ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[647876hit]
■『初恋』
『初恋』@新宿バルト9 シアター8
み・い・け! み・い・け! 待ってた待ってたノ・ワール〜! ウヒョー!!! せっかくだからご当地で観たかったが時間が合わなかった、リピートは歌舞伎町で観たいな(『殺し屋1』んときも歌舞伎町で観てアガったなー) #初恋 pic.twitter.com/YLTYnsnG6I― kai (@flower_lens) March 1, 2020
こう撮ればPG12ですむんだと妙なところでも感心した。『殺し屋1』はエロではなくバイオレンス描写でR18になった初の事例だったそうだけど、受ける印象にそう差は感じなかったなあ。切った断面を見せない、とか内臓は見せない、とかそうした細やかな配慮(細工)によって青少年も楽しめるものになるんですね。レーティングとは……(微笑)。
『DEAD OR ALIVE』シリーズや『殺し屋1』が好きなひとは「あの三池崇史だ!」と燃えるし血が滾ると思います。でも懐古ではなくアップデートされてる。脚本の中村雅(NAKA雅MURA)、音楽の遠藤浩二と、「あの三池作品」の常連であるスタッフたちの仕事ぶりもそう。インパクトに溢れ、露悪的であり、ユーモアを忘れず、品と矜持がある。上海小吃(そう、出てるの! これにも燃えるわ)でチアチーがいっていた「仁」を、作品に感じるところもいいですね。自業自得に因果応報、爽快でもあります。やくざ映画といえば、の「荒磯に波」東映ロゴから始まったのも粋。高倉健リスペクト!
「誰一人欠けても、この恋は生まれなかった」という惹句にあるとおり、ホンの構成が見事。舞台は新宿歌舞伎町、取り引きされるブツを巡り、ヤクザとチャイニーズマフィアの抗争が起こる。裏切り、寝返り、場当たりとドミノのように状況は加速し、登場人物たちは走り、撃ち、斬り、殴る。緊張感に満ちたシーンで膝カックンをするように、彼らは絶妙の間で笑わせる。クマちゃんのもこもこパンツ、GPSアプリ、ぬいぐるみの発火装置、カチャーシーを踊る幻覚の父親。命のやりとりはギラギラしているのに軽快で、だからこそはかない。アニメーションが入る演出もポップ。実写が難しいシーンでVFXをこう使おう、という発想も素敵。
そんな作品に集ったキャストが自分の持ち場を最大限に盛り上げる。こういう「いい仕事」を存分に観られるうれしさ! 窪田正孝が三池監督と出会って十年ちょっと。満を持して主役として迎えられ、そこへ大森南朋や塩見三省、内野聖陽が帰還(再会)という図式も熱い。映画はこうしてつくられる。村上淳が初参加、というのもうれしい。メインキャストとしては初参加の染谷将太が、水を得た魚のように姑息脱力詰めの甘いヤクザを演じていました。歌舞伎町の社会的な住人である占い師と医師はベンガルと滝藤賢一。いい味出してる。そうそう、新妻聡が出ていることでアンダーグラウンド度がグッと増してます。『殺し屋1』でテレビに入っていた(物理的に)方です。いい感じに歳とって痩せて、ユ・ヘジンに似てきた(笑)。
女性たちが皆格好いいところにも好感。ベッキー、藤岡麻美の迫力。ふたりとも身体が切れ、アクションシーンが映える。主演の新人、小西桜子がとてもいい。往年のアイドルのようなあどけない顔立ち、タイトルバックであの姿を晒せる勇気と度胸(あの画を撮ると判断した監督も流石)。あのシーンでモニカの置かれている状況の説得力がグッと増した。そんな悲惨な環境にいた彼女が、現況に立ち向かおうと決意したときの解放された表情にはこちらも笑顔になってしまった。
そして窪田さん。ボクサーである理由、生きていることに無自覚だったレオが覚醒する瞬間を、あの瞳とあの身体で見せてくれました。役柄上受けの芝居が多かったのだけどこれがまたよくてね。イヤフォン分けっこで音楽を聴く、青春恋愛ドラマで定番のシチュエーションで「見てえ〜。何が見えてるか知りてえ〜」なんてやりとり、かわいらしいやら笑えるやらで最高でした。曲者揃いの演者のなかで光ってた。
いんやそれにしても音楽よかったなー……開巻しょっぱなのトライバルな感じ、またボアダムスの面々呼んだのかなと思った。あの音、ディジリドゥだったのか。サントラ出ないかなー配信でもいいから〜!
[5]続きを読む
03月01日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る