ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File102】マカロニ戦線異状アリ・・・珍説イタリア戦争映画史《序説》
昏迷するイラクへの自衛隊派遣決定のニュースが世情を賑していた2004年1月半ば・・・小雪舞い散る東京において「SPR」以降名作に恵まれなかった「戦争映画」の歴史に、新たな一歩を記すであろう事は間違い無い一本の戦争映画が公開されました。その作品の名は「炎の戦線 エル・アラメイン(El Alamein−The Line of Fire)」・・・【以下思いつくままに荒筋・・・激しくネタバレですが、どうしても読みたい方はクリックして反転させて下さい】・・・時は第二次大戦も酣の1942年、舞台は独伊枢軸軍と英軍の対峙する灼熱の北アフリカ戦線・・・その戦略的要衝エル・アラメイン。果てしなく続く荒涼とした大地を、砂塵を舞い上げ走る一台の軍用バイク・・・大地雷原を挟み、英軍陣地を遥かに望むイタリア軍防衛線最南端の忘れ去られたパヴィア歩兵師団の塹壕陣地に一人の新兵(学徒志願兵)セッラが配属になるところから、この物語が始まる。国を守る情熱に燃え志願してきた新兵セッラであったが、たちまち戦争の恐ろしさと厳しさを実感させられる事になる・・・配属分隊に向かう途中、案内役の伍長は、英軍の砲撃を浴び耳たぶ≠セけを残して跡形もなく粉々になった。新兵セッラが配属された分隊を指揮するのは歴戦のリッツオ曹長だ。彼は新兵セッラに三つの戒めを与えた・・・@常に頭を低くしろ(狙撃されるから)A赤痢になっても黙ってろ(みんな罹っているから)Bサソリには気をつけろ(特に靴の中・・・)乏しい補給(装備・弾薬・食料そして何よりも貴重な水≠ヘ一人一日250cc)と照り付ける太陽に耐え、敵の姿も見る事なく、砲撃と狙撃に怯え塹壕にこもったままの日々。次第に病んでいく精神・・・。そんな時、砲撃で破損した電線ケーブルを修理していた兵士が狙撃された・・・衛生兵が決死の覚悟で担架を抱えて倒れた兵士に駆け寄るが、これまた狙撃される。どうやら昨夜の砲撃に紛れ、陣地全面で大破した車両の残骸から撃って来るらしい。危険に晒された戦友を掩護する為、なけなしの弾薬で応戦するも、残骸に守られた敵の狙撃兵には当らない。小隊長フィオーレ中尉は小隊本部直属の迫撃砲班を呼び寄せた。初弾・・・僅かに外れた。貴重な迫撃砲弾だ。もうこれ以上の無駄は許されない。一発必中の願いを込めて二発目が発射された・・・命中。こうして一日が過ぎて行く。古参兵が言う・・・人は誰も三つの幸運を持っている。お前は最初の砲撃で助かった。残る幸運は二つだけだ・・・と。ある夜、陣地前面の地雷原を走っていた英軍トラックが地雷を踏んだ・・・古参兵たちはチャーチル給与≠漁る為に、暗闇の中、地雷原へと飛び出して行く。慌てて付き従う新兵セッラ・・・地雷原を知り尽くしたリッツオ曹長の足跡を覚束無く辿って行く。カチッ¢ォ元で幽かな金属音が鳴る・・・地雷を踏んだのだ。凍りつく身体・・・足を上げれば爆発する。すかさずリッツオ曹長が新兵セッラの足下を手探りで掘る・・・運がよかったな。対戦車地雷だ。人が踏んだくらいでは爆発しない・・・身体中から力が抜ける。古参兵が声を掛ける・・・二つ目の幸運を使ったな!残るはひとつだけだ。それを使い切ったら、あとは祈るだけだ。新兵セッラが聞き返す・・・あんた達は?古参兵は薄ら笑いながら答えた・・・とっくの昔に使い切ってるさ!こうして新兵セッラは鍛えられて行くのだ。ある日、道に迷った味方トラックが辿り着く・・・荷物はなんと大量の靴磨き。そして馬≠ェ一頭。靴磨きは、今や幻のアレキサンドリア入城行進時用・・・そして馬≠ヘ、ムッソリーニの愛馬だそうだ。小隊長フィオーレ中尉は言う。我々はもう砂と小便しか口にしていない。アレキサンドリアを行進したければ水と食料を持って来い。この馬は我々の食料として徴発する。責任は私が取る・・・拳銃を抜き馬の頭に突き付ける・・・しかし、罪の無い馬の澄んだ瞳を見て、中尉は拳銃をホルスターに戻した・・・さっさと連れて行け!待ちに待った水の補給・・・補給地点のオアシスまで、砂漠の中を遥々進むトラック・・・しかし補給されたのは、独軍の燃料用ジェリ缶に詰められたガソリン臭い僅かな水&カ句を言いつつも受け取り帰途につく・・・リッツオ曹長が呟く・・・ここから一時間も走れば海≠セ。ちょっと寄り道して行くか・・・久しく水の風呂には入ってない。身体は砂で洗っている。一同即決で海≠ノ向かい、真っ裸になって飛び込む。海水だが、そんな事はお構いなしだ・・・暫しの平安な休息。そこに憲兵登場・・・お前たち何してるんだ。そこは地雷原だぞッ・・場面は移る・・・対峙する英軍陣地の動向がおかしい・・・それまで忘れ去られていた戦線に走る緊張。英軍の攻撃は不可能と思われていた低地≠ノ偵察に出た分隊からの報告が途絶えたのだ・・・リッツオ曹長と新兵セッラが偵察に出る。偵察隊は古代遺跡の廃墟の中で全滅していた。やはり何かがおかしい。やがて塹壕陣地は何時にも増して激しい砲撃に晒される・・・忘れられていた小隊にも命令が届く・・・現在の守備陣地を撤収し、戦線の防衛拠点の増援に移動せよ・・・移動先の防衛拠点・・・着弾痕の穴を応用した蛸壺があるだけだ・・・兵士たちは到着も早々に蛸壺の補給を始める。夜半、静まり返る暗闇を劈き、英軍の大規模な砲撃が始まる・・・次々に粉砕される防衛拠点・・・やがて戦車を先頭にして英軍歩兵の突撃が始まる。忽ち起こる白兵戦・・・ある者は砲撃に倒れ、ある者は銃剣に倒れ、ある者は戦車に踏み潰され、ある者は精神を侵され暗闇の中に消えて行く・・・そして再び静寂・・・夜明け。英軍は味方部隊の砲撃によって撃退された・・・残された夥しい敵味方の戦死者。激戦の中、運良く生き残った新兵セッラに古参兵が言う・・・三つ目の幸運を使い切ったな・・・。最早、戦力とも呼べなくなった小隊に撤退命令が下る。遥か彼方の再集結拠点まで地図とコンパスを頼りに歩くしかない。歩き始める小隊の傍らを、罵声を浴びせながらドイツ軍の車両が通り過ぎて行く。走っている事すら奇蹟のような自軍のトラックに走り寄るイタリア兵たち・・・しかし負傷兵を満載した荷台には立錐の余地もない。炎天下を気力だけで進む小隊・・・途中、路端で黙々と穴を掘る将官に出くわす・・・小隊長フィオーレ中尉が不動の姿勢で敬礼・・・「閣下、お手伝いしましょうか」「ありがとう。でも長年仕えてくれた従兵なのだ・・・私の手で葬ってやりたい・・・」「よろしければ閣下のお名前を・・・」「そんな事はどうでもよい。君たちは義務を果たせ」・・・兵士たちは将官の傍らを通り過ぎて行く。やがて従兵の遺体を葬った将官は、即製の十字架の傍らに佇むと敬礼ではなく十字を切り、祈りの言葉を捧げ、徐にホルスターから拳銃を引き抜くと自らのこめかみに宛がった・・・。小隊は果てしない砂漠を踏破し、前線の野戦病院に辿り着く事が出来、暫し暖を取る。一仕事終えた軍医が近づき一服する・・・君たちはどこの部隊だ・・・我々は再終結地点に向かっているのです・・・ここが、その再終結地点だよ。主力はとっくに撤退した。まもなく負傷兵を移送する最後の輸送隊が出発する。君らも、そのトラックに紛れ込みたまえ・・・軍医殿は?・・・私は移送不可能な重傷者と共に残るよ。遮蔽物の全くない荒野の中の幹線道路をヨタヨタと進む輸送トラック・・・荷台には空ろな表情の兵士の顔・顔・顔・・・。やがて空気を劈く爆音・・・英軍機だッ退避しろぉ。荒野の一角に構築された退避壕・・・兵士たちは慌てて掛けこもうとするが、入り口には野戦憲兵が立ち塞がった。力づくで雪崩れ込むと、そこには先客が・・・どうやら司令部のお偉方の一行らしい。激しい銃爆撃による粉塵が退避壕を覆う・・・やがて訪れる静寂・・・哀れ輸送トラックは直撃弾を受けて見る影もない。小隊長フィオーレ中尉は出発しようとしている司令部の車両の後部座席にふんぞり返った大佐に詰め寄る・・・どうか負傷兵だけでも便乗させて下さい・・・そんな余裕は無い。我々は急いでいるのだ。無情にも出発する司令部の車両。再び当て所無い行軍が始まる・・・一転俄かに掻き曇り、乾き切った砂漠を覆い尽くす雨雲・・・神の気まぐれが、兵士たちの乾きを一次的ながら潤した。そしてまた果てしなく続く行軍・・・もはや軍隊とは呼べない一行は、砂漠の民の墓所に辿り着き、一夜を過ごす。夜半突如として現れる英軍の斥候隊・・・もはや刃向う気力もないイタリア兵たちは、悉く捕虜となった・・・僅かに小隊長フィオーレ中尉、リッツオ曹長、新兵セッラの三名だけが、墓所から離れた場所で休んでいた為に、難?を逃れた・・・。そして再び歩き始める三名。小隊長フィオーレ中尉は、負傷が悪化。もはや歩く事も覚束無い。突然三名の視野に放棄されたイタリア軍のトラックが現れる。駆け寄ってエンジンのスターターキーを捻る・・・どうか掛ってくれ・・・しかし祈りは届かなかった。運転席の座席の下から僅かに水の入った水筒を見つけたリッツオ曹長は、トラックの横に横たわる小隊長フィオーレ中尉の口元を湿らせた・・・新兵セッタがトラックの傍らの残骸の中から軍用バイクを見つけた・・・今度こそ掛ってくれ・・・祈りながらフットバーを力強く蹴み込む・・・何度も何度も・・・やがて篭った音と共にエンジンは再び鼓動し始めた!これで助かりますよ!さあ二人とも乗って下さい・・・小隊長フィオーレ中尉は空ろな目で遠くを見つめながら、トラックの後輪に寄りかかっていた・・私はもうダメだ。お前たちだけで行け・・・リッツオ曹長は小隊長フィオーレ中尉の傍らに腰を下ろした・・・俺も残る。二人乗りでは砂に車輪が取られる。お前だけで行け・・・新兵セッラが悲しげな顔で言う・・・必ず救援を連れて戻って来ますから待っていて下さい・・・新兵セッラの乗った軍用バイクは、時折り砂に車輪を取られながらも、果てしなく続く荒涼とした大地を、砂塵を舞い上げて走り去って行った・・・。時は流れ・・・エル・アラメインの古戦場に建てられた戦没者慰霊碑・・・カメラは壁一面に刻まれた戦没兵士の個人名を次々に映し出す・・・やがて特定の個人名は無くなり、ただ同じ単語だけが繰り返し映るだけとなった・・・無名戦士・・・と。なんと勢いで荒筋≠目一杯書き込んでしまいました。全く書き込みに手を抜きやがって・・・!そうお怒りの観戦武官諸士の冷たい視線がグサリッ≠ニ背中に突き刺さりますが、勢い余って書き込んでしまった、この観戦武官長の心の衝動≠、どうかご理解下さい・・・m(大汗)m

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01月31日(土)
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