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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『罪深き少年たち』
『罪深き少年たち』@シネマート新宿 スクリーン1
ホントの邦題は『罪深き大人たち』じゃないのか〜(原題は『少年たち(소년들)』)と思う程大人たちのやってしまったことは重いよ…てか検事役にビックリした、シークレット扱いなの? パンフにもクレジットないし。ホント憎らしかったわ好きな役者さんなのに!笑 『罪深き少年たち』 pic.twitter.com/yv9x4IXVcn— kai ☁️ (@flower_lens) June 8, 2024
原題『소년들(少年たち)』、英題『The Boys』。2023年、チョン・ジヨン監督作品。韓国映画にはファクション(ファクト+フィクション)と呼ばれる作品が多く、今作もそのひとつ。
1999年に起こった強盗殺人事件「参礼(サムレ)ナラスーパー事件」が元になっている。犯人たちは夜中に店に押し入り、住人の口をテープで塞ぎ金品を奪った。その際、高齢の女性が命を落とした。少年3人が逮捕され立件、実刑判決が下り刑期を終えたが、真犯人がいるという情報提供から再審となり、無罪判決となった。警察と検察の杜撰な捜査、虚偽自白を強要する暴力や脅迫行為が明らかになった。
実際の事件のことを知らなくても、キーマンを演じるのがスター俳優なので展開は読める。しかしそこには、こうあってほしい、こういうひとがいればよかったのに、という願いが込められているように感じる。警察内部にこんなひとがいてくれれば。被害者の勘違いがなければ。濡れ衣を着せられた少年たちの話を真摯に聞き、迅速に動いてくれるひとがいてくれたら。大人たちの後悔が続く。自分たちがいかに取り返しのつかないことをしてしまったか、懺悔の記録でもある。
その結晶として、映画ではひとりの人物が造形される。映画を観たあと事件のことを改めて調べ、より苦く感じたのは、このソル・ギョング演じる“狂犬”が架空の人物だったということだ。犯人に喰いついたら離さない、検挙率ナンバーワンの刑事。彼の周囲にはまっすぐな人間が集う。彼の妻と娘、彼を慕う部下。よりにもよってこの部分が“フィクション”だったか……と、やりきれない思いにもなった。それでも彼らの存在は救いでもある。不正を見過ごせず、どんな逆境にあってもユーモアを失わない人々。そんなひとたちがどこかにいると思える希望と、そうありたいと思う理想。
“ファクト”側の結晶もある。ソ・イングクが演じる人物の決意だ。彼の罪は大きいが、それでも人生はやりなおせるということを示してくれる。こういうところはクリスチャンの多い韓国ならではの人生観なのだろうか、実際の事件で再審を請求したのも、少年たちの話を聞いた全州刑務所勤務のカトリック教化委員(日本でいう教誨師だろうか)だったとのこと。
事件当時と現在(再審へ向かう様子)を交互に見せる流れは正直リズムが停滞気味で、時系列でよかったんじゃないかなどと素人は思ったが(あと遠洋漁業に出たあいつはどうなったんだよとか)、さまざまなすれ違いや勘違いが起きた当時のことを、現在パートでひとつずつ解きほぐしていく過程には説得力があった。韓国語話者ではないので重要な“訛り”を聴き分けられなかったのだが、台詞でフォローしてくれたので理解出来た。そういうところが丁寧。
イケオジとくたびれ両方のソル・ギョングを堪能。彼の部下役がホ・ソンテ、いい味(若い頃の髪型とファッション!)。憎まれ口を叩きつつ夫のことを信じている妻を演じたヨム・ヘランも印象的。お店を掃除する夫にやめんかいって怒るシーン、よかったなあ。ソ・イングクは意欲的な作品選びをしますね、リスキーな役を積極的に受けている印象がある(パン屋さんのシーンがあってよかったね……というかこれ、フォローなのかな)。3人の少年役もよかった。子役もそっくり!
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06月08日(土)
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