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On the Production
by 井口健二
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■女は男の未来だ、秘密のかけら、僕のNYライフ、ダイヤモンド・イン・パラダイス、少林キョンシー、七人のマッハ、トレジャー・ハンターズ
『ホワイト・オランダー』や『マッチスティックメン』では
あっと驚く演技を見せてくれたローマンだが、今回は成熟し
た女性の役で、今までとはかなり違った雰囲気を見せる。
そして取材対象のコンビを演じるのが、ケヴィン・ベーコン
とコリン・ファース。2人はそれぞれ15年の時間を置いた役
を演じているが、特にファースの変容ぶりは見事だった。ま
た、ベーコンの控え目ながらも確実に年を経た雰囲気は完璧
と言えるものだ。
そしてこの2人が、歌や掛け合いで進めるチャリティテレソ
ンのシーンは、見事に当時のテレビショーの雰囲気を再現し
たもので、また、当時の芸能界の裏話的エピソードも、なる
ほどありそうと思わせてくれて楽しめるものだった。
以下にネタばれあります。
1950年代の話ということで、そこには差別や偏見など、今以
上に厳しかった世間の対応が描かれる。本作はそれに翻弄さ
れた人々の物語でもある。しかし監督は、その物語の中に人
間としての暖かさや優しさを盛り込み、つらかった人々を思
いやっている。
しかも、表面的には見事に謎解きの推理ドラマであり、映画
的な仕掛けも絡めて見事な作品と言えるものだ。また、ロー
マンにも彼女らしいシーンが用意されていたのには、思わず
ニヤリという感じだった。
『僕のニューヨークライフ』“Anything Else”
ウディ・アレン監督・脚本・出演による2003年の作品。
ニューヨークの芸能界を背景に、売れないコント作家と同棲
相手の女優の卵、彼女の母親と作家のマネージャ、そして、
やはり売れない先輩コント作家などが繰り広げる人間模様。
この主人公の作家をジェイソン・ビッグス、女優の卵をクリ
スティーナ・リッチが演じ、その母親役がストッカード・チ
ャニングと、マネージャをダニー・デヴィート、先輩作家を
アレンが演じている。
アレンの作品では、2000年の『おいしい生活』以降の近作は
見ているが、それ以前のアカデミー賞の常連だった頃の作品
は、何となく自分のアレン観に合わない気がしてあまり見て
いなかった。
従って、今回の作品が『アニー・ホール』を髣髴とさせると
言われても、僕としては否定も肯定もできないのだが、取り
敢えずこの映画では、アレン自身を思わせる主人公の右往左
往ぶりが微笑ましく、その雰囲気がいたく気に入ってしまっ
た。
また、ニューヨーク派のアレンらしく、市中の各所で撮影さ
れたシーンも素敵に描かれており、映画の宣伝文の「ニュー
ヨークへのラブレター」というのも頷ける。
ところが実際は、去年と今年のアレンの最新作2本はロンド
ンで撮影されていて、それを考えるとこの作品は、「ニュー
ヨークへの置き手紙」のような気もしないでもない。映画の
内容にも、ちょっとそんなニュアンスも感じられた。
それにしても饒舌な作品で、主人公たちはのべつまくなしに
喋り続ける。その内容は、機知に富んでいたり、どうでもい
い話だったり、切羽詰った言い逃れや、いい加減な言い訳な
ど状況もばらばらで、これを理解して演じるのはかなり大変
だったと思われる。
しかもプレス資料によると、アレンはかなりの完璧主義者だ
ということで、これは、特に若いビッグスとリッチには、相
当のプレッシャーだったはずだ。しかし映画が完成している
ということは2人はそれを克服したのだから、これも素晴ら
しいことと言える。
『アメリカン・パイ』で人気者になったビッグスも、『アダ
ムス・ファミリー』の出身のリッチも、まだまだ若手という
印象が強いが、この映画でのアレンの眼鏡に叶った2人の演
技も楽しみたいところだ。
『ダイヤモンド・イン・パラダイス』“After the Sunset”
007のピアーズ・ブロスナンと、『フリーダ』のサルマ・
ハエック、それにウッディ・ハレルソンの共演で、引退を決
めた宝石泥棒と彼の目の前にぶら下がった最後の宝石を巡る
物語。監督は、『ラッシュアワー』『レッド・ドラゴン』の
ブレット・ラトナー。
ナポレオンの剣の柄に填め込まれていたという3個の巨大な
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10月14日(金)
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