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On the Production
by 井口健二
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■Movies−High 7
がある程度だ。何か、一つ思い切りの良いパンチが欲しい感
じがした。多分それは、主人公がゴム風船を買ってしまう辺
りで、何か事件が一つ欲しかったという感じがした。

『すきやき』
帰省した娘をすき焼きで歓待する一家だが、何か心に行き違
いがあるようだ。
監督は帰省というものに、何か特別な思いがあるのかな? 
僕は現在東京に住んでいるが、両親も湘南に住んでいてあま
り離れてはいない。家内の実家はそれなりに離れているが、
その帰省に同行してもこの作品に出てくるような親子の関係
を感じた記憶はない。従って、見ていてあまり実感は湧かな
かったのだが、作品は最後のシーンでちょっとした親子の情
愛を感じられて心地よかった。最近の親子の関係は、こんな
ものなのかなあという感じもした。

<アクター富樫クラス>
『サヨナラのうら』
元泥棒だった男が、最後の仕事を引き受けさせられる。それ
は、あるスタジオに忍び込んで1枚のCDを盗み出すという
簡単なものだった…
前回のアクタークラスの作品もさすがプロの監督という感じ
の面白いものばかりだったが、今回は62分の上映時間を得て
さらに完成された作品を見せてもらえた。物語は、何と言う
かよく作られそうな発端から始まるが、そこからの展開がい
ろいろ面白く、特に結末の付け方は嬉しくなるものだった。
脚本は、出演者に当て書きで書かれたのだろうが、主演の男
優のキャラクターは充分に活かされていたし、その他の俳優
のキャラクターもそれぞれ良い感じのものだった。また、キ
ーとなる音楽も良い出来だったと思う。
ただ、脚本は、いろいろな事象を展開して最後に成程と思わ
せる形式のものだが、それが判って即座にすべてが明確に思
えるほどには、物語が整理されて描かれていなかったように
感じた。
作り手は、結末まで了解しているからこれでも良かったのか
も知れないが、予備知識のない観客としては、どこか辻褄が
合っていないような、何か釈然としないものが残る感じだっ
た。見ている間は満足しているのだが…

<クリエイターBプログラム>
『はんだ』
作り損いの、手作り?パンダ人形。しかもパンダの丸が取れ
て「はんだ」になってしまっている。その丸を探す物語。
人形劇というほどでもないし、子供の手遊びを撮影したよう
な感じの作品。でも、テーマと言うか、何かそんなものに纏
まりが感じられて、それなりに見ていられる作品になってい
た。プロの作品とは言えないかも知れないが、NHKの「み
んなの歌」になら出てきそうな、それくらいのレベルには達
していると思う。悪い作品でもないし、敢えて批判をする感
じでもない。これはこれで良として認めるものだ。

『退部届』
バスケットボールを題材に、長年部活を続けて行き詰まって
いる男子と、最近部活を始めたばかりで楽しくてしょうがな
い男子。そんな2人があることを賭けて勝負を始めるが…
判るようで判らない作品だった。結局青春の一場面というこ
となのだろうが、ただそれを見せられても、そこから何か生
まれてくるものでもない。これでは、本当にただ勝負を描い
ているだけで、ああそうですかで終ってしまう。結末の付け
方には作者の感性が関わるから他人は何も言えないが、僕は
敢えて逆の方が何かが伝わったような気がした。

『孤独の人』
死期を迎えた老人の横たわる病室。そこに20年前にその男に
棄てられた妻子がやってる。しかしそこには、介護を続ける
愛人がいて…
最近、日本の家族関係も欧米並に複雑になってきたとも言わ
れるが、こんな風景も、それなりにありそうな感じもすると
ころだ。その意味では着眼点は良い線を突いている。ただ、
交わされる会話があまりに普通でドラマティックでない。も
ちろん観客も他人事として見てしまう物語だが、出来たら現
実味を無視してでも、もっと観客の胸を抉るような発言が欲
しかったところだ。何か観客を驚かすような発言が一つ二つ
あると、作品がもっと締まったのではないかと思えた。


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01月10日(水)
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