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On the Production
by 井口健二
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■母なる証明、ピリペンコさんの手づくり潜水艦、僕らのワンダフルデイズ、無防備、犬と猫と人間と、動くな死ね甦れ!+製作ニュース
わりの収穫期で断られたりもする。でも結局は借りることが
できて、ウィンチで潜水艦を荷台に引き上げたりの作業の末
に出発する。
このドキュメンタリーがどのような経緯で撮影されたのかよ
く判らないが、製作会社はドイツのようで、すでに話は雑誌
などに紹介されていたようだ。従って撮影の時点が何時なの
かも不明で、つまり全体は再現フィルムなのかも知れない。
それにしても大らかな話で、途中紹介される写真では継ぎ接
ぎだらけの潜水艦が、見事にライトグリーンに塗装されて黒
海へと向かって行く。そして潜水、さらに調子に乗っている
結末も楽しいものだった。
それに、ピリペンコさんが朗々と歌う姿も心地よく印象に残
った。

『僕らのワンダフルデイズ』
癌で余命幾許もないと知った男が、人生の最後を高校時代の
仲間とバンドを再結成して、バンドコンテストに挑もうとす
る音楽コメディ。
主人公は胆石の摘出手術を受け、術後の回復促進のため病院
内を歩行中に医者の話を立ち聞きしてしまう。そこでは53歳
で胆石と称して手術を受けた男性に癌の転移が見つかり、処
置不能と判断したというのだが…
しかも配偶者が患者への告知を拒否し、人生の最後を心置き
なく過ごさせたいと願っている…という話も聞いてしまう。
この展開は、典型的な「ああ勘違い」という奴で、この他に
も勘違いの経緯が配偶者の態度などでいろいろと提示されて
行く。そして主人公がどんどん落ち込んで行くことになる。
正直に言ってこの辺りでは、何を今さらの展開にいい加減辟
易して観ていた感じがする。僕自身10数年前に胆石の手術を
受けたことがあり、術後の歩行シーンなどにはニヤリとして
いたのだが、病気の勘違いものというのは、現実の患者への
配慮などでは不愉快に感じてしまうところもあるものだ。
しかしこの作品ではそこからの展開というか捻りが実に上手
かった。確かに同病の患者への配慮という点では、全治した
自分としては判断が充分に付かない部分もあるが、それでも
全体としては楽しめるし、納得もできる話になっていると思
えた。
そして、いろいろな現代を反映した紆余曲折の末に、最後は
バンドコンテストへと雪崩れ込んで行く。出演は、バンド仲
間役で竹中直人(v)、宅麻伸(g)、斉藤暁(k)、稲垣潤一(d)、
段田安則(b)。他に、浅田美代子、紺野美沙子、貫地谷しほ
りらが共演している。
音楽をテーマにした作品は、その音楽の出来で作品の評価も
左右されるが、本作では奥田民生が音楽のアドヴァイザーに
なって主題歌や挿入歌の作詞作曲も手掛けており、その辺は
しっかりしている。
それに出演者が実際に演奏をしているのも良い感じだった。
ファンには稲垣のドラムもしっかりと観ることができる。な
お稲垣の演技は観るとドキドキだが、時々放つ至言にはなか
なかの含蓄があった。

『無防備』
ある出来事の結果、周囲に対して無関心になってしまった女
性の再生を描く物語。
主人公はプラスチック成型の町工場で働いている30代前半く
らいの女性だが、新人の研修を任されるほどのベテランのよ
うだ。しかしいつも徒歩通勤で、マイカー通勤の同僚たちと
も余り話すこともなく、少し浮いた感じになっている。
そんな主人公の職場に1人の妊婦が新人として入ってくる。
実は2人はその前に出会っており、主人公はそんな新人の研
修を任されることになるのだが、いつも一所懸命な割りには
抜けたところのある新人の態度に主人公は戸惑いを覚える。
そしてその新人は、先輩である主人公に取り入ろうといろい
ろなことをしてしまい、それが主人公の神経を逆なでする。
でもそんな中にも一所懸命な新人の姿に、主人公は徐々に心
を開くのだが…
人は、自分では良かれと思ったことでも相手を傷つけてしま
うことがある。それはちょっとした言動であったり、悪戯で
あったりもするのだが、それが心に傷を負った人には大きな
痛手となる。そんな生活の機微のようなものが見事に描かれ
た作品だった。

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08月09日(日)
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