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On the Production
by 井口健二
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■ダイアナ・ヴリーランド、故郷よ、マーサあるいは…、タリウム少女の…、ももいろそらを、砂漠でサーモン…、しあわせカモン、立川談志
っていた。そして事故の当日に災害を最小限に食い止めよう
と活動し殉職した人々の碑を詣でる2人だったが…。
物語には幻想的な要素もあって、それが鋭く観客の心に突き
刺さる。特に結末では原子力災害のもたらす悲劇の大きさが
見事に表されていたと言える作品だ。
出演は、2006年12月紹介『パリ、ジュテーム』などのオルガ
・キュリレンコ。ウクライナ出身の女優は、美し過ぎるとし
て難色を示す監督を説得してこの役を獲得したのだそうだ。
他に、2007年『カティンの森』などのアンジェイ・ヒラらが
脇を固めている。脚本と監督はハミル・ボガニム。本作はイ
スラエル・ハイファ生まれのドキュメンタリー作家による初
の長編劇映画になっている。
チェルノブイリ関連の作品は、昨年8月に『チェルノブイリ
・ハート』と9月に『カリーナの林檎』を紹介しているが、
その長期に亙る災害の様子には、自らの未来を見るような感
じで暗澹たる気持ちになる。これは決して他山の石とは言え
ない作品だ。
『マーサ、あるいはマーシー・メイ』
“Martha Marcy May Marlene”
前回紹介『レッド・ライト』のエリザベス・オルセン主演で
窮地を逃れようとする若い女性を描いたドラマ作品。
主人公の名前はマーサ。物語は彼女が農場を抜け出し電話を
架けるところから始まる。その彼女がいた農場はあるカルト
集団の住処で、彼女はそこから逃れようとしていたのだ。そ
んな彼女の姿と、カルト集団での生活の様子が描かれる。
それは、最初は孤独だった彼女を温かく迎え入れてくれるも
のだったが、徐々にその危険な本性が表されてくる。そんな
本性に彼女はギリギリで気付くのだが、そこにはすでにマイ
ンドコントロールされた彼女もいた。それらの葛藤が描かれ
て行く。
共演は、2011年8月紹介『ウィンターズ・ボーン』でオスカ
ーノミネートを果たしたジョン・ホークス、2009年3月紹介
『ザ・スピリット』などのサラ・ポールスン、2008年2月紹
介『ジェイン・オースティンの読書会』などのヒュー・ダン
シー、また2008年9月紹介『ファニー・ゲームU.S.A.』
などのブラディ・コーベットらが脇を固めている。
脚本と監督は、2005年のFilmmaker誌で「今後のインディペ
ンデント映画を牽引する25人」に選ばれたというショーン・
ダーキン。彼は2003年に仲間と共に会社を設立し、短編映画
や仲間の作品の製作でも数多くの受賞に輝いている。本作は
そんなダーキンの長編監督第1作となる。
因にダーキンは、本作の前にマーサがカルト集団に連れ込ま
れるまでを描いた短編を400ドルで制作し、その作品がカン
ヌ映画祭の監督週間でグランプリを獲得。同時にマーケット
に出品した本作の脚本が高評価となり、製作に漕ぎ着けたと
のことだ。
カルト集団を描いた作品としては、2011年7月紹介『ドライ
ブ・アングリー』や2007年6月紹介『ウィッカーマン』など
が思い浮かぶが、集団からの離脱を描いた作品では、2003年
5月に紹介した『ホーリー・スモーク』が印象に残る。
ただ2007年作も本作も、離脱に伴う危険などを充分には描き
切れていないようにも感じられ、これはやはり本作の続編を
制作して、その辺も克明に描いて欲しいと思うものだ。
『GFP BUNNY−タリウム少女のプログラム−』
(公開題名:タリウム少女の毒殺日記)
今年の東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で上映さ
れ、同部門の作品賞を受賞した作品。映画祭の作品は本来は
別掲で紹介するものだが、本作は来春一般公開も決定してお
り、外国特派員教会でのQ&A付き特別上映で再度鑑賞をし
たので、改めて紹介する。
物語は2005年に実際に起きた事件をモティーフにしたもの。
ただしそれをそのまま映画化するのではなく、事件を起こし
た少女を2011年に再配置し、そこにさらに現代科学の最前線
の情報も紹介しながら事件を再構成した、言わばメタフィク
ションという感じの作品に仕上げられている。
その事件は、16歳の少女が実の母親にタリウムを飲ませ毒殺
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11月18日(日)
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