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On the Production
by 井口健二
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■第129回
資金の調達だと考えているようだが、正しいアイデア、正し
い脚本があれば、金は簡単に集まってくるものだ」と、その
秘訣を語っている。元盟友だったカルロ・ポンティ亡き後、
1919年生まれの製作者は、まだ意気軒昂のようだ。
* *
昨年公開の『ワールド・トレード・センター』を手掛けた
製作者のマイクル・シャムバーグとステイシー・シャーが、
新たにパラマウントと結んだ優先契約により、“The Devil
in the White City”という作品の映画化を進めることを発
表した。
この作品は、エリック・ラースンが執筆したベストセラー
ノンフィクションに基づくもので、1893年に開催されたシカ
ゴ世界博を背景に、その会場近くのホテルで発生した連続殺
人事件の謎を追っている。そこには、博覧会やそのホテルの
建設に関った建築家ダニエル・H・バーンハムと殺人鬼H・
H・ホームズの意外な関係も描かれているというものだ。
この原作に関しては、実は2003年に当時パラマウント傘下
だったトム・クルーズとポーラ・ワグナーのために映画化権
が取得され、一時は『K−19』のキャスリン・ビグロウの
製作・監督で進められていた。しかし、ビグロウとクルーズ
/ワグナー間の創造上の意見の相違を理由に頓挫、2004年に
は映画化権も失効していた。そして昨年にはクルーズ/ワグ
ナーも同社を去ったものだが、今回はシャムバーグとシャー
が改めて権利の取得をパラマウントに依頼して、再度の獲得
が行われたということだ。
2002年にハリスン・フォード、リーアム・ニースンが共演
した『K−19』は、1961年のソ連原子力潜水艦での原子炉
事故を描いたノンフィクションの映画化だったもので、その
アプローチは悪くはなかった記憶している。今回の計画でビ
グロウ監督との関係がどうなっているかは判らないが、ノン
フィクションの映画化に実績のある製作者の登場は期待され
るところだ。それに1893年の時代背景をどのように映像化し
てくれるかにも、興味津々という感じがしてくる。
* *
2004年にワーナー配給の『ポーラー・エクスプレス』、昨
年はソニー配給の『モンスター・ハウス』を成功させ、現在
はパラマウント配給で“Beowulf”を製作しているロバート
・ゼメキス主宰のImageMovers(名称は変わるようだ)が、
新たにディズニーと提携し、今後はディズニー傘下でパフォ
ーマンス・キャプチャー(この名前も変わるかも知れない)
を駆使した3D映画の製作を進めることが発表された。
因に、パフォーマンス・キャプチャーの技術自体はソニー
・イメージワークスとの共同で開発されたもので、ソニー・
アニメーションでもサーファーの動きをキャプチャーして、
ペンギンにサーフィンをさせる“Surf's Up”が今年6月に
公開されるものだが、今回の動きに対するソニー側の反応は
報告されていないようだ。
とまあ、ここまでは単純なプロダクションの移籍話だった
のだが、この動きに対して、ディズニー側から新たな噂が流
れ始めた。それは、前回紹介した“John Carter of Mars”
の映画化を、このシステムで行うというものだ。
これまでの動きでは、この映画化にはピクサーと、ディズ
ニー本社のアニメーション部門が関っているとされ、いずれ
もアニメーションでの製作は、実写に拘わるバローズの遺族
の納得を得られていないというものだった。しかし、これが
パフォーマンス・キャプチャーでなら、バローズの遺族も納
得しやすそうだし、一方、かなり荒唐無稽なバローズの世界
も、実現可能になる。しかも、3Dでの映画化ということに
なるものだ。
つまり、ピクサーのCGIアニメーションか、ディズニー
本社の2Dアニメーションかだったものが、新たにパフォー
マンス・キャプチャーによる3D映画という方向性が出てき
たもので、『ポーラー…』では限りなく実写に近づけられる
ことを示しているこのシステムでなら、遺族の賛同も得られ
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02月15日(木)
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