ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』
『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』@新宿武蔵野館 スクリーン1
年明け1本目は『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』で楽しく笑って最後にしんみり。こうだったらいいのになー。邦題もよかったんではないか、原題通りだと日本ではピンとこないよね。字幕監修が松尾スズキさんてとこも面白かった。チャン・ギハと顔たちがテーマ曲でした pic.twitter.com/EpmbdV0swQ— kai ☁️ (@flower_lens) January 3, 2024
元日の能登半島地震が起こる前に予約していたもので、なんとも複雑な気分で出かけて行きました。
原題『육사오(6/45)』、2022年、パク・キュテ監督作品。年末年始に楽しい映画だ〜と公開前から気になっていたこの作品。「육사오(6/45)」というのは、45の数字の中から6つを選ぶ、日本でいえばロトくじの名称だそうです。冒頭のツイートにも書いたけど、これは直訳されても意味が判らない。大ヒットしたドラマ『愛の不時着』にかけて、うまいこと邦題と副題をつけたなあと思いました。
日本円にして約6億円の1等当選くじが軍事境界線を超えて北朝鮮に飛んでいってしまった。韓国軍はくじを取り返したい。北朝鮮人民軍はくじをドルに替えて色々と足しにしたい。互いを敵対視していた(そりゃね……)両軍は、くじを換金するべくすったもんだ。ありえねえ〜、でもおかしい! そして最後にはこうだったらいいのに……とホロリ。
かつては(そしていつかまた)同じ国の人間。言葉は勿論通じるし、普段食べるものもほぼ同じ。面と向かって話すと個人が見えてくる。血が通わないように見えた軍人の、人間味が滲み出てくる。実家の農場を復興したいとか、妹が歌手デビュー出来るといいなとか、親の入れ歯を新しくしたいとかね。境界線に詰めているひとたちは、軍事衝突が起こらない限り毎日のように顔を合わせているようなもので、親近感も湧いてくるものなのかもしれないなんて、夢かなあ。
無事金が手に入る迄、お互いの人員を数日相手側で生活させることになるのも有り得ないのに笑ってしまう。バレたら当然タダでは済まないだろうし、というか命も危ないし、ハラハラドキドキ。しかしここで、お互いがお互いにひとつ善行を施すことになる。南は北に畜産(繁殖)のノウハウを伝え、北は南の人命救助(地雷撤去)をする。伏線の引き方も上手くて、南の子が利き酒ならぬ利き牛乳が出来る程の畜産天才だったり、北の子が他に観るものがないから台詞を暗誦する程同じドイツ映画を観ていたりと、序盤「しょうもない……」と笑っていたシーンが効いてくる。
かくして思わぬ形でくじは無事(!?)ドルに換金、ハッピーエンド。別れはちょっとせつなくて……南北統一はまだまだ遠く、解決していない問題も山積み。常に緊張が続く両国のことだけに、どこ迄笑いにしたものやら……と思いつつも、ああ、本当にそうだったらいいのに! と思わせてくれる結末に拍手。
『JSA』ネタも結構入っていたようで、というか、主な舞台がJSA。本来のJSAはJoint Security Area(共同警備区域)ですが、今作はJoint Supply Area(共同給水区域)。思えば宣美も『JSA』ぽいですもんね、南北の兵士と、真ん中に女性将校。スイスネタもありましたし。あ〜これもこれも『JSA』ネタなんだろうなあと思い乍ら観ていた……実は『JSA』未見なのでした。初見はスクリーンでという夢があってな……観たいよ〜(観ろ)。
ローカルネタが多く、訛りや方言が笑いのポイントにもなるので、翻訳は難しかっただろうと思う。「パワーポイント」が「力点」とか直訳でもウケたけど、その辺は訳者さんが上手いこと当てたのかな。で、冒頭に書いているように字幕監修が松尾さん。互いの国の流行語や若者言葉を練習する場面は松尾さんがアイディア出ししたのかなとニヤニヤしました。
そうそう、いがみ合う両者をなだめ、結果的にいちばんいいアイディアを出した韓国軍の給水補給官にも取り分を与えてほしいと思いました! どうなったんだろ。いつか彼らが再会出来るといいな……としみじみしつつ劇場をあとにしました。といいつつロトくじ(後述)の当選番号は忘れずチェックしたワタシ。
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01月03日(水)
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