ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■小林建樹 ワンマンライブ『BLUE MOON 〜不思議な夜をご一緒に』
小林建樹 ワンマンライブ『BLUE MOON 〜不思議な夜をご一緒に』@Com Cafe 音倉

うう、よか、よかった…… 常々あれはどうなってるんだ? と不思議に思っていた演奏の仕組みの種明かしというか動機がMCで明かされてエウレカ! な思いもした。ホントこのひとのライヴはすごい pic.twitter.com/hHTfMWEcvw― kai ☁ (@flower_lens) September 3, 2023
分析〜実験〜検証〜実験を繰り返す。しかしその種がコンプレックスによるものから、というのは意外だったし、以前だったら話さないことだったのではないだろうか。話す機会がなかったともいえるが。

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下北沢駅の改札を出ると、いつもとは違うトーンの喧騒。ホイッスルの音頭と、わっしょい、わっしょい、という掛け声が聴こえてくる。会場であるCom Cafe 音倉の前も神輿の通り道。笑顔で練り歩く法被姿の集団を、通行人がスマホで撮影している。数年ぶりのお祭りで、地元のひとたちはとてもうれしそう。

会場内は外の騒がしさからは無縁の世界。開演時間を5分程過ぎた頃、少し緊迫したアナウンスがスピーカーから流れた。このくらいのキャパの会場でわざわざマイクを使って? 何事かと身構えていると、配信トラブルで開演がもう少し遅れるという。

珍しいことではないのでそうなんだ、くらいに思い、そこからさほど時間も経たず開演したのだが、小林さんが最初のMCで「配信の方ごめんなさいね、あとで……」みたいなことをいう。んん? インターミッション中にメールを開けると、今回の配信を行っているtigetから『主催者からのお知らせ』が届いていた。どうやら“ライヴ配信”が出来ないということだったらしい。つまりリアルタイム視聴が出来ず、アーカイヴ映像をライヴ後に配信する形になったとのこと。

ライヴ終了後にtigetから改めてメールが届いた。本来は七日間だったアーカイヴ視聴期間を二週間に延長するとのこと。「本公演は素晴らしいライブでしたのでどうか繰り返してご視聴のほどお願い申し上げます。」と書かれていたところが好もしかった。

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という訳で観る側は呑気に待つだけだったのだが、バックステージは結構ワタワタしていたのではないだろうか。出てきた小林さん、後ろ髪が一房ハネている。たまたまだろうが、なんだかお風呂から慌てて出てきたみたいでつい笑ってしまう(失礼。いや、かわいくてね)。いつもとはちょっと違う雰囲気のなか演奏が始まった。面白かったのは、小林さんの挙動がなんだかペンギンみたいになっていたこと。ギターを弾くときに、ヨチヨチといった音が出そうな足踏みをしている。BPM120くらいの楽曲が続いていたからというのもあるが、ひとつひとつのテンポを確認し乍ら、マーチのように前進しているようだった。その歩みとともに、配信大丈夫なのかな? と不安になっていたフロアも落ちついていったように思う。

足踏みなので立ち位置は進まないが、時間は進む。生まれた先から消えていく音楽は、水に絵を描くような時間の芸術だが、それによって刻まれた記憶は聴き手の心に残る。

ライヴが行われる季節や日程に合わせたタイトルと、それに沿った構成、選曲は毎回の楽しみ。しかし今回の『BLUE MOON 〜不思議な夜をご一緒に』は、タイトルが発表された時点で期待せずにはいられなかった。“不思議な夜”というワードが入っている。2ndアルバム『Rare』収録の曲だ。『Rare』は小林さんとの出会いのアルバムで個人的に思い入れがある。特に「不思議な夜」「トリガー」は、ダークトーンの曲調、切迫と焦燥に満ちた歌詞とヴォーカルに惹かれ、当時繰り返し聴いていた。しかしご本人が「2ndは本当に作るのが苦しかったアルバムで、演奏すると当時のことを思い出してしまう」「アルバムジャケットの写真、死相が出てるとか遺影とかいわれてた」と仰っていたことが気になっていた。その冥さを魅力に感じた自覚があった。

これは軽々しく2ndの曲やってほしい〜とかいえないな。音源はあるし、ライヴも当時聴けたのだからそれで充分なのかも、なんて思っていた。『Rare』からは「祈り」しか演奏しない時期も長かったように思う。


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09月03日(日)
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