ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File096】スパイとエニグマとUボート【ネタバレ警報/後編A・・・完結編】
幾つかの作品紹介サイトを見ていたら、どうも主人公のトム・ジェリコのモデルが、実際エニグマ解読に貢献したアラン・チューリングである・・・と勘違いしているらしい記述を散見した。これは明らかに間違いである。原作本によればトム・ジェリコはアラン・チューリングのケンブリッジ大学での後輩という設定である。そしてこの物語の設定の中では、アラン・チューリングは米国にエニグマ暗号解読の為のボンブ≠フ指導に行っている、という設定になっている。トム・ジェリコは明らかに架空の人物である。アラン・チューリングについてはハーバート・ワイズ監督による『掟/ブレイキング・ザ・コード(Breaking the Code1996)』に詳しい。これはDVD・ビデオソフト化もされている。元々はヒュー・ホワイトモア原作による戯曲でブロードウェイでも人気を博し、かの劇団四季も日下武主演で舞台化している。アラン・チューリングは現代コンピューターの父≠ニ呼ばれるほどの天才数学者。1912年6月23日ロンドン生まれ。両親は仕事でインドに在住しており、英国に残されたアランと弟は孤独な少年時代を送った。1926年〜1931年までドルセットの名門パブリックスクールシャーボーン校≠ノ在校。その後奨学学生としてケンブリッジ大学に入学。1936年にアメリカのプリンストン大学に入学し博士号を取る。1938年に英国に戻り、ブレッチレー・パークにある英軍の暗号研究所でエニグマ解読に尽力、彼が開発した暗号解読機ボンブ(The Bombe)≠ヘ連合軍の勝利に貢献した。1944年世界初のコンピューターコロッサス(Colossus)≠完成し、1946年に大英帝国勲章(OBE)を授与される。終戦後マンチェスター大学で大型コンピューターの研究に従事、人間の脳とコンピューターの情報処理のパターンの共通点を見出し、万能計算機チューリング・マシーン≠フ理論を完成させる。1952年(39歳)に自らが同性愛者であると告白したことで逮捕され、その国家に対する功績から服役の代わりに、同性愛嗜好を矯正し性欲を抑える為の薬物(エストロゲン/女性ホルモン剤)服用を強制される。英国では1967年イングランドとウェールズにおいて21歳以上の男性同士の私的な同性愛行為が解禁されるまで法律として禁止されていた。チューリングが自らの同性愛嗜好を告白したのは、まだ同性愛行為が法律的に禁止されていた1952年の事だった。しかし英国の上流階級の間では、同性愛はそれほど珍しいものではなかったのだが・・・。結局チューリングは1954年6月7日チェシャーのウィルムスローにて青酸カリに浸したリンゴを食して死亡・・・自殺と言われている(享年41歳)1993年に彼の功績を称えマンチェスターの環状道路がアラン・チューリング通り(Alan Turing Way)≠ニ命名された。この『掟/ブレイキング・ザ・コード(Breaking the Code1996)』は彼の生涯を、少年時代から戦時中の暗号研究所勤務時代、不遇な晩年までと時代背景を織り交ぜながら描いた作品。原題の『Breaking the Code』は、文字通り解釈すれば暗号を解読する≠ニいう意味だが、その裏には社会的な掟を打ち破る=同性愛嗜好≠ニいう意味も含んでいるらしい。この事からも、ぞっこんだったクレアにふられて鬱だ氏脳¥態になってしまう程の軟弱者なトム・ジェリコとは明らかに異なるのである。

B結局クレアって何者だったの?

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09月13日(土)
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