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On the Production
by 井口健二
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■シリアナ、ロード・オブ・ウォー、エミリー・ローズ、ルー・サロメ、メルキアデス・エストラーダ、ディック&ジェーン、チキン・リトル
ている。特にプロローグで、鉄板から製造された銃弾が輸送
され、最後に撃ち出されて…までを描いたシークェンスは見
事だった。
実は、僕は続けて見てしまったせいで、衝撃の度合いは少な
く感じてしまったが、逆に戲画化して描かれた分、観客には
判りやすいし、その意味を考えるには丁度良い作品になって
いたようにも感じる。その意味では好一対という感じの2作
品とも言えそうだ。
脚本監督のニコルは、前作2作はどちらもSFと呼べるもの
で、その意味での興味はあったが、その分この題材には多少
不安も感じていた。しかし、プロローグのシークェンスから
面目躍如という感じで、何しろ全体をテンポよく描き切った
ことは見事だった。
しかもその間にテーマを見失うこともなく、特に結末の付け
方は問題提起の仕方としても明白で良い感じだった。まあ、
見ている間はアクションも適度にあって、『ナショナル・ト
レジャー』のケイジだし、その線で見てもらって…後でじっ
くり考えてもらいたい、という作品だ。
なお本作は、国際的なNGOのアムネスティ・インターナシ
ョナルと、国際小型武器行動ネットワーク(IANSA)が
提唱する「コントロール・アームズ」のキャンペーンにも協
賛が決まったということだ。
『エミリー・ローズ』“The Exorcism of Emily Rose”
1976年にドイツで行われた実際の裁判に基づく映画化。
ある大学の女子学生が悪魔に憑かれて悪魔祓いの儀式中に死
亡。その事件で過失致死の罪に問われた司祭が裁判に掛けら
れる。しかし、キリスト教会からの依頼で弁護に立った女性
弁護士には、教会の権威を守るため悪魔祓いの事実は争わな
いように要請される。
ところが裁判では、精神医学に基づく治療を怠ったことが争
われ、その裁判に勝つためには、悪魔祓いに言及し悪魔が憑
いていたことを実証するしかなくなってくる。そして被告の
司祭には、この裁判でやり遂げなければならない一つの使命
があった。
描かれた1976年の裁判は、悪魔の存在が裁判所で認められた
近年では初めてのケースとされているもののようだが、最近
では1999年にローマ教皇庁が悪魔祓いの教本を400年ぶりに
改訂するなど、悪魔祓いの需要は高まっているようだ。
実際イタリアでは、悪魔祓いの儀式がここ10年間で10倍以上
に急増、またニューヨークでは、1995年以降40件の悪魔憑き
の事例がカソリック教会によって公式に調査されているとい
う。さらにシカゴ大司教区では公認のエクソシストが任命さ
れたそうだ。
そして、本作の真の主役である女子大生(実話ではAnnelies
Michel)の墓には、今も花が絶えないということだ。
まあ物語としては、いくら実話の映画化だと言われても、僕
らには異世界の話のようなもので、その中でどう考えるかと
いうことになる訳だが、映画ではショックシーンもそこそこ
に織り込まれて、見た目の恐怖感も充分に味わえる。
ただ、映画のテーマとしてそれがどうなのかと言うことでは
問題になるが、まあ、先に紹介したような国際問題を扱った
ものでもでもないし、これはこれでいいという作品だろう。
出演は、女性弁護士役に『キンゼイ』のローラ・リニーと、
司祭役に『イン・ザ・ベッドルーム』のトム・ウィルキンス
ン、また死亡した女子学生役を舞台女優のジェニファー・カ
ーペンターが演じて鬼気迫る演技を見せてくれる。
他に検事役でジョージ・C・スコットの息子のキャムベル・
スコットが出演しているが、彼は『リトル・ランナー』では
コーチの神父役を演じていて、今回は宗教に理解のある検事
役というのはちょっと面白かった。
『ルー・サロメ』“Al di la del bene e del male”
『愛の嵐』のリリアーナ・カヴァーニ監督により、ドミニク
・サンダの主演で1977年に公開された『善悪の彼岸』という
作品の、以前に公開された英語版ではカットされた部分など
が修復されたオリジナル・イタリア語版による再上映。
以前の公開では見られなかった映像や、ぼかされた映像が初
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12月14日(水)
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