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On the Production
by 井口健二
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■怪談新耳袋・怪奇、TENBATSU、REDLINE、夏の家族、プチ・ニコラ、ソルト+製作ニュース
伸びてくれれば、それもまた本作の価値になるだろう。
とは言え、恐怖感が全く湧いてこないのは出演者の演技のせ
いばかりとも言えないようで、実際にリズム感の無い編集や
演出には、何か渡された脚本通りに撮って、そのまま編集し
ています…という感じもして、あまり映画らしさが感じられ
なかった。
監督は、『リング』などの助監督を務めて本作で長編監督デ
ビューだそうだが、何かもう一つ映画としての工夫が足りな
い。恐らく単純なコケ脅かしなどの恐怖演出はわざと排除し
たのだろうが、そこから次の段階が観えてこないのだ。
ただ、そのコケ脅かしを排除する考え自体は正しいと思うの
で、今はホラー以外の作品を何本か撮って、それからホラー
に再挑戦してくれたら、その時はきっと良いものが出来そう
な感じもした。その期待値は在りそうだ。
『REDLINE』
2003年に発表された短編9本からなる『アニマトリックス』
の内の1本を手掛けた小池健監督による長編アニメーション
作品。
反重力装置によるエアカーが発達した未来世界を舞台に、そ
れでも4輪に拘わってレースを繰り広げる者たちを描く。
未来のレースというと、実写作品でも『マッハ Go!Go!Go!』
から『デスレース』まで様々作られているが、異惑星の荒野
を背景にしているということでは、『スター・ウォーズ:エ
ピソード1』を思い出すところだ。
そのキャラクターを模したような異星人もいろいろ登場する
作品で、そのパロディというか、オマージュといった感じで
も作られているのかな。でもまあ、主人公が思い寄せる女性
ドライヴァーや裏で糸を引く黒幕なども出てくるから、お話
は違うものだ。
脚本は、『鮫肌男と桃尻女』の石井克人の原作から、石井と
『エヴァンゲリオン』の榎戸洋司、『攻殻機動隊』の櫻井圭
記が共同で執筆したもの。ニトロを使ったりそれより強力な
燃焼剤など、アクセサリーはいろいろ用意されている。
ただ、主人公と女性ドライヴァーの関係などはもう少し描き
込めばもっと面白くできたと思うが、レースとそのアクショ
ンを描くことに力点が置かれて、心理的な点が多少おざなり
なのは残念に感じられるところもあった。
声優は木村拓哉、蒼井優、浅野忠信。木村と浅野はそうだと
思えばそれなりの感じだが、木村は兎も角、浅野のアニメの
キャラクターが本人とかけ離れているのが何となくしっくり
と来なかった。ディズニーが声優は骨格で選ぶという理由が
判ったような気もした。
それに対して蒼井は、『鉄コン筋クリート』のときの抜けた
ような声も見事だったが、今回は木村を相手にしての大人の
女の演技や、その一方で幼い頃のシーンの巧みな声色など、
これもまた聞けるものになっていた。この女優には本当に限
界がないようだ。
毒気満載のキャラクターや途中に挿入されるゲストアニメー
ターによるシーンなど、良くも悪くもマッドハウスのファン
には喜ばれそうな感じの作品で、僕には多少食傷気味なとこ
ろもあったが、多分まだファンは健在なのだろう。
『夏の家族』
フランス在住20年という日本人舞踏家・岩名雅記の脚本監督
主演による作品。
岩名の作品では2007年オランダ・ロッテルダム映画祭などで
公式上映された『朱霊たち』という作品に続く長編第2作と
のことで、本作もブエノスアイレス・インディペンデント映
画祭などで公式上映されているようだ。
異業種の監督の作品というのもいろいろ観させて貰っている
が、大体は自身の日常捉えたセミドキュメンタリーのような
作品が多い。従って、この作品もある程度はドキュメンタリ
ーかなという先入観で観ていた。
その点の本作は、モノクロ16ミリで撮影された作品全体の雰
囲気もそうだが、岩名の舞踏などのパフォーマンスも随所に
挿入されて、それなりのものとしても楽しめた。
それでいてこの作品では、物語の始まりでは画面に登場しな
い子供の声など、何か不思議な雰囲気も持っており、さらに
その子供の存在が途中からいろいろ変化し、それはそれなり
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07月25日(日)
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