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On the Production
by 井口健二
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■タイドランド、ゴーヤーちゃんぷるー、初恋、アローン・イン・ザ・ダーク、迷い婚、恋は足手まとい、ゆれる、春の日のクマは好きですか?
そして西表島に到着した彼女を、沖縄の気候と風土は何も聞
かず暖かく迎え入れてくれる。
さらに島では、ホスピスに暮らす末期患者や転地療養の子供
たちの生活に触れる内、彼女は自分自身を見つめ直して行く
ことになる。
主演は多部未華子。昨年『HINOKIO』で注目したが、
その演技では各賞の新人賞なども獲得したようだ。そして今
回も見事に存在感のある演技を見せてくれている。共演は、
風吹ジュン、武田航平、美木良介、下条アトム。
以前にも書いたことがあると思うが、人間が全力で走ってい
る姿というのは、演出不要の映像だと思う。この映画では多
部が走るシーンが2度ほどあり、それを見せられると、他が
多少臭くても、それだけで雰囲気が出来てしまうものだ。
まあ、そんなテクニックに僕が填められているのかも知れな
いが、僕自身は見ていて悪い感じもしなかったし、爽やかな
気分で見終えることが出来た作品だった。
『初恋』
1968年に起きた「府中三億円強奪事件」が、実は18歳の少女
の犯行だったとする2002年に発表された小説の映画化。その
主人公を、原作に惚れ込み、10代最後の作品として主演を切
望したという『NANA』の宮崎あおいが演じる。
主人公のみすずは、父親が死に、母親が兄だけを連れて家を
出て行った後、叔父夫妻に引き取られて成長した。しかし居
心地の良い家ではない。そして16歳の時、訪ねてきた兄に渡
されたブックマッチを頼りに新宿に行き、ジャズ喫茶に集う
仲間達と出会う。
時は1967年。70年安保で日本中が揺れ動く時代を背景に、彼
女と三億円事件との関わりが描かれる。
巻頭、新宿の大ガードを通過するタンク列車が写し出され、
米軍の航空機燃料を運んでいたタンク列車が新宿駅構内で爆
発炎上したことを思い出す。主人公は1969年に大学に入学す
るから、僕より1歳下という勘定になるが、正に自分の時代
が描かれた作品と言える。
見るまでは、テーマもあざといしタイトルもこんななので、
ちょっと不安に感じていたものだ。しかし作品は、実に丁寧
に当時の雰囲気を再現しているし、1965年生まれの監督がこ
こまで出来たことには驚きを感じたくらいだ。
僕自身は、1969年からSFファンの会合に参加し出したが、
この主人公たちのグループは演劇を志しているようだ。しか
し、やっていることは違うとはいえ、この主人公たちの姿に
は当時の自分が写し出されているような感じも持った。
大学紛争や街頭闘争が繰り広げられている中での、当時の自
分の中で交錯した思いが蘇ってきた感じもした。実際、この
映画では三億円事件が下敷きにされるが、描かれる物語はフ
ィクションとはいえ、当時の自分の思いにも合致する感じが
した。
監督は恋愛映画として撮ったと言い、宣伝もそれでされるは
ずだ。それは別に構わない。実際に監督が当時のことを知っ
ているはずもないことだ。
でも、ここに描かれているのは、1960年代末の学生=若者が
本当に元気だった頃の物語。そんな時代は2度と訪れないか
も知れない時代へのノスタルジー。そんな気持ちが自分の中
に鋭く刻み込まれる感じがした。
『アローン・イン・ザ・ダーク』“Alone in the Dark”
2月に『ブラッドレイン』という作品を紹介しているウーヴ
ェ・ボル製作監督によるPCゲーム原作の映画化。
先史時代にアメリカ大陸に文明を築いたとされる民族の遺物
を巡って、その民族の滅亡の謎を探ろうとする博士が行った
禁断の実験。そして、その民族が封じた謎を追って、ARC
AM(Anti Rabidity-Creature Attack Members)713部
隊の元隊員だった主人公が活躍するアクション映画。
巻頭では、ゲームのマニュアルにでも載っていそうな設定が
延々とテロップで流される。そして物語は22年前、主人公を
含む被験者だった子供たちが、保護されていた教会から行方
不明になるという場面から始まる。
ということで、現代に蘇りつつある民族滅亡の災厄を、71
3部隊が防御しているという設定で、エイリアンもどきの怪
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04月14日(金)
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