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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■日本総合悲劇協会 vol.7『ドライブイン カリフォルニア』
日本総合悲劇協会 vol.7『ドライブイン カリフォルニア』@本多劇場
成程こりゃ傑作だと前回観たとき思ったけど、今回はもはや名作の貫禄。美しいとくだらないは紙一重、涙と笑いは表裏一体。生きているとそれに気づくときが来ることもある。だから死ななくていい。
しかし18年ぶり? 前回観たのついこないだのような気がするよ… #ドライブインカリフォルニア pic.twitter.com/DTITXDvHDv— kai (@flower_lens) June 4, 2022
そうだよ、宇宙は見える所までしかない!
初演は逃し、2004年の再演から観ています。
兄妹の年齢設定が下がったかな、というのが第一印象だったのだが、思い立って調べてみれば、初演(1996年)の徳井優さんがアキオを演じたのは37歳。再演(2004年)の小日向文世さんは50歳のときだった。阿部サダヲさん現在52歳。最年長やん……。ちなみに秋山菜津子さんはマリエを32歳、39歳で演じている。麻生久美子さんは現在43歳(公演中に誕生日(6/17)を迎えるので44歳)。阿部サダヲの怪物っぷりを思い知った…麻生さんもすごいよね……。まあそれをいったら田村たがめさんがいちばんすげえのだが。ずっと中学生だもん。
先日バラエティ番組(『櫻井・有吉THE夜会』)で皆川猿時さんがこの公演のお知らせをした際、「ウチの奥さん初演からずっと同じ役で、中学生なんですよ。でも演技力があるから大丈夫(にっこり)」といっていたのを思い出した。いい話。笑いが起こってたけどあながち冗談でもない。
とはいえ、初演と再演のアキオやマリエが「老けている」かというと、そういう訳でもない。先日観た『教育』でも思ったけど、時代とともに年齢から受ける印象が変わってきているというのもある。そして「老け込む」とは、人生で受けた傷による疲れや憂いの表れでもあるのだとも気付かせてくれる。初演から四半世紀が経っていますが、演者によって新しい発見があり、そして物語の芯は変わらない。よく出来てるホンだよなあ……と改めて気付かされる。今回この作品を初めて観た若い観客が、いつか再び違うキャストで上演されたものを観てどう思うか知りたいな。『ドライブイン カリフォルニア』は、そんな思いを馳せられる作品になった。
松尾さんならではのフックが多いホン。喜劇が瞬時に悲劇となり、また喜劇となる。台詞と所作におけるリズムの重要性がよくわかる。駆け落ちアイテムチェックの場面では、菓子箱(「おっとっと」)と椅子という重量に差のある小道具を同じテンポとスピードで繰り出さねばならない。リズムが崩れると笑いを誘わない。しっかりウォームアップをしておかないと怪我に繋がる。これを見事乗りこなす谷原章介さんの筋力、瞬発力に感心しました。東野良平さんのラップも非常にこなれたリズムで、台詞をちゃんと笑いに接続出来ている。今回初参加組の爪痕の残しっぷりが素晴らしく、川上友里さんも河合優実さんも輝いていました(微笑)。松尾演出に合わせてリミッターを外しました、というのとは違う。舞台におけるリズムを体得しているという印象。そして全員声がいい。発声、滑舌、台詞の解釈含めての声。
大人計画におけるリズムといえばやはりサダヲさんなのだが、それにしたってあんなに台詞も身体もキレッキレのアキオは新鮮(笑)。それだけに最後の八つ墓村スタイルのシーンの怖さが際立った。展開知っているのに何するかわからない怖さがあったな……。小松さんのケイスケは悪人になりきれない哀愁があって愛おしかった。猿時さんの大辻は紙芝居のシーンが真骨頂。「整理されてわかりやすくなってる」あの長ゼリも見事でした。「情けない」と「頼りになる」の両方を体現出来る役者さん。
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06月04日(土)
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