ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File096】スパイとエニグマとUボート【ネタバレ警報/後編A・・・完結編】
主人公トム・ジェリコを鬱だ氏脳¥態にしてしまう美貌の女性・・・クレア・ロミリー。実のところ彼女の正体は情報部のウィグラムがブレッチレー・パークに送り込んだ密偵である。彼女に与えられた任務は、エニグマ暗号解読の中枢にいる主要人物に近づき、彼らの中にドイツ側に情報を漏らしそうな人物がいないかどうかを探る事だった・・・というのは大方の見方。しかし実際はもっと複雑で、英国内の枢軸側スパイ網を一網打尽にする為にエニグマ解読の中枢人物に近づき罠を掛け囮にして餌を蒔く事だった。ブレッチレー・パーク、特にエニグマ解読の中枢に集められた人物たちは曲者揃い・・・変人揃いなので、一般的な金銭などで母国を売るようなヤツはそうはいなかった。主人公のトム・ジェリコにしても、その精神的軟弱さ故に囮候補から落選した。結局囮として選ばれたのは、亡命ポーランド人のジョセフ・プコウスキーだった。彼は母国を蹂躙したドイツを過剰な程に憎んでいた・・・ポーランド軍将校だった行方不明の弟は、ドイツ側に捕らえられているのか、既に殺されているのか解らない。そんな時明らかになったのが「カチンの森の虐殺」事件。状況証拠から考えると、どう考えても犯人はソ連である。この事件を知った英国政府は、ソ連との友好関係から事件を黙殺する。情報部のヴィグラムはクレアに命じて、傍受された事件に関係する独軍の暗号通信を処分させる。そして極秘裏に入手(多分国際赤十字経由)した虐殺被害者のリストから、プコウスキーの弟の名を発見した事により、プコウスキーに白羽の矢を立てた。映画には登場しないが、中立国ポルトガルの外交官・・・実はドイツ側の連絡員がプコウスキーと接触する。そして英国情報部の予期した以上に事は進展、エニグマ解読に関する情報がプコウスキーによりドイツ側に伝わってしまった。これによって警戒したドイツ側は用心の為にシャーク<Rードを変更するのである。更に英国情報部を震撼させたのは、肝心のクレア・ロミリーの失踪だった。これは英国情報部の計画にはなかった事なので、ウィグラムにしても、クレア・ロミリーはプコウスキーに殺されたのでは・・・と疑わせた程。結局クレア・ロミリーは、プコウスキーに殺されていた訳では無く、自らの意思で失踪したのである。彼女の名前クレア・ロミリーは本名ではない。実際のクレア・ロミリーは外務省の役人の娘で既に事故死しており、その名前と戸籍を利用してブレッチレー・パークに潜入していたのである。彼女の本名は原作でも明らかにされていない。彼女はウィグラムによって幾多の過酷な任務に利用されていた。今回の任務でも、ウィグラムからの命令によってブレッチレー・パークの何人かの監視対象者と関係を持った。しかし彼女の精神は既に極限まで疲労していた。そんな中、彼女は自らの存在を世の中から抹殺する事によって、精神の自由を得る事を思いつくのである。英国政府や情報部、ブレッチレー・パークの面々がシャーク<Rードの変更により混乱に陥っている隙に、犯罪に巻き込まれたかの様に偽装して、自らの存在を消す事に成功する・・・ラストシーン、戦後、演奏会を鑑賞する為トラファルガー広場に面した聖マーティン教会の前で身重のヘスターと待ち合わせるトム・ジェリコの目に一瞬映ったクレア・ロミリー・・・いや元クレア・ロミリーだった女性の姿は、トム・ジェリコの記憶の中の姿より一層光輝いていた。何の束縛もない真の自由を謳歌するかの様ように。映画の中でプコウスキーは、ドイツに逃亡を計り、スコットランド北西部オーバン沿岸で迎えに来たUボートに移乗しようとして、哨戒機の爆撃を受けて死亡・・・でも真昼間からUボートがあんな沿岸に浮上するのか・・・そう言えば『マッケンジー脱出作戦』でも真昼間からUボート浮上してたしなぁ・・・するが、原作ではドイツ側の連絡員との接触中に警官隊に包囲され、射殺される。因みにヘスター・ウォレスは、原作では痩せた女性で、映画以上に大活躍する。
【おまけ】
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09月13日(土)
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