ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460322hit]

■キトキト!、モンスターハウス3D、NARA、Saru、ボッスン・ナップ、幸せのちから、クロッシング・ブリッジ、パラダイス・ナウ
かった。しかし一般的には、作者自身も驚くほどの評価をこ
の作品で得ている。
画家というのは、作家以上に孤独な芸術家のように思える。
しかも文章ならそこにいろいろな言い訳を添えることが出来
るが、画家は1枚の絵の中で全てを描き尽くさなければなら
ない。その緊張感は、並大抵のものではないだろう。
だから画家は、ほとんどの場合一人で製作を続けてきたはず
だ。そんな画家が、他人とのコラボレーションを模索する。
その発端がどこにあったかは、このドキュメンタリーでは明
らかにはされないが、その結果がどうなったかは、克明に記
録されているものだ。
映画の中では、思いも掛けず売れっ子になってしまった奈良
が、売れる前の孤独な自分を再現したかったという発言が出
てくるが、それは作品に対するイメージであって、今回の展
覧会の目的ではない。
しかしそのイメージである小屋を造るという作業を通じて、
奈良はgrafというクリエイターグループと共同し、その共同
作業の中で彼自身の作品までもが変化して行く。
そしてそれは、奈良自身が「過去には描けなかったものが描
けるようになったし、過去に描けたものが描けなくなった」
とも語っているものだ。このドキュメンタリーは、そんな1
人の画家が劇的に変化する瞬間を捉えた希有な作品にもなっ
ていた。
それにしても、弘前での展覧会は3カ月で8万人を動員し、
昨年10月に閉幕したということだが、このドキュメンタリー
を観ていると、その達成感がひしひしと感じられ、それを観
られなかったことが残念にも感じられた。
今回の93分の作品では、展覧会の様子はごく触りだけの紹介
だったが、600巻撮影されたというオリジナルには当然その
展覧会の制作からの様子も取材されているはず、できたらそ
の記録も、何らかの形でまとめて見せてもらいたいものだ。
なお、映画の中で紹介される奈良の最近の作品には、ちょっ
と好ましい感じも持てた。

『Saru phase three』
2003年に『サル』という作品を発表している葉山陽一郎監督
の新作。
前作は、監督自身がアルバイトでした治験体験に基づくドキ
ュメンタリータッチの作品ということだが僕は観ていない。
監督はその後『死霊波』などの作品を撮っており、今回は、
現実に起きた事件を踏まえてデビュー作のテーマに再挑戦し
たというものだ。
主人公は、アメリカ横断ツーリングを夢見るバイクショップ
の整備士。彼の肺に腺ガンが見つかり、それは初期の小さな
もので手術によって切除されるが、すでにリンパ節に転移が
生じていた。そこで、抗ガン剤による治療が始まるのだが…
治験には、フェーズ1からフェーズ3まであり、フェーズ1
では健康な青年男子に薬剤が投与されて安全性が確認され、
フェーズ2では少数の患者に投与されてその有効性などが検
証され、フェーズ3でより多くの患者に投与されて副作用な
どが調べられるそうだ。
しかし、緊急を要する抗ガン剤の開発では、フェーズ3を飛
ばして直接医療現場で治験を行うことが認められているとい
う。この映画では、そんな抗ガン剤を治験と知らせずに投与
している医療現場の実態が描かれる。
といっても、映画は、エロありグロありの娯楽作品で、監督
の意識がどの辺にあるのかは判らないが、好き者の目で観て
いればそれなりに楽しめる作品にもなっていた。まあ、正直
に言ってこの問題は、いくら問題提起しても壁は分厚いし、
こんな風な作品を継続して作って行く方が、草の根の効果は
あるのではないかとも思えるところだ。
題名は、もちろん動物実験に使われるサルのことで、劇中の
「サルに効いたのに、何故お前に効かないんだ」という台詞
は、ちょっと気に入ってしまった。
出演は、主演に、『ウルトラマンガイア』『仮面ライダー龍
騎』の高野八誠、ヒロイン役はNHK「中国語講座」の清水
ゆみ、さらに『龍騎』に出ていた弓削智久が共演している。
以前に10日間ほど手術入院した経験がある。確か8人部屋だ

[5]続きを読む

01月19日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る