ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版』
『ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版』@シネマート新宿 スクリーン1
『ソイレント・グリーン』がスクリーンで観られるとは〜 シネマートさんもノリノリで(それはいつもか)物販も力入ってて、呼び込みも作中の台詞っぽく「ソイレント・グリーン、ソイレント・グリーンの〜」とかいっててお祭り状態。作中描かれている2022年とホントの一昨年、どっちが悲惨かなあ、うう pic.twitter.com/PjnhUBIeU2— kai ☁️ (@flower_lens) May 18, 2024
やっと観られた、というか、観られるとは! 1973年作品。1974年の日本初公開から半世紀を記念して(?)デジタル・リマスター版が公開です。以下ネタバレあります。ネタバレっていうか、ねえ……。
“ソイレント・グリーン”を知ったのは2006年。ドイツの劇作家兼演出家であるルネ・ポレシュが来日し、tptで『皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと』を上演したことからです。木内みどりさんや長谷川博己さんが出ていましたね。そこから『ソイレント・グリーン』という映画があることを知り、あらすじを読んだら「合成食品ソイレント・グリーンとは…? ある殺人事件をきっかけに、刑事はその秘密を追う!」とか書いてあって……ええ〜。『皆に伝えよ!〜』って、もうタイトルがネタバレじゃん。悪意あるよねこれー! ヒドいよ!!!
とはいうものの、今回SNSでひとの感想とか読んでみると、当時もバレバレだったそうで。この方のスレッドによると、ネタバレそのものが宣伝として使われていたみたいですね。もはやエンタメとして楽しんでしまおうという姿勢が見える。欧米では「なんてこと!」という拒否反応がかなり大きかったようです。嫌悪の度合いは倫理観というよりは宗教観の違いかなあ。土葬と火葬の違いというか。いや、こちらでもそりゃタブーだとは思いますが。
という訳で、秘密はもう判明しているので、人口が増えすぎて食糧難となった人類がどう生活しているか? というディテールを楽しむ(?)映画として観ました。50年前に描かれた2022年、つまり一昨年はどんな世界なのか。
人が多いので、食料だけでなく住居も足りていない。道端にも教会にもひとが溢れている。温暖化で気温は常に30度を超えている。富裕層は豊かな暮らしをしている。快適に暮らせる空間を持ち、勿論食べものにも困らない。人工食ではなく本物の野菜や肉を食べることが出来る。一方庶民は……この辺りはディストピアものとしてよくある風景です。「本物の野菜や肉はこんなに美しく、芳しく、美味しいんだ」「グレープフルーツの実物を見たことないくせに」「熱いシャワーを使えるのか」「石鹸で顔を洗えるなんて」(そう、作中の2022年でこれらは超高級品なのです)といった場面は、役者の演技の確かさで感動的でもある。レトロフューチャーは過去か未来か? 懐かしさを感じつつ、現実の未来を想像して身震いする。
ほほう、と興味深く感じたのは、「Book」と呼ばれる老人と、「Furniture」と呼ばれる女性が一定数いること。老人は知識としての「本」とわかりやすいんですが、女性が「家具」とは。最初台詞を聞いたときは「うわっ(エグい)」となったんですが、ストーリーが進むにつれ、これはこれでアリなのではなんて考えも浮かんできてしまう。
「家具」は文字通り家にいて、住人を待っている。賃貸なんですね。作品中の「家具」たちは、優しい主人たちからだいじにされている。石鹸も清潔な水も自由に使え、綺麗な服、綺麗な調度品に囲まれ暮らす。人工物ではない、新鮮な食材も用意出来る。しかし「家具」は、自分の意志で家から出ることは叶わない。入居希望者がいない場合は「空き家」となる。寂しくて部屋にともだちの「家具」を呼ぶと管理人に酷く叱られ、殴られることもある。
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05月18日(土)
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