ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File045】記念連続ドラマ第二夜「プライベート・ライアンとヌーヴィルの雨」 前編
部下達への説明を終えたミラー大尉は、その足で情報部へと向かった。情報部もドイツ軍陣地跡にテントを張っていた。その入り口には厳しいMPが2名警備しており、ミラー大尉を認めると直立で敬礼をした。それに答礼し、テントの中に入ると大勢の兵士たちが忙しそうに動き廻っていた。「ティモシー・アパム伍長を探しているんだが・・・」手近の兵士に告げる。奥からひ弱そうな兵士が慌ててやって来て、ミラー大尉に向かって敬礼した。「アパム伍長か?」「はい」「君は俺の隊に所属替えになった」命令書をアパム伍長に渡す。「どうして私が・・・翻訳と地図作成が専門で、実戦経験はありませんし・・・」不安そうにアパム伍長が呟く。「基礎訓練で銃の撃ち方は習ったろう、今日からはタイプじゃなく銃が専門だ・・・それに君はドイツ語とフランス語が喋れる・・・さあ準備しろ」慌てて敬礼し荷物を準備するアパム伍長。その姿を見ながら、ミラー大尉は、またひとつ大きな溜息をついた。アパム伍長をホーバス軍曹に預けた後、ミラー大尉は、補給廠へと向かった。補給担当曹長に命令書を見せると、部隊編成に必要な車両、兵器、物資のリストを渡した。補給担当曹長は、リストを見ながら胡散臭そうにミラー大尉を見つめた。「ジープ、ハーフトラック、その他の物資は夕方までには準備できますぜ、大尉殿・・・でも戦車3両ってのは、どうですかねぇ。どこでも戦車は引っ張りだこだ・・・」その時、積み上げられた補給物資の山の後ろから、一人の戦車兵がひょっこりと顔を出した。「戦車をお探しで・・・大尉・・・ガフィ軍曹です」ツルツル頭の軍曹が敬礼した。「ああ、ちょっとした広報チーム活動に行くんだが、戦車の掩護が必要だ・・・君たちは何処の所属だ・・・」「今のトコ所属無し・・・配属待ちなんで・・・コレだけの大部隊、たかが戦車3両消えたって、誰も気にも止めねぇですよ」補給担当曹長が呆れた顔をした。「戦車を見せてくれ・・・」「どうぞ・・・」補給廠の裏の空き地に戦車が3両停車しており、戦車兵たちがその周りで各々寛いでいた。戦車の車体の上にはワインや缶詰、化粧品から絹のストッキングまで積んでいる。「M41<`ャーフィー戦車。小型ですが最高時速は55kmも出ますぜ。主砲は75mmの豆デッポウですがね、この煙突チューブで増強してますよ・・・」やけに長砲身が目立つ・・・そして砲塔の横には大きなスピーカーが・・・「いざとなったら、こいつをカマシテ、高速でトンズラですよ・・・」ガフィ軍曹が、車体横に立て掛けた黄色や赤の発煙弾を叩いて言った・・・。「まあ普段はヤミ商売専門ですがね・・・やる時ゃやりますよ・・・ガハハ・・・」ガフィ軍曹は大声で笑った。ミラー大尉は呆れた顔で戦車を眺めていたが、大きく首を振って、ガフィ軍曹を見て言った。「今夜、俺の部隊に合流できるか・・・」「すみませんが、今夜はちょっと先約がありまして・・・」ミラー大尉は地図を取り出した「それじゃ、明日の昼までに、この地点まで来れるか?」ミラー大尉は地図上の一点を示した・・・ヌーヴィル、小さな町だ。「了解」「それじゃ明日会おう・・・」ミラー大尉が帰った後、タバコを吹かすガフィ軍曹に補給担当曹長クラップゲームが尋ねた。「珍しいじゃねぇかよ、ガフィ。お前がボランティアか・・・ええッ?」「いや、俺もたまには社会貢献ってヤツをやってみようと思ってねぇ」晴れ渡った空を眺めながら、ガフィ軍曹は大きくタバコの煙を吐き、クラップゲーム曹長に聞こえない程度の小声で囁いた・・・。「この話、金儲けの臭いがプンプンしてるぜぇ」
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06月09日(日)
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