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by kai
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■『消防士 2001年、闘いの真実』『小林建樹ワンマンライブ BLOSSOM 夜空に咲いた打ち上げ花火』
『消防士 2001年、闘いの真実』@シネマート新宿 スクリーン1

昼間は『消防士 2001年、闘いの真実』。いい映画だった…これもファクションなのですが、最後のテロップを見てここから18年もかかったの!? というのが衝撃的で……火事は火を出したひとだけでなく救助にあたったひとたちの人生を根こそぎ奪ってしまう。つらい

[image or embed]— kai (@flower-lens.bsky.social) Jul 6, 2025 at 0:54
原題『소방관(消防官)』、英題『FIREFIGHTERS』。2024年、クァク・キョンテク監督作品。2001年に起こった「弘済洞火災惨事事件」がモチーフとなっている。英題が何故「Fireman」ではなく「Firefighters」なのかは劇中で語られる。今では、性別を限定しないこの呼称が一般的になっているとのこと。

初めて韓国に旅行に行ったとき、地下鉄コンコースがものすごく広いこと、防災グッズが常備されていることに驚いた。特に防毒マスクがとても沢山用意されている。戦争(休戦)中だから、非常時に備えているのかなと思っていたのだが、その後『がんばれ!チョルス』を観て、2003年の大邱地下鉄火災をきっかけとした対策だったことを知る。そのことを思い出した。教訓を活かす。しかしその教訓の前に、多くの犠牲が払われている。待遇が改善されたとしても、失われた命が戻ってくることはないのだ。

物語の中心となるのは、消防隊のなかの救命班。火災現場に入り、建物のなかに取り残されているひとを救出するのが任務だ。重いボンベを背負い、酸素がなくなるギリギリ迄捜索と救助にあたる。救出した被災者を支えたり背負ったりするため重装備が出来ず、消火活動も出来ない。そして信じられないことに、彼らが着ているのは防火服ではなく防水服で、手袋も普通の軍手だったりする(なんと経費が出ない!)。国家〜! 行政〜! なんとかして! 怪我人はしょっちゅう出ていて、死者すら出る。隊員たちは自分たちの仕事に誇りを持ち任務に当たっているが、家族の心労は積もる一方。配属された新人は初日から自分たちが置かれている環境に疑問を持つ。

ちなみに当時の韓国は違法駐車が多く、消防車が立ち往生することもしばしば。行政〜!(再)班長は地元の議員に待遇改善を訴えるが、なかなか話が通らない。そんなとき、弘済洞で火災が起こる。

火災現場の迫力が凄まじい。マスクで制限される視界、酸素の残量を知らせるアラート音によるパニック。救命隊員が置かれた過酷な現場環境に、序盤からもう震え上がる。こんなに大変な仕事をしているのに、公務員(当時は地方公務員)だから給料いいんでしょとか待遇いいんでしょとか好き勝手いわれていて、ホント市民は公務員にもっと敬意を持てよ! と怒りにブルブルしますよね。事故も災害も起こらない平穏な日々が続いていると、公務員いいよなーサボってんなーと思うかもしれないけど、いざ非常時となったらその最前線に立つのは公務員なのだという想像力は常に持っていたいもの。持てよ! 想像力を!(誰にいっているのか)

スレた大人なので、この手の映画を観ていると「あーこのひとすごくいいひとだからきっと死ぬ」「あー今すごくいいこといったからこのあときっと死ぬ」とか考え乍ら観てしまい、実際そうなる。しかし、そうした隊員たちの人柄や、普段の生活の様子が丁寧に描かれることで、替えのきかないそれぞれの人生に思いを馳せることが出来る。冒頭にも書いたが、韓国で消防士を国家公務員とすることが国会で可決されたのは2019年のこと(2020年から実施)。任務の妨げとなる違法駐車を排除する権限も得た。しかしこんな大事故が起こってから20年近くもかかったのかと、やりきれない気分になる。なんでこうも時間がかかるのか……。この「弘済洞火災」は放火、違法駐車、勘違いといったエラーが重なった末の大惨事だったということもつらい。亡くなったひとたちは戻ってこないが、二度とこんなことが起こらないようにと願うばかりだ。


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07月05日(土)
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