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On the Production
by 井口健二
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■サイタマノラッパー2、結び目、氷雪の門、バウンティー・ハンター、アムステルダム国立美術館+製作ニュース
痴呆気味の義父の世話に手は焼いていたが、自動車修理工場
を経営する夫とは平穏に暮らしていた。
ところがある日、腕が良いと紹介されたクリーニング店に服
を預けに行った彼女は思わぬ再会(?)を果たす。その店を
若い妻と共に切り盛りする職人は、主人公と前に何か関係が
あったようだ。そんな謎めいた状況から徐々に過去の事件が
明らかにされて行く。
実は映画の始まり方が、僕の苦手とする某監督の雰囲気に似
ていて、ちょっと退いた感じで観始めてしまった。内容的に
も過去の事件というのが子育てを経験した者には多少きつい
ものだったりもして…
でも映画の結末は、それなりに常識的なところに納まってい
るし、観終ればそれほどひどい作品でもなかったような印象
になった。まあこんなこともあるのだろうし、それで主人公
たちが納得しているなら、それもそれで良いという感じの作
品だ。
主人公の女性を演じるのは、2008年11月紹介『かさぶた姫』
にも出演していたらしいが、女優・脚本家・演出家で、劇団
も主宰しているという赤澤ムック。かなり起伏のある役柄を
がんばって演じている。
その相手役に、2008年11月に紹介した『ポチの告白』などの
川本淳市。他に、昨年10月20日付東京国際映画祭出品作品で
紹介した『つむじ風食道の夜』などの広澤草、昨年4月紹介
『蟹工船』などの三浦誠巳らが共演。日本映画界ではそこそ
この中堅が集まっていた。
ところで、本作の撮影にはニコンディジタル一眼レフカメラ
D90の動画撮影機能「Dムービー」が使用されたとのこと
で、試写会ではその画質にも注目していた。しかしプロジェ
クターとの相性が良くないのか、期待ほどの成果は挙がって
いないように感じられた。
試写会場は、以前Blu-Rayの上映ではそれなりの画質で鑑賞
したことのある場所だったが、今回は画質も甘く満足できる
ものではなかった。いろいろ試行錯誤の最中だろうが、折角
高画質で撮影したのなら、それなりの良い画質の上映を期待
したいものだ。

『樺太1945年夏 氷雪の門』
終戦後の1945年8月20日に、当時は日本の領土だった樺太庁
真岡郵便電信局で起きた9人の女性交換手にる集団自決事件
の実話に基づくドラマ作品。本作は1974年製作だが、当時の
ソ連政府からの抗議で一般公開の中止された作品が、改めて
公開されることになったものだ。
物語の舞台となる南樺太は、九州ほどの広さがあり、そこに
40万人ほどの入植者が暮らしていたと言われている。全体で
は北海道より少し小さい程度の樺太島の南半分を占め、北部
をソ連が支配していたそこは、本土唯一の陸上に国境線を持
つ場所でもあった。
そんな樺太の西岸に位置する湊町の真岡には南樺太全域の電
話の中枢となる真岡郵便電信局があり、軍部から民間への発
令の伝達や一部には軍部の情報の伝達の役目も担っていた。
そして物語は、1945年8月15日の数日前から始まる。
日本の敗色が濃くなった8月9日、ソ連は日本のポツダム宣
言受諾拒否などを理由に対日宣戦を布告。国境線から侵攻を
開始する。これに対して日本の軍部は積極的な交戦を回避、
さらに8月15日の玉音放送の後は戦闘は終るものと考えてい
たようだ。
ところがその後もソ連軍の侵攻は止まず。軍部は急遽、婦女
子を中心とした本土への避難を開始するのだが…
そんな中、真岡郵便電信局では一部の女子交換手たちが通信
の重要性に鑑み、最後まで職務を続ける覚悟を決めていた。
それは進駐してくる兵士たちによる略奪や暴行などの事態も
予想される中での重大な決意だった。
そして8月20日、真岡沖に現れたソ連艦からは艦砲射撃の後
に兵士の上陸が開始される。やがてその兵士が郵便電信局に
侵入したとき、交換室にいた9人の女性たちは「みなさん、
これが最後です」の言葉を送信し、青酸カリを飲んで自決し
てしまう。
この女性たちの物語を中心に、国境警備隊の兵士や軍部の対
応の様子、また北部国境近くにいた住民たちの避難の様子な

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05月16日(日)
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