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On the Production
by 井口健二
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■ジェイン・オースティンの読書会、アクエリアンエイジ、あの空をおぼえている、美しすぎる母、フィースト、覆面ダルホ、ひまわり、泪壺
ま立ち去り、後を追った主人公たちはその影を見失う。
一方、ライヴハウスに逃げ込んだ少年は携帯電話で必死にど
こかに連絡しようとするが、ロックの喧噪に話が通じない。
そして人影の消えたライヴハウスの壁には、巨大な爪痕と漆
黒の羽根が残される。
やがて主人公は、彼自身が特別な遺伝子を受け継ぐものであ
ることを知らされ、世界の裏側で暗躍するものたちの存在を
教えられる。そこには、彼に協力しようとする別の一族の若
者もいるが、一族の大人たちはその考えを持たないようだ。
そしてその間にも、次々に各一族のものたちが襲われる事件
が続き…
まあ、『仮面ライダー』や『戦隊もの』とはちょっと違うけ
れど、大体その程度の物語が進んで行く。それを『テニスの
王子様』の桜田通や、『仮面ライダー響鬼』の栩原楽人らが
演じるのだから、そういうファン層のものだろう。
ただ、物語はこれがプロローグという感じで、本戦はまだ始
まらない。結局のところ、設定を説明するだけで時間が尽き
てしまっているもので、これから続きが作られるのかどうか
は判らないが、取り敢えずはゲームのプロモーションという
感じに留まっている。
映画の製作自体がそういう目的なのかも知れないが、どうせ
やるならもっと壮絶なバトルも観てみたかったし、正直には
ちょっと物足りなくも感じてしまったところだ。この映画が
ヒットしたら続きも作って貰えるのかな。
『あの空をおぼえている』
ジャネット・リー・ケアリー原作の“Wenny Has Wings”と
いう作品を、日本に舞台を移して映画化した作品。
主人公の一家は自然に包まれた田園の家に暮している。一家
には10歳の兄と6歳の妹がいて、母親の胎内には3人目も宿
っているようだ。そして一家の父親は町で写真館を開きなが
ら家族の写真を撮り続けている。そこには素晴らしい写真も
数多く写されていた。
そんな一家を悲劇が襲う。交通事故で兄が意識不明の重体に
なり、兄は臨死体験の末に奇跡的に回復するが、その日から
の一家の生活は灯の消えたようになってしまう。
特に父親は自分の行動を悔やむばかりで、家族を顧みること
もできない。そして回復した兄も自分の存在に疑問を持ち、
母親はそれなりの努力をしているが、一家の絆はばらばらに
なって行く。
どう書いてもネタバレを避けられない物語だが、映画は事実
関係が巧妙に隠されていて、それがドラマを作り上げる仕組
みになっている。しかも、そこに臨死体験や思い出などが交
錯するから展開はかなり複雑だが、脚本は上手く整理されて
混乱は生じていない。
そして物語の中では、オルフェウスとエウリュディケの神話
に準えて「死のトンネル」と呼ばれるトンネルに入って行く
話や、裏庭に作られた見事なツリーハウス、また臨死体験の
シーンなどが、大自然の背景の中で丁寧に描かれていた。
出演は、父親役に映画出演は7年ぶりという竹之内豊、母親
は水野美紀、そして兄に広田亮平、妹を吉田里琴。特に、明
るく無邪気な妹を演じる吉田は見事なものだ。他には、小池
栄子、中嶋朋子、品川祐、小日向文世などが共演している。
監督は、2004年実写版『鉄人28号』などの冨樫森。冨樫監
督では、以前に観させてもらっていた映画学校の上映会で、
生徒の出演による作品も観ているが、その指導力で今回の子
役たちも見事に演じさせているものだ。
そして本作のクレジットでは、その映画学校出身の俳優の名
前を見つけたのも嬉しかった。
もちろん感動作ではあるが、それ以外にも、監督のこだわり
がいろいろ見えてくる作品。そうした部分でも気持ち良く楽
しむことができた。
『美しすぎる母』“Savage Grace”
1986年エドガー賞Best Fact Crime Book部門を受賞した同名
原作の映画化。
1972年11月17日、ロンドンで起きた実の息子による母親殺し
事件。それは、1910年に史上初の人工樹脂と呼ばれるフェノ
ール樹脂の量産技術を発明し、ベークライトと名付けて巨万
の富を築いたベークランド一族の末裔を襲った悲劇だった。
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02月17日(日)
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