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On the Production
by 井口健二
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■トイ・ストーリー3/3D、最後の忠臣蔵、石井輝男/映画魂+製作ニュース
親友であり大石に直接仕えていた瀬尾が、なぜ逐電したのか
理由が判らなかった。
その瀬尾は、彼のことを「孫左」と呼び捨てにする若い女性
と暮らしていたが、表向きは古美術商として地方に埋もれた
美術品を都で売り捌くなどの商いをしていた。そして、彼は
新たに手に入れた壺をとある豪商に売ろうとしていた。
一方、寺坂は大石の又従兄弟で公家に仕える進藤長保の許に
身を寄せていたが、ある日、豪商の招きで流行の人形浄瑠璃
を見物に行き、そこで1人の若い女性に目を留める。しかし
女性に付き添っていた瀬尾がいち早く寺坂に気付き2人は芝
居半ばで帰ってしまう。
ところがそこに同席していた豪商の息子がその女性に焦がれ
るようになり、彼女を探し始める。こうして徐々に寺坂と瀬
尾の居場所が近付いて行く。何故、瀬尾は討ち入りの前夜に
逐電したのか、16年間の秘められた謎が解かれる。
昔、『忠臣蔵』を観ていて、討ち入りを果たした浪士たちが
雪の江戸市中を行進する姿に何故か涙が止まらなくなってし
まったことがある。この作品でも最後の行列のシーンでは見
事に泣かされてしまった。
いまさら忠義だの何だのというものに心が動かされるかどう
か判らないが、少なくとも主人公たちが艱難辛苦の果てにそ
の信念が全うされる姿には、それだけで感動を呼ぶものがあ
るのだろう。そんなある種の根元的な感動がうまく描かれた
作品のように思えた。
主役の2人の侍を演じるのは役所広司と佐藤浩市。共演は、
桜庭ななみ、片岡仁左衛門、安田成美、伊武雅刀。他に、田
中邦衛、風吹ジュンらが脇を固めている。
監督は、テレビシリーズ『北の国から』などの杉田成道、脚
本は、1981年『セーラー服と機関銃』などの田中陽造。ベテ
ランの味が存分に発揮された作品と言えそうだ。

『石井輝男/映画魂』
一般的には『網走番外地』の監督として、SF映画ファンに
は『鋼鉄の巨人/スーパー・ジャイアンツ』の監督として、
さらに『ねじ式』などカルト映画の監督としても勇名を馳せ
ながら、2005年に急逝した石井輝男監督の映画人生を綴った
ドキュメンタリー。
1924年東京麹町に生まれ、戦前の東宝撮影部に入社。終戦後
の東宝争議で誕生した新東宝の助監督部に移籍、成瀬巳喜男
らの許で名助監督として名を馳せ、監督に昇格して『鋼鉄の
巨人』などを発表する。さらに東映に移籍して『網走…』な
どを監督。
しかし東映京都撮影所では、『徳川女刑罰史』など一連のエ
ログロ作品で助監督らのボイコットにも遭ってしまう。その
後は一時仕事を止めた時期もあるが、回顧上映などで再評価
が高まり、自らプロダクションを興して2001年まで映画監督
を続けたとのことだ。
という石井監督の映画人生が、助監督当時からの仲間や出演
俳優らの証言で綴られる。その証言者には、丹波哲郎、三ツ
矢歌子(以上音声のみ)から、佐野史郎、ひし美ゆり子、賀
川ゆき絵、砂塚秀夫、さらに造形の原口智生まで、いろいろ
な世代の人々が登場する。
本作監督は、映画評論家で監督のダーティ工藤。工藤は生前
の石井監督とも親交があったそうで、その間に撮影されたメ
イキングフィルムなども合わせて本作が作られている。さら
に石井監督が生前に撮った土方巽の舞踏の様子なども収めら
れている。
実は、試写の前に工藤監督の挨拶があって、その中で「石井
さんは人徳はなかったけど、エピソードは多かった」と言う
ような発言があり、そこで場内爆笑。そんな楽しい雰囲気が
作品の中にも溢れていた。
昔の映画人にはいろいろ破天荒な人も多かったようだが、石
井監督はその中の1人なのだろう。そんな古き良き時代の映
画界のことも垣間見られる作品だ。特に、高倉健との関りな
どは聴いているだけで嬉しくなる。
なお公開は、石井監督の命日の8月12日から東京渋谷のユー
ロスペースで行われ、さらに本作の公開に併せて7月31日か
ら同館4階のシネマヴェーラで石井監督作品の特集上映も行
われるそうだ。
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06月27日(日)
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