というのなら、その通りという感じのも
のだった。
なお以前に監督は、「今は映画が最高の表現手段だと考えて
いるが、別の表現手段が見つかったら映画は止める」と語っ
ていた。それに関連して本作では「劇場で公開される作品は
最後にする」とのことで、遂にその日が来たようだ。
ところが監督はその後に“Behind the Candelabra”という
TVムーヴィを発表。また来年度向けにはTVミニシリーズ
の制作も進んでいるようで、映像から離れることはなさそう
だ。

『人類資金』
2005年公開の映画『亡国のイージス』の原作者福井晴敏と、
監督阪本順治が再び手を組んだポリティカルフィクション。
なお本作は書下ろし原作で、映画の公開に前後して原作本が
出版される予定のようだ。
戦後日本の詐欺事件を何度も賑わしたM資金。そのMを人類
=Mankindと位置づけ、その資金をめぐる日米間の攻防戦が
描かれる。
そして主人公は、M資金詐欺を繰り返している男。実は父親
がM資金の行方を追う過程で不慮の死を遂げた過去があり、
彼自身もM資金にはそれなりの知識も持っている。そんな主
人公が突然M資金の渦中に身を置くことになる。
それは終戦時に旧帝国軍が秘匿していた金塊を奪取しM資金
を創設した人物の子孫が仕掛けた戦略で、彼はM資金を人類
資金として低開発国の支援に充てようとした。しかしM資金
を共同管理するアメリカ側がそれ妨害していたのだ。

[5]続きを読む

07月30日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る