ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File086】おんな≠ヘ乗せ・・・てるじゃん!潜水艦【後編Vol.1】
名匠ルネ・クレマン(「禁じられた遊び」「居酒屋」「太陽がいっぱい」等)が極限状態のUボート艦内を描いた、戦後潜水艦映画の原点とも言える作品ですな。1947年度カンヌ国際映画祭冒険探偵映画賞を受賞。原作の題名は「呪われた人々」って意味だそうです。第二次大戦末期の1945年4月・・・ベルリン陥落直前。一隻のUボートがノルウェーのオスロにある潜水艦基地を出航します。乗艦しているのはナチスの重要人物たち・・・フォン・ハウザー将軍(国防軍の要人)フォスター(ゲシュタポ幹部)とその手先ウィリー(殺し屋)カロッシ(イタリアの実業家)とその妻ヒルデ(実はハウザー将軍の愛人)クーチュリエ(フランスの新聞記者で対独協力者)エリクセン(スカンジナヴィア人科学者)とその娘など。彼らに与えられた使命は、来るべきドイツ敗戦を前にしてナチスの要人たちの南米亡命の受け入れ準備をする事。燃料を節約する目的で英仏海峡ルートを選んだ為、英国駆逐艦に発見され爆雷攻撃を受け、ヒルデが負傷し、その手当ての為、フランスの海岸沿いの町ロワイアンから医師ギベール(アンリ・ヴィダル)を誘拐。航行中にドイツ降伏のニュースが伝わり、次第に艦内に不穏な空気が満ち・・・懐疑心が溢れ・・・まさに終焉の第三帝国の縮図。何とか南米に辿り着くが、現地の連絡員(マルセル・ダリオ)の裏切によって上陸には失敗。艦内ではゲシュタポのフォスターが主導権を握り、脱出を図ったフランス人記者クーチェリエを射殺。Uボートは燃料補給の為、補給艦と会同するのですが、その時フォン・ハウザー将軍を始め一部乗員が補給艦に逃亡を図り・・・この時、カロッシの妻ヒルデはUボートから補給艦に乗り移ろうとして、舷側から海中に転落・・・哀れUボートと補給艦に挟まれ・・・。次第に狂っていく極限状況下で、ゲシュタポのフォスターは補給艦を雷撃、生存者の救命ボートを機銃で掃射、皆殺しにします。その後Uボート艦内では暴動が発生し殺戮が行われ、生き残った者も救命ボートで脱出、ただ一人フランス人医師ギベールが艦内に取り残され、その後Uボートは漂流を続け・・・次第に食料も無くなる中、ギベールは真実を伝える為に日誌を書き綴る・・・ラッキーな事に、最後は米海軍の哨戒魚雷艇に発見されるのでした。殺伐とした物語をドライに描き切るルネ・クレマン監督の手腕が冴える作品で、閉ざされた空間という息詰まる艦内の様子や人間たちの心理描写がドキュメンタリー・タッチのクールな視点で描き出された秀作です。撮影には本物のUボートが使用されているそうですが、詳細は不明・・・Uボートの艦長や乗員の格好が戦争末期と思えないくらいピシッとし過ぎなのでは・・・。ラストシーンで米魚雷艇の雷撃で処分されるシーンは実写シーンの様ですが・・・実際に撃破してるとすれば「鉄路の戦い」と同様に、非常に勿体無い話ではあります。タイトルの『海の牙』からは勇壮なUボートのお話が想像されるのですが・・・でも潜水艦≠ナはなく潜艦≠チて名づけたのは誰なんでしょうね・・・確かに語呂は良いですが・・・。そうそう女性が乗ってたからどうだ・・・と言えば、ギベールが誘拐される原因となったのがヒルデの負傷が原因と言ったくらいでしょうか・・・エリクセンの娘に至っては何のために乗艦していたのやら・・・。
ペティコート作戦(OPERATION PETTICOAT/1959)
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05月04日(日)
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