ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460257hit]

■路上のソリスト、チャンドニー・チョーク、エンプティー・ブルー、ジャイブ、ヴィニシウス、テラー・トレイン、Sing for Darfur
がって、後半はあれよあれよの展開になる。これもまあ映画
の構成としては見事なものだ。
出演は、ボリウッドを代表するアクションスターの1人とさ
れるアクシャイ・クマール。彼自身がチャンドニー・チョー
ク出身で、俳優になる前にはバンコクのレストランで働いて
いたこともあるとのこと。本作は自身のルーツを訪ねるもの
でもあったようだ。
共演は、双子の姉妹を1人2役で演じたディーピカー・パー
ドゥコーン。かなりのワイアーアクションを演じている他、
インド系と中国系の2役を演じてみせたのも見事だ。他に、
『少林寺三十六房』などのゴードン・リュウが北条役で登場
している。

『エンプティー・ブルー』
本業はCGデザイナーという帆根川廣監督が、2003年から独
学で映画作りを開始し、初長編作品として完成させた映画。
製作には5年の歳月が掛けられたとされ、実際に群馬県で行
われている撮影は、四季折々を背景にして長期に渡っている
ようだ。
物語は、世間との折り合いに付けられない青年が、いつも階
段を昇っている夢を見続け、その中で1人の少女と出会う。
その少女の存在が語る意味は…こんな主人公と、周囲とのぎ
こちない交流が描かれて行く。
本業がCGデザイナーということではゲーム業界などにも関
係があるのかも知れないが、物語は最近のゲームではありそ
うな展開という感じのものだ。まともには掴み所のない、ち
ょっと不思議な感じのお話が展開されて行く。
ただし物語の全体は最近の若者の閉塞感というか、最近では
日本人だけでない全世界的に広がる閉塞感みたいなものが、
かなり明確に描かれているものでもあり、その点では若者だ
けではない観客層にも共感は得られそうな作品だ。
プレス資料の中で監督は、「リトマス試験紙のような作品」
と称しているが。現代人には共感の反応を示す人の方が多そ
うだ。
出演は、2008年9月紹介『ぼくのおばあちゃん』などに出演
の秦秀明。長編映画は初主演だそうだが、演技講師などもし
ているという実力派俳優の起用が、新人監督には鬼に金棒と
いう感じだ。実際かなり掴み所のない役柄をちゃんと解釈し
て演技に結びつけている。
他には長谷川葉生、今井雄一、小寺里佳、、福岡志保美など
馴染みのない俳優ばかりだったが、それぞれ手堅い演技をし
ていた。これも秦がいたお陰なのかな。そうだとすれば、な
かなかの人材だ。
監督の出身地の群馬県で行われた撮影は、上にも書いたよう
に四季折々を捉えているが、それと同時にかなり不思議な雰
囲気の風景も写しており、それらは最近流行りの癒し空間に
も似た映像を描き出している。
その映像の印象が強い分、物語の意味の掴み難い作品だった
が、全体的な感じは良いものだった。

『ジャイブ/海風に吹かれて』
『おくりびと』のグランプリ受賞で話題になった2008年モン
トリオール世界映画祭の招待作品。この作品にも地方の祭り
や葬儀の様子など日本の風物が描かれており、グランプリ受
賞の呼び水になったのかな…という感じもする作品だ。
物語の主人公は、東京に出てIT会社を立上げ業績を伸ばし
たものの、一緒に始めた人物の裏切りに遭い挫折した男。そ
んな主人公が、葬儀には出られなかった祖父の四十九日の法
要に合せて故郷の北海道江差に帰ってくる。
そして高校時代の同級生の女性にであった主人公は、彼女の
言葉から忘れていた高校時代の夢に再チャレンジしてみよう
と思い立つ。それは、1人乗りヨットで北海道を無寄港一周
すること。そして地元の仲間と共にその準備を始めるが…
因に、映画祭で上映されたときの題名は「/」から後だけだ
ったが、一般公開に合せ改題されたとのことだ。ところがそ
の前に付けられたカタカナの部分の意味がプレス資料にも書
かれていない。
それでネットを検索してみると、これはヨット用語で「風下
航での方向転換」とのこと、これが案外危険なものなのだそ
うだ。
つまり、このタイトルにはそういう意味が持たされているも

[5]続きを読む

03月29日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る