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On the Production
by 井口健二
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■ボルベール、ラブソングができるまで、石の微笑、チャーリーとパパの飛行機、ルネッサンス、暗黒街の男たち、輝ける女たち
一方、バリモアはちょうどコロムビアからワーナーへプロダ
クションを移したところで、その第1作に選んだものだが、
彼女も今まで歌声を披露したことはない。でもそんな2人に
見事なデュエットまでさせてしまうのだから…監督の手腕に
脱帽というところだ。
なお映画では、巻頭に主人公のアイドル時代のPVという設
定の映像があって、これが、映像から歌の内容から、ダンス
の振り付けや挿入される寸劇に至るまで、実に当時の雰囲気
で作られていて面白い。当時を懐かしむ意味でも良くできた
作品だった。
また、グラントは1小節ずつ指の動きをマスターして行くと
いう手法の特訓で、見事なピアノの弾き語りを披露してくれ
る。その他の歌のシーンや人気女性歌手のコンサートの場面
など、音楽映画としても見事に成立しているものだ。
他の出演者では、『キャプテン・ウルフ』のブラッド・ギャ
レット、『オースティン・パワーズ』のクリスティン・ジョ
ンストン。また、女性歌手の役でヘイリー・ベネットという
新人が幸運なデビューを飾っている。

『石の微笑』“La Demoiselle d'honneur”
1930年ロンドン生まれの女流ミステリー作家ルース・レンデ
ルの原作“The Bridesmaid”を、同じ1930年パリ生まれの映
画監督クロード・シャブロルが映画化した2004年の作品。
単純に計算して監督74歳のときの作品だが、主演に1974年生
まれのブノア・マジメルと、1983年生まれのローラ・スメッ
トを据えて、若々しいというか、瑞々しいというか、見事な
感性に溢れた作品を作り上げている。
母子家庭に育ち、真面目に生きてきた青年が、妹の結婚式で
運命的な出会いをする。その女性もまた、彼に運命的な繋が
りを感じると言う。しかし、その女性の発言にはどこか尋常
でないものがある。そして彼女は、愛の証として彼に殺人を
犯すことを求める。
青年は、真面目とは言っても決して初だった訳ではない。し
かしそんな彼が彼女には翻弄され、どんどん深みに填って行
く。もちろんミステリー小説の映画化ではあるのだけれど、
全くの虚構とは言い切れないような、不思議な感覚の作品だ
った。
実際、虚言癖ともつかないこの女性の発言は、最近の若者で
は「ない」とは言い切れない感じもする。また、最近報道さ
れる若者の無軌道さなども聞くと、こんなことは実際に起き
ていても不思議ではないという感じもする物語だ。
原作は1998年に発表されたもののようだが、実に今風の物語
だし、またそれを見事に今風の感覚で映画化した作品と言え
る。しかもそれを、1930年生まれの原作者と監督の2人がや
ってのけているのだ。
なお主演のマジメルは、『クリムゾン・リバー2』や『スズ
メバチ』を過去に紹介しているが、その前の『ピアニスト』
ではカンヌの最優秀男優賞も受賞している実力派。一方、ス
メットはジョニー・アリディの娘だそうだが、ちょっと古典
的な風貌の裏に異常さを秘めた演技は見事なものだった。
因に監督は、ミステリーではヒッチコックと比較されること
が多いようだが、それは「迷惑ではないが嬉しくもない」そ
うだ。ただし、「ヒッチコックを思い出すと言われるのは良
い。でも、アラン・スミシーを思い出すと言われる方がもっ
と良い」のだそうで、この発言にも若々しい洒落っ気を感じ
るものだ。

『チャーリーとパパの飛行機』“L'Avion”
主人公のシャルリーは自転車が欲しかった。でも、久しぶり
に帰宅したパパが持ってきたのは、大きな白い模型飛行機。
だから喜んではくれない息子の態度に、パパは「徹夜で作っ
たのに」と呟きながら、飛行機を息子の手の届かないタンス
の上に置く。
そして、「次は必ず自転車を持って帰ってくる」と書き置き
して、仕事に戻って行ったパパだったが、そのパパが事故で
亡くなってしまう。ところがその夜、パパの模型飛行機が勝
手に動き始める。しかもそれはシャルリーと意思が通じてい
るかのように…
少年と白い模型飛行機=空を飛ぶものという連想で、僕はこ

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02月28日(水)
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