ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459929hit]
■ディア・ウェンディ、ザ・コーポレーション、RIZE、三年身籠る、イントゥ・ザ・サン、変身、NOEL、ポビーとディンガン
業による特許取得の問題が提示されたり、本当にありとあら
ゆる問題が描かれている。
そして、これらの提示された企業活動の問題点を人間に喩え
て列挙し、それを人間と同様に心理分析すると、反省心や罪
の意識の無いサイコパスの結論になるということだ。
それにしても企業というのは、利益の追求の名の許に実に悪
行を重ねてきたものだ。そしてそのツケが、今や世界を破滅
の縁に追い込もうとしている。それは公害の垂れ流しを筆頭
に、資源の枯渇であったり、遺伝子の破壊であったりするの
だが、このドキュメンタリーでは、それらの問題に対する取
り組みの弱さも指摘している。
しかも全てが否定だけで終っているのではなく、問題に真剣
に取り組り組むことを宣言したカーペットメーカー=インタ
ーフェイス社の姿勢や、グッドイヤーのCEOの発言なども
紹介されるので、それなりに信憑性というか、納得できる仕
組みにもなっている。
それにしても、すごい剣幕で問題が突きつけられるという感
じで、ここまでやられると、正直なところは印象が散漫にな
ってしまっている面もないではない。しかしどの問題も、正
に自分に身近なところにあるものだけに、2時間25分の上映
時間をスクリーンから目を離せなくなってしまうことは確か
だった。
ただ、作品はインタヴュー中心の構成で、他の映像が流れて
いる部分でも重ねて意見が述べられている。このため常に字
幕を読んでいなければならず、その結果、映像をあまり見る
ことができなかった。重要な問題も多く、できればヴォイス
・オーヴァーなどの吹き替えを付けて貰えると有りがたいと
感じたものだ。
『RIZE』“Rize”
ロサンゼルスのサウス・セントラル。1992年の暴動でも知ら
れるこの街に、ミュージックヴィデオの監督や、セレブのポ
ートレート写真で著名な写真家デイヴィッド・ラシャペルが
入り込んで記録したダンスに生きる若者たちのドキュメンタ
リー。
暴動が起きたのと同じ1992年、この街に住む子供の誕生日を
祝うため、1人の黒人男性がピエロの恰好をする。それによ
りトミー・ザ・クラウンと名乗った彼は、即興で踊ったダン
スが評判を呼んだことから、若者たちにダンスを教えるよう
になる。
そのダンスは、アフリカ黒人に流れる血を表わしているかの
ような激しい踊りで、瞬く間に若者たちを虜にし、今までギ
ャングになって生きるか死ぬかの二者択一だった若者たちに
新しい生き方を教えることとなる。
それから10数年が経ち、今でも街には銃が溢れ、人殺しも絶
えない場所であることは変わらないが、若者たちの間には多
少の希望も生まれている。そしてトミー・ザ・クラウン主催
で開かれるダンスバトルが、映画のクライマックスを彩る。
映画の最初には、この作品には早廻しは有りませんというテ
ロップが出るが、何しろ激しいダンスが演じられる。その源
流は映画の中でも、資料映像のアフリカ現地人のダンスとの
共通性が示されているが、本当に黒人特有のものと言えそう
だ。
実は映画の前半で、ライスクラウンと称するアジア系のグル
ープが登場し、後半では彼らの踊りや、他にも白人の踊りな
ども紹介されるのだが、全く次元の違う世界であることの証
明にしかなっていなかった。
そんな激しい踊りを堪能させてくれる作品ではあるが、同時
に現実の厳しさもいろいろな角度から提示され、そん中で暮
らしを続けなければならない彼らの苦悩も見事に描き出され
ている。
トミーは元麻薬の売人ということだが、「その頃は、殺され
るか刑務所に入るかは神様次第。自分は神様の思し召しで刑
務所に入った」などという言葉は、試写会場で笑い声は聞こ
えたが、笑うに笑えないギャグというところだ。
それから、これは途中で気がついたことだが、アメリカ映画
で、しかも若者を描いていて、ドラッグや大麻はおろか、タ
バコも全く出てこない映画というのは珍しいだろう。激しい
踊りのためにはタバコも肺活量への影響になると考えている
[5]続きを読む
10月30日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る