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On the Production
by 井口健二
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■雷神、映画は映画だ、PLASTIC CITY
基本的に白と黒の衣装を纏っている主人公2人が最後は共に
灰色になっていたり、挿入される映像や映画製作の裏を見せ
るような遊びも楽しめる。もちろん韓国映画らしい強烈な格
闘技アクションも用意されており、その辺のサーヴィス精神
も満点だ。
共演は、『宿命』などのホン・スヒョン、デビュー作が韓国
ホラーの旗手アン・ビョンギ作品というチャン・ヒジン。さ
らに『親切なクムジャさん』や『グエムル』に出演のコ・チ
ャンソク、伝統舞踊の人間国宝でもあるソン・ヨンテらが脇
を固めている。
『PLASTIC CITY』“荡寇”
撮影監督としてジャ・ジャンクー監督の『世界』などを手掛
けてきたユー・リクウァイによる監督作品。ブラジル・サン
パウロの東洋人街を舞台に、オダギリジョーと、『ハムナプ
トラ3』にも出ていたアンソニー・ウォンの共演で描く人間
ドラマ。
「ブラジル国境」と書かれた看板の立つ川沿いのジャングル
の中を幼い子供の手を引いてさまよう日本人夫婦と、武装し
た男に護送されている東洋人の男。そんな彼らが遭遇し、銃
撃戦の末に夫婦は射殺され、子供は逃亡に成功した東洋人の
男に拾われる。
そして時は流れ、東洋人の男はサンパウロの東洋人街で勢力
を張る顔役となり、彼に拾われた子供は、男の息子としてコ
ピー商品などを捌く右腕となっていた。しかしその東洋人街
を狙う新たな勢力との抗争が勃発する。
基本的な物語は裏社会ものということになるが、それと同時
に血の繋がらない親子の特別な関係が描かれる。ただし、そ
れは明確には描かれておらず、それでも強い絆があるという
展開はドラマとして納得はするが、もう少し丁寧に描いて欲
しい感じもした。
しかもそれを、宗教も絡めたかなり幻想的な描き方で進めて
行くことには多少の違和感も感じてしまったところだが…。
実はこの幻想的な部分には別の魅力も感じたところで、この
摩訶不思議な感覚が、この作品の真の狙いなのかとも思えて
くる。
この辺の2面性は、多分に意図的でもあるのだろうが、僕自
身も含めたその種の作品が好みの人には評価されそうな魅力
にもなっているものだ。まあそれに誤魔化されているという
感じもしないではないが、それも映画というものだろう。
共演は、『呉清源 極みの棋譜』に出ていたホアン・イー、
アン・リー監督『恋人たちの食卓』などのチェン・チャオロ
ン、ブラジル人でモデル出身のタイナ・ミュレール。
それにしても、アマゾンというのは、1985年のジョン・ブア
マン作品『エメラルド・フォレスト』など不思議な雰囲気の
漂うところで、この作品にもそれは充分に表わされていた。
なお、映画は全篇ブラジルロケで撮影されており、オダギリ
はポルトガル語と中国語だけの台詞で役を演じている。
01月11日(日)
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