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On the Production
by 井口健二
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■誰かが私にキスをした、カケラ、桃まつり−うそ、17歳の肖像、バッド・ルーテナント、コララインとボタンの魔女:3D(追記)
女とは別れたと言っていながら関係を続けているその男の真
心が感じられない。
そんな彼女がある日、街角の喫茶店で1人の女性と出会う。
その女性リコは、事故や外科手術などで身体の一部を失った
人のために、その部分を修復するパーツを作る仕事をしてい
た。
こうして、心に欠けたものを感じているハルと、人の欠けた
部分を満たす仕事をしているリコの関係が始まるが…
この主人公を、2008年11月紹介『プライド』などの満島ひか
りが演じ、相手役にはオーディションで選ばれたという新人
の中村映里子が起用されている。他に、津川雅彦、かたせ梨
乃、光石研、根岸季衣、志茂田景樹、永岡佑らが共演。また
監督の妹の安藤サクラも出ていたようだ。
原作は読んでいないが、映画では女性が抱え込んでしまう問
題を丁寧に描き出している感じがする。と言っても僕は男性
だからその点も良くは判っていないのだろうが。でもこの映
画作品を観ていると、上手く若い女性の心が描けている感じ
がするところだ。
監督は、すでに父親の作品の助監督などで日本映画の現場も
慣れているようで、長編デビュー作とは思えない堂々とした
演出ぶり、決して親の七光とは言えない作品だ。特に主人公
たちの思いが見事に伝わってくる感じで、上記の経歴も伊達
ではないと思えた。

『桃まつり−うそ』
一昨年2月と昨年1月にも紹介した『桃まつり』の第3弾。
女性映画人による短編映画集が、今年は全11作品を3プログ
ラムに分けて3月13日から東京渋谷ユーロスペースにてレイ
トショウで公開される。
例年2本ほどが試写会に間に合っていなかったが、今回は全
11本が揃っての試写が行われた。試写の順にコメントを記載
しておく。
『−壱のうそ』
「迷い家」(監督:竹本直美、出演:染谷将太)
毎回紹介している監督だが、今回は前回に似たムードの作品
を観せて貰えた。発端から結末までのかなりの部分を観客の
想像に委ねる手法は短編だからこそ許されるものとも思える
が、前作も本作もその利点を上手く扱っている。初年度のよ
うな作品も観たいが、今回の手法もいろいろなシチュエーシ
ョンでとことん突き詰めて貰いたい感じもする。
「代理人会議」(監督:石毛麻梨子/大木萠、出演:吉岡睦
雄)
修学旅行で起きたトラブルへの対応を検討する会議が開かれ
るが、そこに集まったのは当事者の代理人ばかりで…。アイ
デアは面白いが、代理人会議というシチュエーションと問題
となっているトラブルが上手く絡んでいない感じがする。も
っと代理人だからこそ生じる展開が欲しい。ただ無責任とい
うだけでは物足りない。
「FALLING」(監督:加藤麻矢、出演:春山怜那)
僕の立場だとそれなりの時点で物語の展開に気づいてしまう
もので、そこからが何とも落ち着かない気分で観ることにな
ってしまった。ただ基本の設定はそれなりに押さえられてい
たし、文句を付けるつもりはないが、監督はアン・ライスの
著作に触発されたようで、全体に詰めが甘い感じなのはその
せいでもありそうだ。
「愚か者は誰だ」(監督:渡辺裕子、出演:野村宏伸)
浮気女に振り回される夫と、素行調査を依頼された男、そし
て浮気相手の男を巡る物語。テーマは有り勝ちかも知れない
が、展開はそれなりに面白いし、映像及び俳優に対する演出
もしっかりしている感じだ。ただ、結末で男の目蓋が動いた
のは演出か否か、その辺は明確にした方が良いような感じが
したが。
『−弐のうそ』
「きみをよんでるよ」(監督:朝倉加葉子、出演:森崎さあ
や)
親子と称している年の離れたカップル。その男性が援助を求
めた山間の別荘は、孤独な若い男性が管理をしていた。音に
対する演出が良い感じだし、メモを書くときのちょっとした
間合いなどが実に巧みに演出されている感じがした。物語も
短編という器の中にピッタリと填っており、それを細やかな
演出が際立たせている感じの作品だ。
「カノジョは大丈夫」(監督:安川有果、出演:前野朋哉)

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01月24日(日)
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