ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File039】戦車、軍用機って来たら、やっぱ軍艦でしょ・・・邦画編
邦画戦争映画の中でも人気の高い作品のひとつでしょう。ミッドウェー作戦の牽制のために行われたアリューシャン作戦において、とにかく米国領土を占領しよう、という陸海軍の思惑からの成り行きで占領してしまったアリューシャン列島の中の2島がアッツ島とキスカ島でした。しかしながら戦略的見地の低さから行われた作戦の為、米軍の反撃は予想しておらず、時を置かずして2島とも海上封鎖されてしまい、補給は途絶、僅かに潜水艦に頼るばかりとなります。また極めて厳しい自然環境の為、駐留する守備隊は想像を絶する苦労をする訳です。まあ、この辺の事情は軍事マニアの方々の方が詳しいでしょうから、御託はこの辺で・・・。結局、このままでは餓島=ガダルカナル島≠フ二の舞になるのは必定・・・早期の撤退意見がでる訳ですが、無意味な上層部の見栄と責任転嫁の為、決断が遅れ、まずアッツ島への米軍の攻撃が開始され、守備隊の善戦も空しく結果は玉砕≠チて事になってしまいます。アッツ島占領後、米軍の矛先はキスカ≠ノ向く訳ですが、ここに至って軍上層部は思い腰を上げキスカ≠ゥらの撤退作戦「ケ号作戦」(ガ島撤退作戦も同作戦名)が発動されます。その作戦に従事するのは北方海域を担当する第五艦隊・・・司令長官川村中将(演じるは山村聡)その川村中将によって現場(第一水雷戦隊)指揮官として、遥々南方から呼び寄せられるのが、川村中将の兵学校同期である大村少将(演じるは三船敏郎)自ら兵学校の成績がドン尻と自称(この成績順位をハンモックナンバー≠チて言って、以後の昇進に大きく影響)する大村少将ですが、小艦(駆逐艦等)の指揮には定評がある第一線指揮官なのです。モデルは実在した木村昌福少将(駆逐艦による鼠輸送≠竍サンホセ突入作戦%凾ナその手腕を発揮、正規海軍士官の中でも航海や砲術、雷撃などの高等教育を受けていない、いわゆるノーマーク士官で唯一昭和天皇に拝謁を許された提督)です。三船敏郎演じる大村司令官着任のシーンで、立派なカイゼル髭を生やした舷門衛兵(渾名は司令官=jが登場しますが、モデルとなった木村少将も立派なカイゼル髭の持ち主でした・・・。事実は小説より奇なり≠ニは良く言ったもので、レーダー装備の米艦隊(戦艦以下多数)包囲下のキスカ島から、気象状況(濃霧)の助けもあって、守備隊の陸海軍将兵5200余名の救出に見事成功するまでが、この作品の中で描かれています。米軍は最後まで日本軍の撤退に気付かず、激しい艦砲射撃の後に上陸作戦を敢行したものの、数匹の犬以外は発見出来ず、挙句の果てに同士討ちで死傷者まで出すというマヌケ≠ヤりを演じたのでした。映画の見所は、救出作戦に参加する駆逐艦の増援を得る替わりに旗艦の重巡を取り上げられ陸上の缶詰工場に間借りし、将兵から「第五艦隊・・・動かんたい」と馬鹿にされる川村中将と大村少将の同期の友情、佐藤允演じる潜水艦長が撤退作戦の現地調整のために、身を挺して作戦参謀(演じるは中丸忠雄)をキスカに送り届けるシーン。作戦途中で頼みの霧≠ェ晴れて引き返す決断をする大村少将の「帰ろう・・・帰ればまた来ることができる」のセリフ、待望の霧≠フ中で、衝突事故を起こす旗艦阿武隈と海防艦国後、狭い岩礁だらけの海峡を突破する艦隊の旗艦の操艦で冷や汗いっぱいの艦長(田崎潤)から艦の指揮を引き継ぐ大村少将の「艦長、貰うぞ」って落ち着きはらって言うセリフがまた渋い!あと謎のゴースト艦隊に慌てふためき、長時間に渡り砲撃を加えてしまうマヌケな米艦隊など奇跡の作戦≠チて呼ぶに相応しい出来事の数々が描かれています。登場する艦艇は上陸用舟艇(大発役)以外はほとんど模型による特撮・・・ですが違和感は感じません。旗艦阿武隈と国後との接触シーンでは、艦の細部まで良く再現されています。戦争映画という殺し合い≠主に描いている映画の中で、人命救助を描いた作品で、派手な戦闘シーンはまったく≠りませんが、血を流さない作戦を描いた至極≠フ作品です。阿武隈艦橋での号令の掛け声など、旧海軍の雰囲気も堪能できます。

【駆逐艦雪風】

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04月30日(火)
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