ID:46646
せきねしんいちの観劇&稽古日記
by せきねしんいち
[240475hit]
■「放課後の卒業式」本番その2 3軒茶屋婦人会「女中たち」 写真撮影
僕は、この瞬間がとても好きだ。それまで見えることになっていたボールが、やっぱり見えないんだということに、観客が気がつく瞬間。それまで、登場人物と一緒にボールを見ていた観客が、ふっと、ボールが見えない氷の立場になる瞬間。本番では、この瞬間、低学年の子ども達から笑いが起こった。ちゃんと彼らはボールを見たり、見なかったりしていてくれた。すごいことだと思う。
続いて、氷は、「友情なんて信じない」という長台詞を語る。ここは、原作者のオオタくんが書いたセリフのまま。オーディションのとき、同じセリフで観客をうならせたヒデキくんのハレの舞台。途中、声が心配になるところがあったけど、ちゃんと伝わる声で語ってくれた。
その言葉を聞いて、4人の子ども達の間に動揺が生まれる。それでも「友達はだいじだ」と、炎が歌い始める。「大切な友情」。
ここでこの芝居は急にミュージカルになる。みんなで書いた詞、みんなで作った曲。まずは炎役のジュンヤくんのソロから始まる。仲間たち、街の人たちと歌う人はどんどん増えて、それまで、客席で見ていた他のチームのメンバーも、立ち上がって、歌い始め、フロアに移動して、氷に向かって歌いかける。「泣く前に笑おうよ、友達となら笑いあえる」「友情は見えないけれど、一緒ならば笑いあえる」。
ここもまたすごいスペクタクルになった。舞台上に立つ氷1人に対して、残りの全員(今日はお休みが2人なので、72人。門番は、いつのまにか武器の棒を置いて、街の人たちに合流している)がユニゾンで歌う「大切な友情」。
歌が終わると、炎は氷に背を向けて、体育館の後まで駆け出す。そして、一番遠くから、舞台上の氷に向かって、見えないボールを投げる。今度は受け取る氷。みんな拍手! ここのジュンヤくんはほんとにかっこよかった。そして、氷も炎に見えないボールを投げ返す。また拍手!
この場面は、はじめ、舞台前のエリアでやりとりしていたのだけれど、本番直前に、健翔さんからアイデアをもらって、大きく距離をとってやってもらうことになった。彼らが見えないボールを見る視線と同じに、見ている下級生たちもボールを目で追っていたのがうれしい。この芝居全体のクライマックスだ。
「友達になってもいい」と話す氷。「やった!」と喜ぶみんな。と、地震が起こる。これも「ここだけは効果音入れたほうがいいかね?」と篠原さんに話したところ(稽古中)、「足音でいい、足音で」と言われ、「やっぱ、そうだよね」と決めたところ。街の人全員で足を踏みならしてもらった。今日の半番では、見ている下級生たちも一緒になって足踏みしてくれた。で、この「放課後の卒業式」という芝居全体の中で、唯一の暗転。次の場面のため、4人の子どもたちは、フロアのまんなかに横たわり、他の全員は、舞台前のひなだんに整列する。
と、ほんとに真っ暗になってしまった。照明は、伊藤さんにおまかせ。暗転中の移動は基本的にないから、最初の板付き以外、場当たりのような稽古は一度もしてない(照明が入ったのは今日が初めてだし)。フロアで見ていた、僕たちは青くなった。健翔さんも、篠原さんも、「点けて!」と叫ぼうとしたそうだ。でも、明かりは点かなかった。真っ暗闇の中、子ども達は、パニックを起こすこともなく、移動していた。
これは、あとから伊藤さんに聞いた話。彼も、初め、しまったとおもって点けようと思ったんだそうだ。でも、暗がりのなか、位置を確認しながら、慎重に移動するこ子ども達のようすが見えたので、あえてそのままにしたとのこと。
僕は、今でも、この瞬間のことを思うと、胸がいっぱいになる。練習もしてないのに、子供たちは、蓄光テープを頼りにして、正確な自分の位置に暗闇のなか移動した。お互いに助け合いながら。見えないけれど、ほんとにすばらしかった。
暗転のトラブルでやけに時間がかかるというようなこともなく、当たり前のように明転すると、整然と並ぶ子ども達、それに、床に倒れていた4人が起きあがる。
「ここはどこ?」「学校じゃん」と指さすライアンくん。彼は、ちゃんと体育館の壁を見てしゃべってくれた。これで、不思議な街が、まさに今ここ、体育館になる。
[5]続きを読む
02月25日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る