ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『犬は歌わない』
『犬は歌わない』@シアターイメージフォーラム シアター2
過酷な野良犬たちの生きる道。現在のロシアの路上でも、宇宙開発を進める1950年代のソ連でも、生まれてきたから生きているけど人間の都合でとばっちり。
そして猫もエラい目に遭います。生きるって本当に大変なこと。#犬は歌わない pic.twitter.com/R5zsHdA9Cv― kai (@flower_lens) June 20, 2021
ライカ、ベルカとストレルカの話かなーと思い観に行きました。ロシアの宇宙開発もの大好きなのです。
貴重な記録映像と、現代のロシアに生きる野良犬たち(猿と亀もちょっと)の映像。こうつくるか! という新鮮な驚きがありました。「犬たちは宇宙に行って、地球をどう眺めたのかしら☆」なんてニンゲンの想像なぞアホかー! という話でもあった。歌わず語らない犬に、人間にとって都合のよい物語を押し付けることはしない。とはいえこれをドキュメンタリーという括りにするのも躊躇われます。野良犬を保護しましょう、とか命を大切に、といった啓蒙などはないのです。ただただ生きるその姿を追う、誠実な映像作品。
地球軌道を周回した最初の動物、犬のライカ。その魂は地球に帰還し、今もモスクワをさまよっている……というナレーション。場面は宇宙から路上へ。宇宙開発に犬を連れて行くこともなくなったロシアで、彼らはどうしているか。水たまりの水を舐め、ゴミを漁り、気まぐれな人間から餌をもらい、猫を襲う。身体は傷だらけ、トリミングされない毛はところどころダンゴになっている。
ロシアでは今でもこんなに野良犬がウロウロしてるんだーというのにちょっとビックリ。余談ですがウチの田舎(昭和当時)、野犬が群れでいた。追いかけられて泣きながら逃げたことも一度や二度ではない。小学校に群れが迷い込むことも。「教室の窓を全て閉めてください!」という校内放送が流れ、窓際の生徒が窓を閉めます。近所の養豚場から豚が逃げてきたこともありました。窓越しに皆で見物した…連れ帰られる豚の鳴き声思い出せる……。閑話休題。そんなウチの田舎でも流石に今は野犬はいないようです。思えば野良犬を見なくなったっての、いつくらいからかなあ。などとちょっと懐かしい思いで観ました。
そもそもライカは野良犬で、捕まえてこられて宇宙犬になった。なんで野良犬を起用したかというと、野性を備えた生命力があるからという何それってな根拠に基づくものですが、要はあとくされがない存在だったからなのだと思われます。宇宙に放り出すにあたり身体改造されるし(手袋もせず素手で手術しているところに時代を感じた)、元気に帰ってくる保証もない。そもそも生きて帰れるとも思えない。飼い犬を提供するひとも少なかったでしょう。実際何頭もの犬が犠牲になります。まあニンゲンも犠牲になっていますが、当時のソ連は鉄のカーテンに守られていた。ライカが宇宙を見る前に死んでいたことは、2002年に明らかになりました。
地球を初めて出た生き物、宇宙から初めて帰還した生き物。野良犬たちは一躍ヒーローとなりもてはやされますが、そんなこと犬の知ったことではありません。引退後、静かなくらしを得た元野良犬たちと、今路上でボロボロになりうろついている野良犬たちのどちらが幸せか、というのもニンゲンが思う勝手です。でも、せめて全ての犬が健康に、自分の好きに暮らせるようにと思う現代のニンゲンなのでした。
それにしてもよく撮れたなあ。ロシアの路上にいるのは野犬ではなく野良犬だからなのかも。撮影にあたり餌付けなどはしていないようですが、人間に対し警戒心や敵意がないように見える。朝から晩迄、晴れの日も雨の日も、低く構えたカメラと集音マイクでひたすら犬を追う。絶妙な距離感です。いやはや、辛抱の賜物。後述メイキング映像も興味深く見ました。音楽もよかった。
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06月20日(日)
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