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On the Production
by 井口健二
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■名前のない女たち、半次郎、超強台風、ヌードの夜、蛮幽鬼、武士の家計簿、玄牝+製作ニュース・他
主演は、鹿児島県出身で自らジゲン流の使い手でもある榎木
孝明。榎木は本作の企画者として映画の実現に尽力もしてい
る。共演は、EXILEのAKIRA、2008年12月紹介『カフー
を待ちわびて』などの白石美帆。
他に、津田寛治、坂上忍、雛形あきこ、竜雷太らが脇を固め
ている。また西郷隆盛役は、一般公募で選ばれた人が演じて
いるそうだ。
監督は、2006年12月紹介『長州ファイブ』も手掛けている五
十嵐匠。監督本人は青森県の出身のようだが、薩長両方の維
新の偉人たちを演出したというのも珍しいことだろう。

『超強台風(仮題)』“超強台風”
2008年の東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、
マスコミ向けの事前試写で大受けだった作品が日本公開され
ることになり、再度試写が行われたので報告する。実は、こ
の年は個人的な事情で映画祭の報告が全くできなかったもの
で、その中で本作を紹介しそびったことは大いに気になって
いた。それができることも嬉しいものだ。
ただし事前試写で大受けだったとは言うものの、これがコン
ペティション出品なの?とは驚いた作品だったが、結構好き
者ばかりが揃った試写会では、終るなり「懐かしい特撮だっ
たねえ」とか、「昭和の味だね」なんて声が聞かれた。
物語の舞台は、中国沿岸部の浙江省温州市。低地帯には経済
特区を目指す高層ビル群の建設も進められている台湾海峡よ
り少し北に位置するその都市を、「藍鯨」と命名された未曾
有の勢力を持った台風が襲う可能性が出てくる。
そこでまず市長には、市民に避難勧告を出すか否かの決断を
迫られる。そこには、避難を勧告することによる経済的な損
害の大きさを指摘する反対意見も提示される。しかし市長は
人命優先と避難勧告を発令するが…
迷走しながらもどんどん勢力を強める台風に、市長以下の市
のスタッフや警察、軍隊、それに気象学者らが振り回され、
その中での台風への準備のあり方が問われて行く。そこには
常に市長の決断が求められるものだ。
しかもこの市長は八面六臂、問題が生じたところには自ら出
動してしまうから話が面白くなる。何しろこの市長は、台風
が直撃する低地の漁港で貧弱な避難所に漁民たちと共に閉じ
込められてしまうのだから。
その上その避難所には、波に浚われた自動車や陸に打ち上げ
られた漁船、それに…などが襲い掛かってくる。
その一方で、医師が不在で研修医だけの離島の診療所で、妊
婦が研修医の手に負えない難産になったり、次から次へ難題
が持ち上がり、市長はそれらの難題にも対処をしなければな
らなくなる。
実はその地域では、1956年に4000人を越す犠牲者を出す台風
災害が起きており、それが市長の決断にも繋がっているのだ
が、その辺の歴史的な話も織り込みながら、たった93分の映
画に良くもまあこれだけのエピソードを詰め込んだと思う物
語が展開される。
その上、その台風災害を描くのがミニチュアワークによる特
撮。これが上記の「懐かしい」の発言にも繋がるのだが、C
GI全盛のこの時代に、よくもここまで手間を掛けたと思わ
れる見事なミニチュア特撮が展開される。
もちろん水の動きなどには大きさが出てしまうし、それは最
近のCGIVFXを見慣れた観客には物足りないかも知れな
いが、正に水の恐ろしさを描き切るにはこのミニチュアの方
がふさわしい、そんな感じも抱かされた。
出演は、主に本土のテレビで活躍している男優ウー・ガン、
2008年8月紹介『初恋の思い出』に出演の女優ソン・シャオ
イン、それに研修医役で愛らしい演技を見せるリウ・シャオ
ウェイは監督の奥さんだそうだ。
その監督のフォン・シャオニンには、映画祭でのティーチ・
イン情報によると、以前に『大気圏消失』という作品も発表
しているそうで、本作も地球温暖化などの環境破壊への警鐘
として描いているとのことだ。
登場するミニチュアにはレトロな感じもしてしまうが、それ
も映画の楽しみという感じもするし、かなり荒唐無稽な展開
の中にもちょっと心の隙間を突かれてしまう部分も有って、

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08月08日(日)
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