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On the Production
by 井口健二
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■アンノウン、ドリーム・ホーム、狂乱の大地、Peace、アベック・パンチ、レッド・バロン、ファースター、薔薇とサムライ
働いていた父親は肺疾患で仕事が続けられなくなる。
そんな少女が成長した現在、彼女の夢は高層マンションの住
人になること。そして彼女は日夜働いてその資金を貯めてい
たが、不動産の高騰はその貯金残高の増加を上回っていた。
それでも何とか頭金は揃った彼女だったが…
原案・製作も手掛ける監督は、「香港の抱える社会矛盾」を
描きたかったとのことだが、かなり過激な描写の中でその意
図は明確に描かれている。とは言え、本作の見所は残虐な殺
戮シーンで、ジャッキー・チェンのチームも加わったその描
写は見事なものだ。
それは、ヨーロッパの映画祭では上映に際して観客に汚物袋
が配布された程だったということだが、確かにスプラッター
を見慣れた目でもこれはなかなかと思わせるものになってい
た。日本では「R+18」の指定になるようで、期待しても
らいたいところだ。
出演は、2002年10月紹介『パープルストーム』などのジョシ
ー・ホー。実生活ではマカオのカジノ王の娘というセレブだ
が、カナダ陸軍士官学校を卒業後、香港映画界でアクション
もこなせる女優として実績のある彼女が、本作では初のプロ
デュースも手掛けている。
共演は、ミュージシャンでもあるイーソン・チャン、香港映
画の重鎮エリック・ツァンの息子で本作の脚本も担当したデ
レク・ツァン。他にもラッパーや映画のスタッフなど、俳優
に捉われない配役がされているようだ。
なおホーチョン監督の作品は、本作以外はほぼ全作が東京国
際映画祭で上映されているとのことだが、本作で初めて日本
での一般公開が実現するものだそうだ。
『狂乱の大地』“Terra em Transe”
1960年代のブラジル映画界から世界に発信され、シネマ・ノ
ーヴォと呼ばれた映画運動の先駆者の1人グラウベル・ロー
シャ監督による日本未公開だった1967年の作品。
南米にある架空の国家エルドラドを舞台に、詩人である主人
公が保守と革新の狭間で揺れ動き、様々な政争の中で翻弄さ
れて行く。そんな姿が詩の朗読のような台詞と寓意に満ちた
エピソードの中で綴られる。
元々は保守派の政治家の庇護の許にいた主人公は、地方に取
材に行った際に女性活動家と知り合い、彼女の影響で進歩的
な政治家を知事選に勝利させる。しかし知事に当選した政治
家はいろいろな柵によって改革を断行できない。
そんな姿に失望した主人公は、今度は国一の企業家に近付く
がそれも裏切りに遇ってしまう。しかし、女性活動家の熱意
で再び政治に向かった主人公は、武力闘争も持さない決意で
政争に飛び込むが…
という物語が時間軸を入れ替えて描かれるが、実はうっかり
観ていると話が混乱して、正直なところは、映画が終ってよ
うやく全体が理解できた感じがした。こんな作品が1960年代
に作られていたとは…という感じの先進的な作品だ。
それでいて描かれる政治の話は、今でも全く違和感なく通用
するもので、その戯画化された描き方も、現代の作品として
も全く問題なく理解できる。結局のところ政治家というもの
は今も昔も変わらないということが、図らずも本作で描かれ
ているようだ。
実際に本作が描く海外企業の意志が国家の政策を支配してい
る様子などは、全くアメリカGEの意向が全ての日本の今の
原子力政策を観ているようで、その先見的な内容にも感心さ
せられてしまうところがあった。
なお本作は、「グラウベル・ローシャ・ベスト・セレクショ
ン」と称して6月18日から東京渋谷のユースペースで特集上
映される代表作5本の内の1本で、他には1962年『バラベン
ト』、1964年『黒い神と白い悪魔』、1969年『アントニオ・
ダス・モルテス』、1980年『大地の時代』の上映が予定され
ている。
この内、『バラベント』と『大地の時代』も日本初公開とな
るものだ。
『Peace』
2007年5月に『選挙』と2009年4月に『精神』という作品を
紹介している想田和弘監督による観察映画の最新作。だたし
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04月17日(日)
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