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On the Production
by 井口健二
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■恋する輪廻、逃走車、天使の分け前、ひかりのおと、ダーク・タイド、ブラインドマン+DVDマガジン記者会見、ナンバーテンブルース追記
に危険な事態へと引き込んで行く。そして自らの危機を脱す
るため男は車を駆って行くことになるが、その先には思いも
よらぬ陰謀が隠されていた。
共演は、ニューヨーク生れだが南アフリカで育ち、イギリス
のテレビ“Wild at Heart”にレギュラー出演したこともあ
るという女優・歌手のナイマ・マクリーン。この他の脇役も
南アフリカの俳優たちが固めているようだ。
脚本と監督は、コマーシャル出身で本作が長編監督2作目と
いうムクンダ・マイクル・デュウィル。因に本作の脚本は、
2010年度の未製作の映画脚本コンテスト(ブラックリスト)
において、エージェントたちの投票による第1位を獲得した
作品だそうだ。
また本作では、全編を車載カメラで撮影するというコンセプ
トが採られ、しかもカメラはアナモフィックレンズを装着し
たフィルムカメラ。その撮影条件はかなり厳しいが、それを
こちらもコマーシャル出身のマイルス・グドールが見事に実
現している。
という作品ではあるが、僕の個人的な希望としてはもう少し
背景をはっきりさせて欲しかったかな。特に発端の車両がす
り替えられた経緯は、単なる偶然というのはちょっといただ
けない。
特に主人公に特別な事情があるという設定では、その経緯が
罠の可能性もあるし…。その辺が曖昧にされていると何とも
観ていて落ち着かなかった。まあ最近の観客はそんなことな
ど頭が働かないのかもしれないし、日本映画の大半はそんな
ものだが。
なおブラックリストに関しては、2月1日の製作ニュースで
少し紹介する予定だ。

『天使の分け前』“The Angels' Share”
昨年2月紹介『ルート・アイリッシュ』などのケン・ローチ
監督がスコッチ・ウィスキーを題材にして、現在のイギリス
を寓意的に描いた作品。
舞台は、スコットランドのかつての工業都市グラスゴー。そ
の街で暮らす若者ロビーは、暴力があふれる環境の中で荒ん
だ生活を送っている。そんな彼は少年刑務所を10ヶ月前に出
所し、愛する恋人と生まれてくる子供のために暮らしを立て
直したいが、周囲の環境はそれを許そうとしない。
そして売られた喧嘩で相手を傷つけたロビーは、簡易裁判で
300時間の労働奉仕を命じられる。こうして同様の連中と共
に指導官の許で作業に着くが、ロビーの真面目な態度を認め
た指導官は彼らを蒸留所の見学に連れ出す。そこでウィスキ
ーの奥深さに目覚めたロビーにはある展望が開けるが…。
とここまではかなりシリアスな社会派ドラマが展開するが、
ここからが奇想天外というか、ケン・ローチ監督らしい見事
な人生逆転のドラマとなる。それは必ずしも良い子ばかりで
はない主人公たちが繰り広げる大作戦といった感じのもの。
これには多少後ろめたくても喝采を上げてしまった。
題名は、長年寝かした樽の中で、蒸発などによって少しずつ
減って行くウィスキーの減分のこと。その「天使の分け前」
が主人公たちの幸運の糧となる。
出演は、本作の舞台グラスゴーで脚本家ポール・ラヴァティ
がリサーチ中に見出したというポール・ブラニガン。本作で
はスコットランドの映画賞で主演男優賞も受賞している。他
に2010年11月紹介『エリックを探して』などのジョン・ヘン
ショー。2002年11月紹介『Sweet Sixteen』に出演のガリー
・メイトランドとウィリアム・ルアン。
さらにオーディションで選ばれたジャスミン・リギンズ。グ
ラスゴー出身のシヴォーン・ライリー。昨年8月紹介『ウー
マン・イン・ブラック亡霊の館』などのロジャー・アラム。
それにスコッチウィスキーの世界的権威とされるチャーリー
・マクリーンらが脇を固めている。
スコットランドには40年近く前にネス湖を見に行ったことが
ある。その際グラスゴーは夜行列車で深夜の通過だったが、
早朝に見たエジンバラ城やハイランドの風景は今も変わって
いなかったようだ。ついでに言えば、その時の記念に買った
マグカップに書かれた‘Trew or False?’の謎が、本作では
真実と確認することができた。

『ひかりのおと』

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01月20日(日)
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