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On the Production
by 井口健二
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■アバンチュールはパリで、2012(特別映像)、アニエスの浜辺、わたし出すわ、イメルダ、ウォッチャーズ、虫皇帝、プール
に強調しなくても自ずと良い人間ドラマになりそうだ。
一方、それに並行して描かれる政府の動きの方でも、滅亡の
事実を民間に知らせるべきか否かの葛藤も在るとのことで、
それは小松左京『日本沈没』の原作本の中でも言及されてい
るものだが、それが明確に描ければ、それもまた良いドラマ
になる。
会見によると、映画の全体では1400〜1500のVFXショット
が盛り込まれるそうで、一部観られたその映像はかなりのク
ォリティで描かれていた。これならエメリッヒ監督最大のヒ
ット作『ID4』の再来は大いに期待してよさそうだ。

『アニエスの浜辺』“Les plages d'Agnès”
ヌーヴェル・ヴァーグ時代から活躍するフランスの女流監督
アニエス・ヴァルダが、自分自身のことや、1990年に亡くな
った生涯のパートナー=ジャック・ドゥミ監督の思い出など
を綴った自伝ドキュメンタリー。
ヴァルダは幼少の頃をベルギーの海岸に近い場所で育ったの
だそうで、一方、ドゥミ監督の代表作の『シェルブールの雨
傘』と『ロシュフォールの恋人たち』の舞台が共に湊町であ
ったことなどから、浜辺にこだわって自分の生涯を描きたく
なったのだそうだ。
そこには浜辺で遊ぶ幼少時代の再現映像や、そこにオーヴァ
ラップする現在の姿などが自由奔放な映像で綴られる。それ
と共に、ヴァルダ自身やドゥミ監督の数々の名作のフィルム
クリップや当時の撮影風景の映像なども挿入されて、映画フ
ァンには観ているだけで楽しくなる作品になっている。
もちろんそこにはドゥミ監督の死などの陰も在りはするが、
全体的には80歳を越えてまだ闊達な女流監督の元気いっぱい
の姿が写し出されている。中でも、パリ市内のシーンでも浜
辺にこだわって大量の砂を運び込んで撮影したというエピソ
ードなどは、今でも実力の在るところを見せてくれる。
その一方でヴァルダのいろいろな交友関係も描かれ、そこに
はジャン=リュック・ゴダール、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジ
ェーン・バーキン、ヴァルダが自作にその曲を使用したドア
ーズのジム・モリスンなども登場する。特に『ラジュテ』な
どのクリス・マルケル監督が、猫のキャラクターに模しなが
らいろいろ述べる下りは愉快だった。
また一時はハリウッドにも移り住んだヴァルダが、ハリウッ
ド映画で起用しようとしたものの映画会社の反対で断念した
という後の人気スターの若き日の姿と現在のコメントなども
紹介され、これはファンには思いがけないプレゼントになっ
ている。
僕自身が体験したアニエス・ヴァルダの作品は、学生時代に
アートシアターで観た『5時から7時までのクレオ』と、複
数の監督が参加した『ベトナムから遠く離れて』程度で、そ
れほどの思い入れはなかったが、この作品に描かれた彼女の
半生には思っていた以上に魅かれるものを感じた。
作中ジャガイモの着ぐるみ(私物だそうだ)まで着てはしゃ
いでみせるこの小母ちゃんの作品を他にも観みてみたくなっ
たものだ。

『わたし出すわ』
『間宮兄弟』などの森田芳光監督が、1996年『(ハル)』以来
のオリジナル脚本で発表した作品。
北海道の函館を舞台に、東京から帰省してきた女性と、地元
に暮らすその高校時代の同級生たちの物語。その同級生たち
にはそれぞれ夢があり、その夢に対して女性は、題名のごと
く無造作にその資金を提供して行く。それがドラマを生んで
行く。
子供の頃に観ていたアメリカのテレビシリーズで『100万ド
ルを貰ったら』というようなタイトルの番組があって、それ
は突然100万ドルを提供された人々の悲喜交々のドラマを描
いたものだった。
それに最近では、深夜テレビで筒井康隆がホストになったゲ
ーム的な番組も作られていたようだが、いずれにしてもアイ
デアとしては目新しいものではないかも知れない。
ただし森田監督は、上映前の舞台挨拶で「金融機関も貸渋り
の世の中で、こんなことでもないかと思って作った作品」と
していたもので、確かに今の時代の中での社会一般に対する

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07月26日(日)
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