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by kai
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■2023 小林建樹 ワンマンライブ “ふるえて眠れ”
2023 小林建樹 ワンマンライブ “ふるえて眠れ”@Com.Cafe 音倉

小林建樹 ワンマンライブ “ふるえて眠れ”
ニューオーリンズの葬儀のパレードのようだった。痛切なのに何故か明るい。心細いけど若い世代に大丈夫と声をかける。聴くことが出来て本当によかった pic.twitter.com/GD8j2MqO0z― kai ☁ (@flower_lens) April 22, 2023

彼らの音楽が原点だった。ずっと、本当にずっとこどもの頃から彼らの音楽を聴いてきた。彼らがいなければ今の自分はないといっていい。そんなだいじなひとたちが、今年に入り、まるで申し合わせたかのように眠りについた。あるひとは急に、あるひとは何年もの闘いを終えて。近いうちにこういうことが起こるということは覚悟していた。しかしいくら身構えていても別れの知らせは突然で、ダメージも大きい。あまりに立て続けに起こるので、感情が無に近い状態になる。あらゆることに鈍感になる。

この日のライヴは、そんなガサガサになった心に恵みの雨が降ってきたかのようだった。

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最初の挨拶から、軽やか乍ら重めのトーン。矛盾しているようだが、それが同居するのがこのひとだ。来場者と配信を観ているひとたちへの感謝を口にするも、その声音にもちょっと陰がある。「楽しんでってくださーい、とはいえないです。楽しいかはね、わからないから」。文字にするとギョッとしてしまうが、あの声でいわれると、悪い印象にはならない。

いつものようにギターパートから。いつもの、といえること自体が貴重だ。「去年からライヴを再開して」とご本人もいっていたが、ひとりでのステージの演奏や構成が固まってきた。前半はギター、インターミッションを入れて、後半はピアノ。

ギターは2本セッティングされている。どちらもグレッチ。メインはGブランド入りのGretsch 6022 Rancher。もう1本を使ったのは、“ライヴを再開”してから今のところ見たことがない。アクシデントが起こった際のスペアだろうか。一気呵成にという表現がぴったりくるような演奏と歌には、チューニング以外の動作は邪魔なのだろう。いや、チューニングすらもどかしい筈だ。そのうえMCをし乍ら。聴き手のことをとても考えてライヴを進めていることは、「(収録した)映像をあとで見るとすごい早口になってるなと。なのでゆっくり喋ろうと思います」という言葉からも窺える。

円滑にライヴを進め、観客へ配慮し、自分の理想の演奏を追求する。それには手に馴染みのある楽器がいい。何しろこのギター、初期から──デビュー時をリアルタイムで知らないので、自分が見た限りでは『Rare』のときにはもう──ずっと使っている。自分の頭のなかで鳴るものに出来るだけ近い音が鳴らせる楽器なのかもしれない。鍵盤がグランドピアノだというところも同様で、“再開”後はグランドピアノがあるライヴハウスでの演奏が続いている。自分の演奏を理想的に聴かせられるペースと環境を選ぶ。これは会社に所属しているとなかなか出来ないことだ。以前はツアーやキャンペーン中、よく身体を壊していた。今のペースは理想的なのかもしれない。聴き手としてもとてもうれしい。


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04月22日(土)
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